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いいインスリン抵抗性 vs 悪いインスリン抵抗性

医学探偵浮島真一が糖尿病の謎に迫る、第3弾です。
前回の記事はこちらを参照してくださいね。



そもそもインスリン抵抗性とはなにか?


これまでの記事では、糖質の過剰摂取がβ細胞を直接疲弊させ、2型糖尿病の根本原因となる仕組みについて解説してきました。今回はその続きとして、もう一つの重要な軸である「インスリン抵抗性」について整理します。
特に、ネットや一部の医療現場でよく言われる

「糖質制限をすると耐糖能が悪化して、かえって糖尿病になる」

という誤解を解消したいと思います。

インスリン抵抗性とは、インスリンが十分に分泌されていても、標的組織(筋肉・脂肪・肝臓)がインスリンのシグナルに十分に応答しにくくなる状態です。しかし、ここで最も大事なのは、「インスリン抵抗性」といってもすべてが悪いわけではないということです。

大きく分けてインスリン抵抗性には2種類あります。
それがいいインスリン抵抗性悪いインスリン抵抗性です。
「糖質制限によって糖尿病になる」という誤解はこの二つをごっちゃにしているために起こります。

いいインスリン抵抗性:生理的インスリン抵抗性

低糖質食・ケトジェニック食・断食など、糖質摂取が少ない状況で起こる正常な適応反応です。
これは、シンプルに言うと、グルコースが少ない状況では、グルコースを節約して赤血球や脳へ優先的に届ける必要があるので、脂肪や肝臓、筋肉でグルコースの取り込みを抑制するのです。


いいインスリン抵抗性のメカニズム
低糖質食 → インスリン分泌低下 → 脂肪組織から遊離脂肪酸が適度に放出

筋肉などで脂肪酸の取り込みが増えてエネルギー源が脂肪酸に切り替わる

グルコースの取り込みが減る

限られたグルコースを脳や赤血球などの必須組織に優先的に回す


これは進化的に備わった燃料選択の切り替えであり、一時的・完全に可逆的です。
糖質を再び十分に摂取すれば、数日で元に戻ります。この状態を「耐糖能が悪化した」と勘違いしやすいのが、健康診断で行う75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。
低糖質食を続けている人は、突然大量の糖を一気に摂取すると血糖が上がりやすいため、「耐糖能異常」「糖尿病予備軍」と誤診されるわけです。
しかし、これは異常ではありません。単に体がグルコースの節約モードになっているだけなのです。

悪いインスリン抵抗性:病的インスリン抵抗性

悪いインスリン抵抗性。
こちらが本当の問題です。主に以下の2つのメカニズムで進行します。

  1. 慢性高インスリン血症による受容体ダウンレギュレーション
    常にインスリンが高い状態が続くと、細胞のインスリン受容体が減少し、感度が低下する。

  2. 脂肪細胞のストレージ飽和(容量オーバー)
    長期のエネルギー過剰で脂肪細胞が肥大・飽和状態になると、インスリンによるリポリシス抑制が効かなくなり、非制御的な遊離脂肪酸の放出が始まります。
    この遊離脂肪酸が筋肉・肝臓・膵β細胞に異所性脂肪として蓄積し、さらにインスリン抵抗性を悪化させる悪循環を生み出します。

生理的インスリン抵抗性 vs 病的インスリン抵抗性の比較

インスリン治療の落とし穴

ここまで見ると、過剰なインスリン治療には大きな落とし穴があることがわかります。血糖値を下げるために飽和して遊離脂肪酸を放出している脂肪細胞に対してさらにインスリンを使う、というのは、脂肪細胞のさらなる飽和を引き起こす出口のない戦略だということです。
もちろん、進行した糖尿病や1型糖尿病では、基礎インスリンの生理的補充は確かに必要です。しかし、「血糖値を正常化させるためにインスリンを過剰に使う」のは全く別の問題です。
過剰インスリンは以下の悪循環を加速させます。

  • 脂肪細胞の飽和をさらに促進

  • 非制御的FFA放出を増大

  • 異所性脂肪蓄積(リポトキシシティ)を悪化

  • β細胞への追加負担

結果として「インスリンを使えば使うほどインスリン抵抗性が悪化し、必要なインスリン量が増える」という出口のないスパイラルに陥ります。これは「血糖値さえ下げればいい」という誤った考えに基づく治療です。

本当の出口はどこにあるのか

真の解決策は、明らかです。糖質負荷を根本的に減らすことです。

  • 糖質を制限 → β細胞を休ませる(第1相「弾込め」分泌の回復)

  • インスリン値を低下させる → 脂肪細胞の脱飽和が進む

  • 異所性脂肪が減少し、病的なインスリン抵抗性が改善

  • 結果として内因性インスリン分泌も回復し、薬の減量・中止が可能になるケースも多数報告あり

生理的インスリン抵抗性は「味方」、病的なインスリン抵抗性は「敵」。
同じ「インスリン抵抗性」という言葉でも、文脈が全く違うことが分かるでしょう。
そして、単純に「耐糖能異常」と括ってしまうことは大きな間違いだという事もわかります。

朝ごはんのヒミツ

ちょっと関連して、「朝ごはんを抜くと体に悪い」という主張についても考えてみましょう。その主張の理由は、
「朝ごはんを食べないとお昼ごはんの時に血糖値が上がっちゃうから」
というものです。
しかし、その理由はもうわかりましたね。お昼ごはんの時に血糖値が上がってしまうのは「いいインスリン抵抗性」が働いた結果なのです。
しかし、お昼ごはんであっても血糖値が上がりすぎることはもちろんいいことではありません。解決策は簡単で、普段から糖質過剰の食事をしない、ということなのです。


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