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【小説・ヴィーナス症候群】(878)現役AV女優からの依頼

午後二時、浪速大学研究倫理審査委員会事務局。

事務局員の薮内蘭が次の申請者を呼ぶと、農学部獣医学科の増田准教授と、グラマラスな美女が入室した。

「どちら様でしょうか……?」

蘭が尋ねると、その美女の方が明るい笑顔で即答した。

「私、馬とセックスしてケンタウロスを産みたいんですけど。もう黒人のでかいチンコでも全然満足できなくなっちゃって、馬の太くて熱くて、ビュルビュル出る奴じゃないとイケない体になっちゃったんです。馬の馬力で子宮の奥まで突かれて、絶対孕みたいんですよね」

大学の中とは思えない語彙に、蘭は言葉を失った。

増田准教授は額に汗を浮かべながら、申し訳なさそうに分厚い申請書類を差し出した。

「えっと……彼女は現役のAV女優でして、本人がどうしてもというので……。私が無理やり研究体裁に整えました。研究テーマは『異種間生殖技術による神話生物再現の可能性とその応用に関する先駆的考察』として、文献レビューや動物生理学の観点も一応入れてあります。ただ……正直、かなり強引であるのは承知しています」

美女は嬉しそうに頷きながら、さらなる発言を連発した。

「ロバとかブルドッグも試したんですけど、やっぱり馬が一番相性良くて。ケンタウロスが生まれたらAV史上革命ですよ。『本物! 馬と中出し妊娠 ケンタウロス爆誕』みたいなタイトルでシリーズ化したいんです!」

蘭が青ざめていると、奥の部屋から事務局長・葛城公一が猛ダッシュで飛び出してきた。

「待った待った待った! 増田先生、何やってんねん!!」

葛城は申請書をざっと確認し、顔をしかめた。

「増田先生……これは完全に却下です。いくら体裁を整えても、中身がこれでは話になりません。
第一に、これは人を対象とする生殖行為を伴う研究であり、文部科学省も『人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針』に明確に違反します。特に異種生殖や動物との交配を目的としたものは、審査以前の問題です。
第二に、動物を使用する以上、動物愛護管理法及び本学の動物実験指針にも抵触します。性行為を伴う実験など、到底受理できるものではありません。
第三に、仮にこれが外部に漏れた場合、浪速大学全体が研究不正・倫理違反で大問題になります。文科省からの指導、補助金停止、メディアスキャンダル……大学存続の危機です。
増田先生、どうにか体裁を整えたのはわかりますが、こんな申請を上げてくる時点で大きな問題ですよ」

増田准教授は肩を落として頭を下げた。

「……本人が熱心に頼むもので、つい『研究としてなら形になるかな』と……申し訳ありません」

美女は唇を尖らせて抗議した。

「えー! 私が本気で馬とセックスしてケンタウロス産みたいって言ってるのに! もうチンコのでかい黒人でも満足できないんですよ? 大学で研究してくれればいいじゃないですか!」

葛城はきっぱりと言い切った。

「あのね、個人どう思っててもそれは勝手やけど、それを大学の研究として認めるわけにはいかないの。やりたいんやったら、大学とは一切関係ないとこで、自己責任でやって。とにかく申請は不受理!もう… 増田先生、こんなん持って来んといてくださいよ」

増田准教授は深々と頭を下げ、AV女優を連れて退室した。

ドアが閉まった後、蘭は震える声で言った。

「局長……今日の受付簿、どう書きましょう……?」

葛城は頭を抱えながら、ため息まじりに答えた。

「『異種間生殖を伴う申請につき、倫理指針に照らし不受理。申請者の体裁整備にもかかわらず、内容が研究として不適切』……これでええ。詳細は書くな。胃が痛いわ」

浪速大学の研究倫理審査委員会は、今日も辛うじて大学の体面と秩序を守りきったのだった。

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