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その人の“人生”に繋がった時、リハビリは動き出す

若い頃は、できた事が、年齢を重ねるにつれて、できなくなる事が増えていく。
体力も落ちる。動作もゆっくりになる。疾患を抱える人も増える。

けれど、その一方で、年齢を重ねたからこそ磨かれていくものがある。
それが「結晶性知識」や「技術」なのだと思う。

先日、実家の手伝いで帰省した。
父は在宅酸素療法(HOT)を使用しており、災害による停電時に備えて発電機を準備していた。

ただ、その発電機は長らく使われておらず、埃をかぶっていた。
「ちゃんと動くのか、一度確認しておこう」
そうなり、家族で試してみる事にした。

本体をきれいに拭き上げ、説明書通りにスイッチを確認し、ガソリンも点検。
何度もスターターを引いた。

しかし、かからない。

「故障しているのかもしれない」
そんな空気が流れ始めた頃、近くの小さなガソリンスタンドへ電話した。

個人経営の、小さな田舎のスタンド。
来てくれたのは70代くらいの店主だった。

穏やかな表情でこちらの話を聞き、
「どれどれ」と発電機を確認する。

配線やスイッチをひと通り見たあと、店主は発電機を軽くゆすった。
そして、何気ない動作でスターターを引いた。

「ブルルンッ!」

一発だった。

さっきまで、あれだけ苦戦していたのが嘘のように、発電機は何事もなかったかのように動き出した。

思わず、「なんで?」と笑ってしまった。
同時に、その道を長く生きてきた人の凄みを感じた。

知識だけではない。
説明書にも載っていない。
長年、機械と向き合い続けてきた人だけが持つ感覚。経験。勘。空気感。

積み重ねた年月は、やはりすごい。

リハビリの現場でも、同じ事を感じる。

目の前の患者様は、病気を抱え、動けなくなり、不安を感じている。
でも、その人は「患者様」である前に、一人の人生を歩んできた人だ。

大工として何十年も家を建ててきた人。
教師として子ども達を育ててきた人。
漁師として海を読み続けてきた人。
会社を背負ってきた人。
家族を守り続けてきた人。

その人達は、それぞれの世界で、間違いなく“プロ”だった。

だからこそ、疾患や病態だけを見ていると、大切なものを見落としてしまう。

「昔、どんな仕事をしていましたか?」
「何が好きでしたか?」
「どんな事を大切にして生きてきましたか?」

そんな会話の中に、リハビリを前へ進めるヒントが隠れている事がある。

昔、大工をしていた患者様が、立位練習では消極的だったのに、「鉋をかける姿勢」をイメージした途端、動きが変わる。
料理人だった方が、「包丁を持つ動き」を取り入れると、表情まで変わる。

人は、自分が積み上げてきたものと繋がった時、大きな力を発揮する。

だから私は、患者様を“できなくなった人”としてではなく、“長い人生で多くを積み上げてきた人”として見られるセラピストでありたいと思う。

知識や技術は、年齢で消えるものではない。
むしろ、年月を重ねたからこそ生まれる深さがある。

患者様である前に、一人の人生の大先輩。
そして、それぞれの道を極めてきた“大先生”。

その人の中にある力を引き出せるかどうか。
そこに、リハビリの本当の面白さがあるのかもしれない。

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