「自己決定の落とし穴」 (#52:読書ノート)
自己決定ができる世の中になった一方で、自己責任の意識が強くなり、タフな人生を歩んでいない人は生きづらくなっている現在。自己決定の功罪を投げかけてくれる哲学的な一冊。
2026年4冊目の読了作品
石田光規さんの作品は初。
著作名:自己決定の落とし穴
著者名:石田光規 (早稲田大学の文学部の教授)
出版社:ちくまプライマリー新書 発行日:2025年8月10日
本のタイプ:新書
(読み始めたきっかけ)
読書会の仲間からの紹介の作品。その読書会仲間は、谷川嘉浩さんの「人生のレールを外れる衝撃の見つけ方」とか、哲学に疎い僕にも理解できるようなライトな哲学的な作品を紹介してくれる。今回もその延長で、紹介してくれた。期待通りの作品だった。
(概要)
自分のことは、自分で決める。本来善しとされるはずなのに、どこか疲れるのはなぜ? そもそも自分で決めるってそんなによいものなのか。他人の決めたことにはどこまで踏み込んでよいのか。「自己決定」をめぐるこの社会の自縄自縛をときほぐしてくれる作品。自己決定は自己責任に繋がり、結局のところ、精神的にマッチョな人ほど、充実する社会に疑問符を打ってくれる。
(特に、印象に残った3箇所)
①安心できる自己決定とは?
私達の自己決定は、周囲からの承認が得られることで初めて「安心できる自己決定」になる。安心できる自己決定にするため、私たちは色々な裏付けを持ち合わせようとする。その例として、ブランド品、「食べログの点数」、
データのエビデンス。どれも昔はそこまで問わなかった要素。これらがないと、私たちは自分の決定に安心できず、不安に陥る。
これは、本当にそうだなと感じた。家族と旅行に行っても、行く前から食べログを見て、旅行先の夕食会場を予約している。家族の笑顔を見たいからできるだけ、リスク回避のため、先回りして動いている。本当は旅行先でも予定調和でなく、偶然の出会いを大切にするのも旅行だけど、外した場合の影響が大きいとすぐにリスク回避に走ってしまう。昔は今ほど情報はなかったので、もっと、自由にお店も選べたのになと感じた。
情報過多の時代、僕らは自分の安心を得るため、活動がより狭くなっている。
②現在の学生の苦労
著者が教壇に立つ、早稲田大学の学生にも変化が起きている。昔は早稲田に入学したので、学生生活をそれなりに気楽にすごしても順調に就職できていた。しかし、今の学生は現在のポジションを維持するために、必死の努力を重ねる。インターンや資格取得、語学力強化など、今のポジションから落ちないよう、必死に努力をしている。
私の小学生の息子を見ていても、情報過多な時代、自分のポジションを上げる手段も明確で、早くから英才教育をしている家庭が多く感じる。もっと自由な発想をと言いたいが、小学生から勝負は始まっている。
昔は、「大学時代は学生と社会人の間の踊り場的存在である、モラトリアム」だと教えられたが、そんな悠長なことを言えなくなっているのだろう。
息子には悪いが、大学時代も努力を重ねてほしいと思えた。
③自己決定をする中で、人は孤立する
自己決定を続ける中で、人は干渉しなくなっている。その中で、人は孤独感を感じ、孤立する。しかし、個人の付き合いがない人は日頃の生活に不満ばかり感じるようになる。個人の付き合いが10人以上ある人は健康で、現状にも満足している。
「社員は家族」だと言っていた時代において、会社は家族の延長線上にあった。しかし、令和の時代において、「社員は家族」だといった認識で、若手社員と接すると、一発レッドカードを食らう可能性は高い。それだけに、自分で仲間を作れない若者は孤独を抱え、孤立の道を歩む。そんな時代において、マッチングアプリじゃないが、ネット上でのサードプレイスの存在は大きくなっている。孤立しやすい時代において、ネット上でのサードプレイスがその救助策になっていて、そんな付き合いがあれば日常生活にも満足するきっかけとなっている。(そんな私も、そのサードプレイスのおかげで、会社でのなく、家族でもない、第三の場所で、自分の心を平常に保てている)
<執筆後記>
石田光規さんの作品は初めてだったので、この機会に、他の作品はどうかと検索。「人それぞれ」がさみしい(ちくまプライマリー新書)、「友達から自由になる」(光文社新書)など、現在の人間関係を深堀した作品が多い事を知った。本作品を拝読し、現在の人間関係の本質とは何か、断片的に学んだように感じたので、今後も石田光規さんを手に取ってみようと思えた。
<どんな人にお勧め>
①日常生活において、選択肢は多く恵まれていると感じながらも何か満たされないと感じる人
②自己決定をすることに疲れ、なぜだろうかと疑問を感じている人
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