ケープタウン・ナミブ砂漠旅①出発編
【今回の旅程/2024年9月】準備編はこちらを見てね!
Day1・2 KIX→(SIN→JNB)★→CPT(ウォーターフロント観光)→WDH
Day3 ナミブ砂漠ツアー1日目
Day4 ナミブ砂漠ツアー2日目
Day5 ナミブ砂漠ツアー3日目
Day6 WDH→CPT(ライオンズヘッド)
Day7 喜望峰ツアー
Day8 ヘルマナスくじらツアー
Day9・10 CPT→(JNB→SIN→)KIX
目指せアフリカ大陸
いよいよ10日間もの(社会人にとっては)大旅行に出発だ。関空からシンガポール乗り換えを経て南アフリカのケープタウンまではおよそ23時間の空の旅である。しかし本日(?)の最終目的地はというと、さらにもうひとっ飛びしてナミビアの首都ウィントフックなのだ。ケープタウンには午前中に到着するので、18時過ぎのウィントフック行きの便までは街に出て市内観光をする予定である。ナミブ砂漠ツアーの出発日の関係でこのような年甲斐もないハードスケジュールになってしまった。おそらくウィントフックにつく頃にはヨレヨレになって十は老け込んでしまっているにちがいない。
しかしそれ以前に、果たしてそんなにうまくコトが進むのか疑問だ。相手はアフリカである。アフリカ経験者から聞くアフリカ話といえば、およそ快適でスムーズな旅とは言えないものばかりだ。一度でも飛行機に乗り遅れると一巻の終わりのこの余裕のないスケジュール、大変不安である。
なお、私はこれまでアフリカ大陸はエジプトとモロッコしか訪問経験がないため、ほぼ初アフリカと言って差し支えのない初心者である。
さらに私をビビらすのはその治安の悪さである。
地球の歩き方や外務省安全情報を読むたびに震え上がり、出発が億劫になる。基本的に一人で街を歩いてはいけないとか、かの地の人々はどのような社会生活を送っているのだろうか。単独行動は慎むべきとされる地に一人旅する時点で命題が成り立たない気がするのだが、この際、移動に関してはお金に糸目をつけず、ツアーとウーバーを駆使して無事に帰還したいと思う。
シンガポールまで(6h40m)

7月のジャワ旅でも利用したシンガポール航空の後方の二人掛け席が気に入り、今回はその窓側を選択した。機内はほぼ満席である。
私は元来窓側に座りたい派だ。なんといっても窓の外の景色を楽しむのは旅の一部であると思うのだが、おトイレ問題があるので近距離フライト以外は窓側を選びづらい。しかしながら、今回は二人掛け席だし一度くらいはお隣さんもトイレ行くでしょうよ(その際に自分もサッと席を立つ)、と期待して窓側を選んだ。が、そううまくはいかなかった。隣の若者は飛行機が安定飛行に入るなりテーブルを出して大盛りカルビ弁当を食べ始め、食べ終えるや今度はタブレットを据え置き『地面師たち』を熱心に鑑賞し始めたのだ。途中、機内食のサービスで地面師を一時中断するも、その後着陸体制に入るまで一眠りもせずイッキミである。すごい集中力だ。もちろん声をかけることはためらわれ、結局トイレには一度も行けることなくシンンガポールに到着した。
改めて自分の生理現象の行く末を他人の行動に委ねるのは大変なギャンブルだと再認識した次第である。この賭けに負けたのは自分の選択ミスなので仕方がないのだが、その若者、降機の際に地面師のネタバレをでかい声で語り始めたのには参った。あのやろう。
この区間で唯一うれしかったことは、機内食のデザートにハーゲンダッツが出たことである!
ヨハネスブルグまで(10h40m)
シンガポールでの乗り換え時間は約2時間半、前回のジャワ旅での食べ過ぎを反省し、今回ラウンジでは軽食と飲み物だけでおとなしく過ごした。おかげで体調はすこぶる万全である。
いよいよアフリカ行きの飛行機に搭乗する。いったん乗ってしまえば経由地のヨハネスブルグまで11時間弱は空の上なので、もちろん通路側の席を指定済みだ。
ところが、ボーディングゲートでのチェック時、なぜか私の搭乗券だけが異音を発し待機するよう言われ、グランドスタッフがモニターをチェックし始めた。なんだ?もしやビジネスクラスへの無料アップグレードか?と淡い期待を抱いたのもつかの間、もちろんそんなことはなく、スタッフが「指定の座席は問題があるため変更されました。同じ通路側ですので、いいですかね?」と言う。通路側ならまあノープロブレムですよ、と了承し搭乗すると、その変更後の座席というのはトイレのほぼ真横の席であった。
隣のヒトの良さそうなご夫婦にあいさつし、ひとまず着席するが、離陸前でさえ人が入れ替わり立ち替わりおトイレを利用し、そのたびバタン!と大きな音で扉は閉まり、ゴッ!というあのでかい排水音が流れ、再びバタン!と扉は開かれる。おトイレ待ちの人が私の真横に立ち、時々ぶつかる。さらに言うと、すでに臭い。
これは…。プロブレムが過ぎるのではないか?この座席にあと11時間(ケープタウンまでを考えるとさらに+3時間)も座るのかい?
とても無理だ。絶対寝られない。ケープタウンが最終目的地であるならまだしも、私はその晩ウィントフックまで行かねばならないのだ。そのために少しでも寝て体力を温存する必要があるのに、この調子ではナミビアどころかヨハネスまでも正気を保つことは難しいだろう。
だいたいあたしゃ何か月も前から座席指定をしていたのに、なんじゃ勝手に変更しおって(ノープロブレムと了承したことは棚に置く)。ここは物わかりのいいおとなしい日本人ではいられない、はっきり主張してやるのさ!と勇気を出しCAにかけあってみた。「直前に席を変更されたのだが、私この席好きではないわ、トイレの真横で落ち着かないし、ニオイもひどい。別の席に変えてくれないかしら」という趣旨のことを丁寧にお伝えしたが、当該CAはおーぅそれは残念ですねと泣き顔で同情感を示しつつも単に私の伝えた内容をオウム返しするだけで何も対応する素振りがない。
こいつは埒があかない、上席に相談だ。さきに話したCAより上席っぽい人間にアタリをつけ事情を説明すると「わかりました、ほかに替われる席がないかグランドスタッフに連絡をとり何とかします」と約束してくれた。さすが上席だ。するとまもなくグランドスタッフが機内に乗り込んできて、空いている席のオプションを示してくれたのだが、機内はほぼ満席のため、なんと真ん中席が3席と窓側の1席しか空いていないという(3-4-3の配列だよ)。真ん中席は検討にも値しないので、実質その残り1席の窓側席かこのトイレ横席か、これはもう究極の選択である。トイレ横が嫌で変更をお願いしたが、しかし11時間もトイレ行きが約束されない窓側でいいのだろうか…。さきほどつらい思いをしたばかりではないか…。
短時間で深く悩んだが、この騒がしいトイレ横席よりはきっとマシなはずだ、との結論にいたり、席を移動した。新しい席のお隣はオーストラリア人ご夫婦で、断然静かでよく眠れた。しかしこのご夫婦もなかなかトイレ行かない派であったため、私は寝たり起きたりレミーのおいしいレストランを観たりしながらも心の8割は「トイレ行きたい」に支配されていたのである(7時間を過ぎて奥さまが席をたったタイミングが二度あり、その際トイレに行けたので、かろうじでこの賭けには勝ったと言えよう)。

ケープタウンまで(2h15m)
隣のオーストラリア人ご夫婦含め、おそらく70%くらいの乗客が経由地であるヨハネスブルクで降りた。ケープタウン行きの乗客はそのまま機内に留まることが求められる。約一時間の待機中、みなが思い思いに体を伸ばしたりするなか掃除スタッフが20人くらい乗り込んで来て、毛布を片づけたりテーブルを拭いたり、はたまた通路を掃除機がけしたりとくまなく働いている。普段見ることがない機内清掃の様子を見ることができ、少しラッキーな気分である。また、赤いチョッキを着た役人もやってきて、パスポートの確認が行われた。
ヨハネスブルクから乗り込んできた乗客は私の周りにはおらず、機内全体がスッカスカのまま、最終目的地ケープタウンを目指して再びテイクオフである。
ケープタウンには2時間ほどで到着する予定だ。これまでの飛行時間を考えると、もはやちょっとそこまでの距離といえる。三席を一人で独占できたので、横になったり足を伸ばしたりができたが、興奮してちっとも眠れなかった。自宅を出てからおよそ丸1日、アフリカ大陸の南端ケープタウンはすぐそこなのだ!
ヨハネスブルグに降りるときはちょうど夜が明けてすぐだったので周りの景色が良く見えなかったのだが、徐々に明るくなっていくと同時に、見慣れた湿潤なものとはまったく異なる風景が眼下に広がってきた。森や深い山がなく、陸地の形状がはっきりしているのである。気候帯の違いをまざまざと感じる。
そしていよいよケープタウン空港に向けて徐々に高度を下ろすとき、プール付きの大きな邸宅が整然と並ぶエリアと、全体的に色味のないバラック小屋の並ぶ地域がはっきりと見て取れた。日本は商業地区と住宅街の違いはあっても、これだけ印象の異なるブロックがはっきり区分され並ぶことはない。これが南アフリカか。
色味のない地域はしかし、時々ピカピカ光っておるのだ。あれはいったい何だろう。なにが反射しているのであろうか。そんなことを思っているうちに、機体は静かにアフリカ大陸に滑り降りた。
