ガレットの起源と真実——この記事を読んだらもう「そば粉のクレープ」とは言えなくなる!
今この記事をご覧になっているということは、ガレットがお好きな方か、ガレットって何?と思っている方のどちらかだと思います。
結構あるあるなんですが、「ガレット」って聞いて「そば粉のクレープですよね」と言われた、もしくは「ガレットって何?」と聞かれて、そう答えたことありませんか? 日本人のほとんどがそうだと思います。
実はこれ、半分あってるのですが、半分間違いなんです。
私も生まれて初めてガレットに遭遇したときは「クレープみたいなものだな」と思ってました。
でもよくよく関わってみると、全く違う歴史をもった食べ物だってわかりました。
私は直澄杏樹と申します。
おうちガレット研究家として、そば粉100%のガレットを日常的に焼いて食べている人間です。
細々とInstagramで発信していますが(Galette RoseMarin)noteでは以前から「おうちガレット研究記録」で、たまに作ったガレットを披露していました。
ブルターニュ出身のガレット職人の仕事に1年ほど関わり、その後、自宅で再現するための検証を重ねてきました。現在では、冷蔵庫にガレット生地があるのが当たり前の生活を送っております。
日本にいながらガレットについてネット検索しても、たいした情報はヒットしません。そこで、ガレットに関する学術論文やフランスの一次史料まで対象を広げて徹底的に調査してみたところ、びっくり!
調査を進める中で、これまで信じられてきた説の一部が否定されていることがわかりました。
「十字軍がそばを持ち帰った」
「当時のブルターニュ公国の女公アンヌ・ド・ブルターニュが」
——この有名な話、実は嘘でした。
私も信じてその説明を使っていたこともあったんで驚きました。
この記事では、フランスの学術論文、一次史料、考古学的調査報告、そしてFranceAgriMer(フランス農業市場調査機関)の公式統計データをもとに、ガレットの真実をお伝えします。(最後には参考資料名も添えてあります)
「ガレット」と聞いて、何を思い浮かべる?
「ガレット」で検索すると、面白いことが起こります。
じゃがいものガレット。ガレット・ブルトンヌ(小麦粉のクッキー)。ガレット・デ・ロワ(公現節のパイ菓子)。そしてようやく「そば粉のガレット」。
単に「ガレット」というだけでは、人によってイメージするものが違うので注意が必要です。
実は「ガレット(galette)」という言葉自体は、13世紀にルーアンの文書で初出しており、ノルマン語の「gale(平たい菓子)」に由来する「丸く平たく焼いたもの」の総称です。だからフランスでは、丸く焼いたものは何でも「ガレット」と呼ぶことができます。
ちなみに、Wikipediaの「クレープ」の説明に以下のような説明がありますが
そば粥を偶然焼けた石の上に落としたところ薄いパン状に焼きあがることを発見し、そば粉を焼いてパンの代わりに食べるようになったといわれている。石で焼いたことからフランス語で小石を意味するガレ(galet)にちなんでガレットと名づけられたというのが通説である。
「そば粥を偶然焼けた石の上に落としたところ薄いパン状に焼きあがることを発見」は学術的な出典はなく、あくまでも民間伝承であり事実とは認められておりません。また「石の上で焼いたから」ではなく「小石のように丸く平たい形状だから」ガレットと名づけられた、と考えるのが妥当のようです。Wikipediaを盲信できないですね。しかも、そばより古いガレットがあったと研究で確認されています(後述)
しかし、ブルターニュの人々が「ガレット」と言ったとき、その意味は明確です。
ガレットとは、そば粉100%の生地を、水と塩だけで練り、鉄板の上で薄く焼いたブルターニュ地方の郷土料理。
材料は、そば粉、水、塩。以上。
このシンプルさこそが、500年以上の歴史を持つ本場ガレットの本質です
とはいえブルターニ出身のシェフの言葉を借りれば「おばあちゃんの数だけガレットがある」ともいわれており、ブルターニュでも地域や人によってレシピが異なり、地域による違いもあります。日本におけるお味噌汁(母の味)のようなものでしょうか。
ここに1枚の写真があります。
フランス人の友だちが、パリのクレープ屋さんで食べたガレットです。

どうでしょう、この色!
見るからにパリパリしていて香ばしそう!
そば粉の香りがしてきそうです。
こちらは日本のある専門店のガレットです。

こちらも焼き色がしっかりついてます。
実際にそば粉のいい香りとともにおいしくいただきました。
どうでしょうか。
『そば粉のガレット』で画像検索したときのイメージとかなり違いませんか?
こうした仕上がりの違いは、日本の家庭のキッチンに適したレシピとして広まっているようなのですが、ある意味致し方ないと思います。ただ、いちガレット好きとしては、それが日本の当たり前になってしまているのが残念なのです。
そこで、家でも専門店のようなガレットを焼けるように、と1人で黙々と焼き続けていました。そして分かったことをお伝えしようと思い、このシリーズを書くことにしたのです。

家で、専門店級の本格的なガレットを焼きたいと思っている方のために!
結論:やればできる!
でもね、そのためには、やっぱり歴史や背景を知るのって大事だと思いました。歴史を知ると、こだわり方が変わります。すると、焼き方も変わってきます。
ここから先は有料記事です。
なぜガレットが食べられるようになったのか、ガレットの真実の歴史、ブルターニュの文化、そして日本人がほとんど知らないガレットの本当の姿、ブルターニュ産のそば粉の希少性を、学術データと一次史料に基づいて詳しく解説していきます。
もしあなたが探究心の強い方で、ガレットについて深く知りたいと思っているなら納得できること間違いないしです。おいしい料理をいただくとき、その食材の知識や歴史的背景もスパイスになりますよね!(ワインのように)
また食通で、ガレットについても解説できる幅広い知識を持ちたいと思っているなら、ネット検索では出てこない情報をまとめたこの記事がお役に立てるでしょう。ではどうぞ!
※この記事は家庭で本格的なガレットを焼きたい方向けです。
※ 記事内で使用している写真や画像の無断使用・転用は固くお断り致します。
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