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セパージュ信奉の危険性:セカンドワインに秘められた、ブランドの哲学

【2021年ボルドー比較テイスティング🍇 セカンドワインの秘密】

先日、お店でたまたま2本のボルドーのセカンドワインをグラス用に開けました。狙ったわけではないのですが、どちらも2021年ヴィンテージという奇遇。

レ・フィエフ・ド・ラグランジュ (サン・ジュリアン) と マルキ・ド・カロン・セギュール (サン・テステフ)。

この同じボルドー左岸メドックでも、村が違うとどう違うのか?
地図上の距離は約18km。
分かりやすい指標で言うと、JR京都駅からJR高槻駅までの直線距離にほぼ等しくなります。
サン・ジュリアンとサン・テステフなど教科書だと名前を覚えるばかりでピンと来ませんが、京都~高槻は新快速で15分、間に山崎なんかもあったりして、そら土壌もその日の天気も違うわな、と想像しやすくなりますね。


【テイスティングの感想】

飲み比べてみると、すぐに明確な違いが。

  • レ・フィエフ・ド・ラグランジュカベルネ・ソーヴィニヨンの風味がクリアによく出ており、骨格がしっかりしています。

  • マルキ・ド・カロン・セギュール:豊かな果実味がありつつも、サン・テステフ特有の枯葉や栗のような、少し茶色いニュアンスを感じ取れます。

【高級品の哲学とセパージュの矛盾】

「セカンド」という立ち位置である以上、「ファースト」と同じコンセプト(シャトー・ラグランジュやシャトー・カロン・セギュール)の哲学を継承しているはずです。
あたりまえですがこれは、レクサスやベンツに見られるような高級品ブランドの哲学(フィロソフィー)そのもの。

ベンツ マイ・バッハ 2700万円
ベンツAクラス 515万円

ところが、2021年のセパージュ(ブドウ品種の比率)を調べてみると、非常に面白いことが分かります。

Château Lagrange 2021シャトー・ラグランジュ 2021(ファースト)
 カベルネ・ソーヴィニヨン84% メルロー14%

Les Fiefs de Lagrange 2021レ・フィエフ・ド・ラグランジュ2021 (セカンド) 
カベルネ・ソーヴィニヨン40% メルロー52%

Marquis de Calon Ségur 2021マルキ・ド・カロン・セギュール  2021(セカンド) 
カベルネ・ソーヴィニヨン42% メルロー58%

上記の内容から、ファーストのラグランジュはカベルネ主体の力強い設計ですが、セカンドのレ・フィエフはメルロー主体と、比率が逆転しています。

【容量パーセントの罠と「言語化」の試み】

多くのソムリエはセパージュ(容量パーセント)から味を推し量ろうとしますが、比率だけを見て「こういう味だ」と評価するのは危険だと改めて感じます。

数字をみてからワインを飲むと、心理的なバイアスがはたらいて「こういう味に違いない」との思いに引っ張られてしまうのです。
何事も素直な気持ちが大事ですね。

とは言え、勉強するにあたって他に指標があるわけでもないのがどうしようも無いのですが。

比率を調整することで、ファーストの骨格を継承しつつ、若いうちから飲める別の個性を生み出しているのです。

ズバリ言うと、メルローの割合は、そのワインの「飲み頃」を測る一つのバロメーター(指標)となり得るのです。

人間でも兄弟姉妹というのは性格なども随分違うのではありますが、やはりどこかしらに同じ親から生まれたエビデンスが確実にあるのです。

また、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローの関係性もそうですが、このブドウ品種において親種は「カベルネ・フラン」であることから、従妹レベルの関係と言えます。
理論的にはカベルネ・ソーヴィニヨンによく似たメルローやメルローによく似たカベルネ・ソーヴィニヨンも存在し、クローンによる選別がなされているのではないでしょうか。


この複雑なブレンドの感覚を分かりやすく「言語化」に挑戦してみました。
(試作中ですので分かりやすいかは保証は出来ませんが)

【シン・カルピス理論】
カベルネ・ソーヴィニヨンをカルピスの原液、メルローを牛乳としましょう。

  • シャトー・ラグランジュ(ファースト)→ 原液84%、カルピス感マシマシの液体

  • レ・フィエフ・ド・ラグランジュ(セカンド)→ カルピス40%+生乳52%

  • マルキ・ド・カロン・セギュール(セカンド)→ カルピス42%+生クリーム58%(サン・テステフの粘土質による重厚感をプラス)

ポムロールは「いずれフロマージュ(チーズ)になる牛乳」…そして少量でも全体に味をもたらすプティ・ヴェルドは、スパイス、、、というより天下一品の少量入れると美味しくなるラーメンソースのような役割でしょうか

上部にラーメンソース

学びとは、必ずしも肩肘張って取り組む堅苦しいものではありません。むしろ、心から「面白い」と感じた遊びを感じる瞬間にこそ、その知識は命を吹き込まれます。

そして、その「面白い」という熱量が、自然と後輩やお客様へと伝えたくなるエネルギーとなります。
伝えるべきは、単なる情報の羅列ではありません。どれだけ記憶したかではなく、アウトプットする事象の本質を、いかに深く理解しているか。そこに尽きるのです。

「誰かのために」学ぶという利他的にも見える行為は、同時に最も高効率な自己成長でもあります。
知的好奇心が他人からの「カッコいい!」という賛辞と結びつくとき、学びはさらに熱を持った喜びに変わるのです。

メートル・ド・テル
初田 智

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