その「恵まれた派遣先」は、本当に「当たり」だろうか。
「恵まれた派遣先の話、聞きたいな…」
ネットでそんな言葉が目にとどまった。
恵まれていた派遣先の話。聞きたいな・・
— 派遣のトリセツ (@hal20191) October 21, 2025
(と思う反面。恵まれていたというより「普通の企業」の話?😅)
その一言に、多くの派遣社員たちが、まるで待っていたかのように、次々と自分の経験を語り始めた。
「週4リモート、駅直結ビル、いつでも休める」
「フルリモート、在宅手当あり」
「社食無料、自社商品食べ放題」
その一つひとつが、今、厳しい環境で働いている人にとっては、まるで夢のような「当たり」の職場に見えるだろう。
かつての私も、そうだった。
ブラックな保育園から逃げ出した後、初めて派遣社員として働いた時。
定時で帰れる。ただそれだけのことが、涙が出るほど嬉しかった。
でも、本当にそうだろうか。
その「恵まれた派遣先」は、本当に、手放しで喜べる「当たり」なのだろうか。
*
リプライを読み進めていくと、私は、ある共通点に気づかされた。
その「恵まれた」という言葉の裏側には、必ずと言っていいほど、小さな、でも、見過ごせない「影」が、添えられていたのだ。
「その代わり、びっくりするくらい忙しい」
「その代わり、お賃金が安かった」
「それでも、搾取されていると感じるし、成長にもつながらない」
そう、私たちは、知っている。
この世界に、完璧な職場なんて、存在しないということを。
何かを得るためには、何かを諦めなければならないという、どうしようもない現実を。
そして、何よりも残酷なのは、その「恵まれた」環境でさえ、決して永遠ではないということだ。
「派遣の業務丸ごと、他社に委託になったから」
その一言で、私たちの「当たり」は、いとも簡単に、奪われてしまう。
では、私たちは、何を求めればいいんだろう。
何を、「当たり」だと信じればいいんだろう。
リプライの中に、ひときわ私の心を掴んだ言葉があった。
「簿記2級を持っているという理由だけで、未経験の私を信じてくれた。ことある事に、私に質問してくれて、自信をつけてくれた」
15年ほど前… 今まで経理の仕事をしていなかった私が簿記2級を持っているという理由だけで派遣された企業さん。 女性課長の下で働くこととなり、その課長さんがことある事に私に勘定科目を聞いてくれて。 自信にも繋がりました。 出産で辞める事になった時も知育おもちゃをプレゼントしてくれました。
これだと私は思った。
これこそが、私たちが心の底から求めている、本当の意味での「当たり」の職場なのだ。
リモートワークでも、高い時給でも、豪華な社食でもない。
ただ、一人の人間として、尊重してくれること。
「派遣さん」ではなく、名前で呼び、その可能性を信じてくれること。
そして、ささやかな「ありがとう」と「助かったよ」という言葉で、私たちの存在を認めてくれること。
そんな、人としての、当たり前の尊厳。
それこそが、どんな福利厚生よりも、私たちの心を、本当に満たしてくれるのだ。
私たちは、ただの「労働力」じゃない。
名前と、感情と、そして、無限の可能性を持った、一人の人間なのだ。
そのことを、どうか、忘れないでほしい。
そして、いつか、そんな当たり前のことが、当たり前になる職場に、巡り会えることを。
私は、心の底から、願っている。
