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【掌編】ストレイキャッツ・パチンコ:リーチ目は夜に吠える

~誰もブライアンには会えない~


あの夜、俺はいつものように、駅前のパチンコ屋にふらりと立ち寄った。

……と言っても、別に詳しいわけじゃない。

リーチだの確変だの、よくわからない。
玉は出るのか?音はうるさいのか? なんとなく怖くて、普段はスルーしていた。

でも、その日は妙に引き寄せられたんだ。片隅に、ぽつんと一台だけ、光ってた台に。

「STAY CATZ -PACHI PREMIUM-」

古いのか新しいのかすら分からない、でもやたらカッコいい筐体。
リーゼントの猫が描かれてて、なんか……そそられた。


1回転目、何も起こらず。

10回転目、「グレッチが微笑む(信頼度3%)」と書かれて画面がゆれた。

……信頼度?3%って、低すぎない?

50回転目、缶コーヒーが落ちてきて、「SLIM JIM休憩モード」突入。
演出時間30分。何も起きない。

これ、……なに? どういう台なの?


100回転目。
「リーの缶コーヒーが爆発する(信頼度12%)」→外れ。

150回転目。
「キャロルが電話してくる(信頼度32%)」→外れ。

あれ? キャラの関係性も分からないのに、なんか妙に悔しい。

そして200回転目。

全体が暗転。音が止まった。
画面に、ゆっくりと文字が浮かぶ。

《SEZZZONE 突入》

え? これって……当たり? それともチャンス?
周りの音まで静かになった気がして、息をのんだ。

煙が液晶を包む。
ギターの影が見える。

そして、そこに現れた。

ブライアン・セッツァー。

無言。
ただ、煙の中でギターを構えて、こちらを一瞬、見た。

背景には街灯。足元に猫。完璧な構図。

セッツァーが弾いたコードは、たぶんC。
でも音は出ない。

そのとき、液晶にメッセージが現れた。

『続きはライブで』


10秒くらい、動けなかった。

右手はハンドルを握ったまま。もう玉は出ない。
けれど、液晶の隅っこで、猫が静かにリーゼントを整えていた。

スピーカーから小さく流れたのは、

「ROCK THIS TOWN(甘デジVer)※」

当たりだったのか?外れだったのか?
正直、今でも分からない。

でもその日、俺はストレイキャッツのCDを3枚、買って帰った。


※「甘デジ」とは…
パチンコ用語で「甘いデジタルパチンコ」の略。
当たりやすくて遊びやすい、ライトなパチンコ機種。


そして今夜も、パチ屋の片隅で、

「もう一度、会えないかな」と思って座ってしまう。


【おしまい】

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