社員紹介/リファラル採用の壁:低い採用コストの対価
数ある採用手法の中で、昔から存在しているもののうちの一つが社員紹介であり、今だとリファラル採用と呼ばれるものです。リファラル採用を活性化するためのサービスなども登場しています。今回はリファラル採用のメリット・デメリットを整理し、どう活用すべきかをお話します。
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リファラルの功罪もまとめないとなぁ。
— 久松剛/採用コンサルもするPO・EM・PjM (@makaibito) December 7, 2020
メリット:採用単価
少子化が進む中、経験者・即戦力採用というものは非常にコストが高くなっています。紹介会社のフィーも増加傾向にあります。私が採用に関わり始めた2012年頃は年収の25%程度でしたが、現在は35-40%といったところです。この比率は企業によって提示を変えることがあり、50%や100%というものも聞こえくることが特定の職種であったりします。
安価に見えるスカウト媒体についても、それを受け止める自社の風評を充実させているうちに事業とは関係なく見えるコストが跳ね上がっていきます。
そんな中、注目されているのがリファラル採用のコストの低さです。基本的に友人知人なので広報コストも掛かりません。IT界隈だと社内にて紹介フィーを払うケースも多く、書類通過で数万円、入社後半年で20-60万円といったインセンティブ設定をしている話が聞こえてきます。中途の紹介会社に支払う金額が35%だとすると、年収500万円の場合は175万円になりますが、これと比べると圧倒的に安いと言えます。安いと経営層の決裁は通りやすいので勢い採用する企業は増えているという状況です。
先立ってとあるHRTechのVPoEの方が「(社内でインセンティブとして支払われている)紹介フィー50万円あげる!だから知らない人でも良いから応募して!」とつぶやいていましたが、有料職業紹介に近い怪しい振る舞いをするくらいなら入社支度金とかにすれば良いのにね、と思いながら見ていました。
メリット1:転職市場に居ない人にアプローチできる(期待)
転職市場に未登録の人材にアプローチできるのではないかという期待です。人生相談から始まるリファラルも多数あります。「俺、転職しようか悩んでるんだよね」「うち、どう?」というやつです。
メリット2:知り合いフィルタ(期待)
同じく友人の紹介なので、変な人は来ないよね、という願望です。
メリット3:辞めにくい(期待)
友人の紹介なので辞めにくいよね、という願望です。
コストの前に隠れやすいデメリット
リファラル採用を自社に導入しようと思った際、明確にメリットを言えるのはコストだけです。それ以外は期待でしかなく、無根拠です。
私自身もリファラル採用は初期からやっていますし、リファラル採用で引っ張ってきたこともあります。しかし同時に反省も非常に多いものです。そのお話をしていきましょう。
リファラルは
— 久松剛/採用コンサルもするPO・EM・PjM (@makaibito) December 7, 2020
・社員が直で
・インセンティブを意識しながら
・口説きやすい元部下・後輩を口説く
傾向が強く、CXは違うと思いますが3番目の観点がネックとなって多様性が制限されるので配分が肝要だと思っています。安くて辞めにくいから振り切ると危険。
デメリット1:良いことしか言ってない状態で来てしまうことがある
よくあるリファラル採用のアナウンスは、社内全体会議などで「この職種をオープンしてますんで、友達を紹介してください」と言う5-10分程度のものでしょう。各職種の仕事内容や求める人物像についての説明はほぼないのではないでしょうか。
現代の組織では下記の書籍で言うところの「タコツボ化」が進んでおり、自身のチーム以外のことに目が行きにくくなっています。そのため、紹介者の親しいポジション以外は適当になる傾向にあります。
ポジションに対する理解不足ならまだしも、応募に至るまでに期待値を上げ過ぎる、盛り過ぎる、事実と異なる場合は厄介です。
デメリット2:本当に会社が好きじゃないと親しい友達を紹介できない
「自分はいつまで居るか分からない。」「でもインセンティブは欲しい。」「でもでも親友を紹介すると辞めたときにバツが悪い。」
勢い、良い人は良い人でもどうでも良い人を紹介してくるケースがあります。私が会ったのは「先日、バーで隣に座っていた人」が最上でした。ある意味よく応募まで持ち上げたなと。その事もあり、必ずリファラルのときは紹介者との関係性を聞くようにしています。この点を聞かないと、先に述べたメリットの4つのうち、フィルタと辞めにくさの2つが活きません。
デメリット3:知人友人紹介なので落としにくい、兄弟とかどうするんだそれ
お見送りしにくい関係性の方をご紹介された場合、かなり悩みます。採用コストと紹介者の退職リスクを鑑みてOKを出すケースもあるでしょう。彼氏彼女とかどうすれば良いのでしょう。お見送りして別れたらどうしましょう。
デメリット4:芋づる式に採用できた人は芋づる式に出ていく
紹介者と被紹介者の結びつきが強い場合、よく見られる事象です。既存社員AさんがリファラルでBさんを呼んだとします。Aさんが何かしらの理由で辞めた場合、Bさんを引き連れていく可能性が高いです。Bさん1名が入ってAさんとBさんの2名辞めるのかというとそんな話ではありません。社内でAさんとBさんが信頼関係を濃密に気づいたCさん、Dさん・・・と2名以上が辞めるケースはままあります。
リファラルの話題になると必ずMさんが出てきますが、あそこは前提が「優秀な人の周りには優秀な人が集まる」という強気の上澄み志向があって成立しているので、そうじゃない企業がコスト優先でやると・・・
— 久松剛/採用コンサルもするPO・EM・PjM (@makaibito) December 7, 2020
あとは芋づる式に集まる = 芋づる式に出ていく、なのでそこもご注意ください!
デメリット5:「優秀な人の周りには優秀な人が集まる」が‥
リファラルを成功させている企業の一つとしてメルカリ社があります。メルカリ社の採用セミナーなどを聞くとリファラルの大前提として「優秀な人材の周りには優秀な人材が集まる」ということを据えています。なかなか外向きに豪語できないポイントですが、これこそが最大のポイントだと考えます。ポジティブに言うと似たような人が来ます。もっと言えば普通の人の紹介は普通の人が来るのです。
デメリット6:組織の多様性
5とやや関係する事柄です。既に事業が完成されておりイノベーションを産む必要がなく、作業員が必要な場合は意識する必要はありませんが、採用を通じてイノベーションを求める場合は多様性を意識する必要があります。
当noteでは時折出てくるP2Pと組織構築の類似性についてですが、採用はノード探索に該当します。 コスト理由で途中からリファラルに傾倒していった企業をいくつか見たことがありますが、古参社員からは「新人に尖ったやつが居なくなった」と嘆いていました。しかしこれは私に言わせるとノード探索手法が偏りすぎているとなります。私が用いていたP2Pリアリタイムストリーミングのモデリングを簡略化してお話します。
理解しやすくするためにツリー型のトポロジを例にします(下図)。Aから順番にデータが送信・送受信され末端に伝わっていくとします。チャンクという単位で小包化されたデータが1-10まであるとして、伝送経路はベストエフォートのインターネットであり、ツリーの途中に存在するノードも一般的な計算機なので伝送中に欠落があります。欠落は青色として表現しています。
ここで赤丸のノードAAAに着目します。AAにぶら下がったAAAは1と8が欠落しています。欠落したデータを補填するために、他のノードから再送する方式があります(ハイブリッド型)。
ではAAAは具体的に誰に対して再送要求をすべきでしょうか?従来のやり方では、独自にメッシュ網を構築し、近隣ノードやランダムで選択したものから再送を受けるものが多く存在していました。上位であるAやAAに問い合わせるというのは一つの解でしょう。しかし上位の階層(Stratum)に問い合わせるアルゴリズムは網に参加するノードが増えれば増えるほど上位ノードの負荷になり、スケールしないため現実的ではありません。人事組織に例えると元上司を口説くようなもので、実現できれば理想的ですが、難易度は著しく高い問い合わせ先ということです。
負荷という観点で下位に位置するAAAAやAAABに再送要求してみるというのは、自分が持っていないものを下が持っていることはこのツリーのモデルではありません。下位のノードがたまたま自身より先に再送を受けて当該チャンクを持っている可能性はありますが、リアルタイム性を求める環境下では確率は低いでしょう。
同階層のAABはどうでしょうか。下位層に問い合わせるよりは当該チャンクを保持している可能性はありますが、親であるAAの段階で欠落していたチャンクはやはり持っていません。
そこでできるだけ上位で分岐した遠くのノードのうち、リアルタイムストリーミングのバッファリングに間に合うノードに対して再送要求をする、つまり図内のABA、ABB、及びその下位ノードのうち、応答の速いノードに対して再送要求するようにしました。これにより全体的なコンテンツ伝送パフォーマンスを向上させることができました。

これを人事組織に置き換えるとどうなるでしょうか。対象者が口説きやすい自身の下位に位置する部下や後輩を集めた場合、紹介者を越えるケースは少ないものです。口が悪い人に言わせると紹介者の「下位互換」が増えます。
また、5で触れた優秀な人間だけが集まった組織でリファラルを実施した状態は、図で言うところの上位のStratumに属するメンバーだけで構成された状態と言えます。ただこれは自組織のスケールを目的とすると牌が少ないので非常に困難です。
リファラル採用を社内に訴える際、少年漫画のようですが「自分より凄いやつを連れてこい」と訴えるのは鉄則と言えるでしょう。先の図で言うところの自身より上の階層に所属する人を連れてこいという意味です。加えて採用チャンネルを問わずできるだけ遠くの関係性を持った人を集めて多様性を確保し、補いあえる組織を作るのが現実的です。
まとめ:一番の悪手
安さという点で経営判断がされやすいリファラルですが、偏るのは危険です。採用フィーという形で短期の経営指標に出ますが、彼らが入社後に文化となって社風に現れ始め、それが経営指標に出る頃にはもう後戻りできなくなっています。正社員なので解雇もできないですしね。
一番の悪手は何かを最後にお伝えしましょう。リファラル一本に絞って他の媒体、紹介会社といった企業との関係を完全に断ち切ってしまうことです。一度「あの企業とは取引が難しい」「取り付く島もない」「推薦するだけ無駄」という風評HR界隈で拡がってしまうと、感覚値ですが払拭に最低5年掛かります。何故断言できるのかというと、やったことがあるからです。その話はまたいずれ。
リファラルについては
— 久松剛/採用コンサルもするPO・EM・PjM (@makaibito) December 10, 2020
・知り合いの凄いやつ連れてこい
という理想と
・定着性高い(幻想)
・人のフィルタリングできる(幻想)
・採用フィー安い
という打算
・口説きやすい人が来る
・断りにくい
という現実から混沌としやすいので振り切るのは危うい。
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