Photo by
dorobouneco
【短文朗読】さよならコート
☆所要時間:1分
☆人数 :1人用
凍りついた冬の空気を掻き分けて
あの人の元へと駆け寄った
すがるように掴んだコートの袖(そで)
届かない「ごめんなさい」
あの人の腕が
私を包んでくれることは、もうなくて
あの人の瞳に
私が映ることも、もうなくて
やわらかな笑顔にも
私の名を読んでくれる優しい声にも
もう二度と
会えないのだと
風に翻(ひるがえ)る
コートの裾(すそ)が
聞こえない「さよなら」を
告げているようだった
この胸に
広々と空(あ)いてしまった空洞を
冷たい風が吹き抜けて行く
手が届かなくなってからやっと
その存在の大きさに気付く
遅すぎた「愛してる」が
私の中で木霊(こだま)した
星の瞬きが
代わりに泣いてくれた
冬の夜
End
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