見出し画像

【小説・ヴィーナス症候群】[491]クリスマスの片想い

日本芸能綜合開発研究所という、小さな芸能事務所がある。

社長兼マネージャーの長居紳助が、机の向こうから声をかけた。
「恵麻ちゃん、次は仮歌の仕事だ。少女師団の」

「……アイドル系ですか。了解です」

渡された譜面の表紙には、丸文字でタイトルが書かれていた。
――クリスマスの片想い。
王道アイドル曲にしか見えない。

そう思って、譜面をめくる。
一行目を追い、二行目を追い、サビに入ったところで、恵麻は顔を上げた。

「……これ、大丈夫なんですか?
地上波で流せるんですかね?」

長居は気にした様子もなく言った。
「さぁな。仮歌なんて、ギャラの分やりゃいいんだよ」

そして収録当日。
スタジオのブースで、恵麻は義手を外し、譜面台の前に立つ。
ヘッドホン越しに流れる前奏は、やけに可愛らしい。

マイクの前で、小さく息を整えながら、心の中で願った。

――この歌で、事件が起きませんように。

白い街 灯るツリー
今日もまた 同じ駅
鍵の音で わかるから
電気つくまで 待ってる

クリスマスの片想い
まだ知らない だけだよね
あなたの癖も 予定も
だいたい 把握してる
偶然って 重なるもの
奇跡って 起こるもの
今日もまた すれ違えた
ほらね 特別でしょ?

#AI小説 #小説 #ヴィーナス児 #ヴィーナス症候群 #近未来小説
#矢野恵麻
#クリスマスは片想い文芸部

いいなと思ったら応援しよう!