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患者様に教えていただいた、一番大切なこと 感謝の大切さ 理学療法士

いつもありがとうございます。エヌエー、リハです。

臨床も19年、40代になりましたが、いまだに失敗ばかりの毎日です。失敗ばかりですが、周囲の方々に支えられ、学びを得つつ、ゆっくりですが成長できてきたと感じます。

その中で、臨床でも生活でも、忘れてはならない、成長に欠かせないと思う事に、感謝するという事があります。

感謝には、人を支える力があります。 過去にそう感じる出来事があり、今日はその事についてお話を。

担当していたのは、90歳を超える一人の患者様でした。

視力は低下し、周囲2mほどは見えても、それより先はほとんど見えません。要介護認定を受けられ、施設(介護付き有料老人ホーム)では、食堂へ向かうにも手すりを頼りに歩き、必要に応じて介助を受けながら生活されていました。

数年前、胃腸の不調で入院となり、胃カメラによる検査と治療を受けられました。検査結果は問題なかったのですが、下痢、腹部症状が完治せず、安静期間が続きました。その影響で身体機能は低下し、廃用症候群(安静が続くことで筋力や体力、日常生活動作が低下する状態)のため、リハビリが始まりました。

元々視力低下から身辺動作も介助を要し、また、今回の安静での廃用性筋力低下は思いのほか顕著で、年齢を考えれば、身体機能の回復は決して容易ではありませんでした。それでも認知機能は保たれ、こちらの説明にも丁寧に耳を傾けてくださいました。

そして、その方には一つの特徴がありました。

本当によく、「ありがとう」と言われるのです。もともと視力低下があり、有料老人ホームの生活でも介助や口頭での支持、援助を必要としていた事もあるのが、その事に影響していたと思いますが、

ベッドで体の向きを変えるとき。

起き上がるとき。

立ち上がるとき。

歩くとき。

椅子に座るとき。

一つひとつの動作が終わるたびに、「ありがとう」。

介助をするたびに、「ありがとう」。

こちらが「当然の仕事ですから」と思っていても、そのたびに感謝の言葉をかけてくださいました。

何度もその言葉を聞くうちに、こちらのほうが恐縮してしまうほどでした。

しかし、不思議なことに、その方の周囲には穏やかな空気が流れていました。

病棟のスタッフも自然と笑顔になり、話しかける時間が少し長くなる。

部屋に入ると、こちらまで温かい気持ちになる。

「ありがとう」という一言が、人の心を少しだけ柔らかくしていることを、その患者様は教えてくださいました。

今回の安静で、筋力的には低下を認めましたが、見た目も90歳を超えているとは思えないほど若々しく、生き生きとしていた姿が今でも印象に残っています。

 感謝を持つ人は、人とのつながりを育みやすく、その結果として周囲からの支援や温かな関わりが生まれやすいことは、多くの研究でも示されています。心理学では、感謝はポジティブ感情を高め、人間関係や幸福感を育てる感情の一つとされています。また、高齢者においても感謝を意識することが心理的健康や生活満足度の向上につながる可能性が報告されています。だからこの方が視力は悪くても、表情豊かで若く見えたかはわかりませんが、理想的な年の重ね方をされていました。

 あの患者様と出会ってから、私は改めて、自分の仕事における「感謝」について考えるようになりました。

理学療法士という仕事は、患者様の生活を支え、身体機能、基本的動作能力の回復を手助けする仕事です。

昔の私は、どこかで「自分が患者様の役に立っている」という意識のほうが強かったように思います。その思いは間違いではないとは思います。

しかし、臨床を重ねるほどに、その考えだけでは語れないことがあると感じるようになりました。

患者様は、私たちに機能回復や動作、歩行能力の改善を、安心して動けるようになりたいと願ってリハビリに来られます。

一方で、私たち理学療法士もまた、患者様から多くのことを教えていただいています。

病気との向き合い方。

年齢を重ねても前向きに生きる姿勢。

ご家族を思う気持ち。

そして、人に感謝することの大切さ。

教科書には書かれていない大切なことを、私はこれまで何人もの患者様から学んできました。ふとした会話の中で、こちらが励まされたり、勇気づけていただく事も多くあります。

あの患者様の「ありがとう」は、その中でも特に忘れられない言葉です。

体位変換をしただけでも、「ありがとう」。

立ち上がれたときも、「ありがとう」。

歩き終えた後も、「今日もありがとう」。「また来てね」と。

その一言一言が、忙しさの中で少しだけ固くなっていた私の心を、静かにほぐしてくれました。

私は患者様に何かを与えているつもりでいました。

でも、本当にそうだったのでしょうか。

技術や知識を提供することはできても、人として大切なことは、むしろ患者様から教えていただいていることのほうが多いのではないか。

「ありがとう」という一言で、一日の疲れが軽くなることがあります。

患者様の笑顔に励まされ、「明日も頑張ろう」と思える日があります。

うまくいかなかった症例を振り返ることで、新しい知識を学び、理学療法士として少し成長できたと感じることもあります。

振り返れば、私自身が患者様によって育てられてきたのだと思います。

だから今は、「リハビリをしてあげている」という感覚はありません。

患者様と一緒に悩み、一緒に喜び、一緒に前へ進ませていただいている。

そんな気持ちのほうがずっと大きくなりました。

私たちは、患者様がいるから理学療法士でいられます。

毎日当たり前のように患者様のもとへ伺い、評価を行い、リハビリを実施できることも、決して当たり前ではありません。

目の前の患者様がいてくださるから、経験を積み、失敗から学び、専門職として成長することができます。

「与えている」と思っていた時間は、「与えられている時間」でもあった。

そのことに気づかせてくださったのが、あの患者様でした。

だから私はこれからも、患者様への感謝を忘れずにいたいと思います。

リハビリは、人と人とが向き合う仕事です。

技術だけでは届かないものがあり、知識だけでは支えられない場面があります。

そんな時、感謝の気持ちは、自分自身の姿勢を正し、患者様との関係を豊かにしてくれるのだと思います。

今でも、あの「ありがとう」という優しい声を思い出すたびに、理学療法士としての原点を静かに思い返しています。

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