ランナーのための補助的トレーニング――走る、鍛える、動きをつくる
走るための筋肉は、基本的には走ることで作られる。
ランニングを始めたばかりの人であれば、走るだけでも脚は強くなる。走る距離が延び、ペースが上がるにつれて、その走りに必要な身体も少しずつ作られていく。
では、ランナーに筋トレは必要なのだろうか。
最初は、そんなことを考えていた。
ただ、自分の経験を振り返ると、「ランナーにも筋トレが必要だ」と単純にまとめるのは、少し違う気がした。
自分は筋トレもしているが、下半身をガチガチに鍛えてきたわけではない。ベンチプレスは楽しいから続けているが、スクワットはどちらかというと苦手で、下半身のウェイトトレーニングはむしろ少ないくらいだ。
それでも、走ること以外に何もしてこなかったわけではない。
自分が特に意識してきたのは、足上げやステップなどの動きづくりだった。いわゆるランニングドリルに近いものである。
筋トレはウェイトトレーニングだけなのか
最近は「筋トレ」という言葉から、バーベルやマシンを使ったウェイトトレーニングを想像する人が多い。
もちろん、それも筋トレである。ただ、ランナーが走るために行うトレーニングは、それだけではない。
プランクのように姿勢を維持するトレーニングもあれば、ジャンプのように瞬間的に力を出すトレーニングもある。坂ダッシュはランニング練習であると同時に、走る動作のまま大きな力を出すトレーニングでもある。
足上げやステップは、筋肉を大きくするための運動ではない。股関節を動かす、脚を素早く切り替える、接地のリズムを整えるなど、身体に動きを覚えさせるために行う。
これらを筋トレ、ドリル、ランニングと明確に分けることには、あまり意味がないのかもしれない。
同じジャンプでも、高く跳ぶことを狙えば筋力や瞬発力のトレーニングになる。接地時間を短くすることを意識すれば、ランニングドリルに近くなる。
大切なのは、何という名前で呼ぶかではなく、何を狙って行うかである。
筋力をつけるだけでは、走る力にはならない
筋トレによって脚の筋力が上がっても、その力を走る動作の中で使えるとは限らない。
反対に、ドリルでよい動きを練習しても、それを支える筋力がなければ、速いペースや疲労した状態では維持できない。
自分の中では、次のような関係をイメージしている。
筋トレで、身体が出せる力を高める。
ドリルで、その力の使い方を身体に覚えさせる。
そして、実際に走ることで、その動きをランニングとして定着させる。
厳密には、筋肉そのものが動きを覚えるわけではない。それでも、「鍛えた筋肉に、走る動きを覚えさせる」という表現が、感覚的には一番近い。
筋トレは身体の性能を高め、ドリルはその性能の使い方を覚える。そしてランニングによって、初めてそれが走力になる。
三つのうち、ランナーにとって主役になるのは、もちろん走ることである。
しかし、野球選手が実際に球を打つだけの練習をするわけではない。ゴルファーも、コースを回ることだけが練習ではない。動作の一部分を切り出し、繰り返し確認する時間がある。
ランニングも、それと同じではないだろうか。
毎日ではなく、定期的に続ける
補助的トレーニングは、毎日行う必要はないと思っている。
ウェイトトレーニングやジャンプをやりすぎて、肝心のランニングができなくなれば本末転倒である。ドリルも、疲れて動きが崩れた状態で回数だけを増やしても、目的から離れてしまう。
一度に追い込むことよりも、少量でも定期的に続けることが大切なのだと思う。
身体の動きは、一度練習しただけでは定着しない。しばらく行わなければ、以前から身についていた楽な動きへ戻っていく。
だから、毎日ではなくても繰り返す。
足上げやステップで動きを確認し、実際に走ってみる。走っていて新しい弱点を感じたら、またドリルや補強トレーニングへ戻る。
分解して練習し、走って元に戻す。
この積み重ねが大切なのだと思う。
走るために、走る以外のことをする
走るための身体は、まず走ることで作られる。
これは間違いない。
一方で、走っているだけでは、今まで身につけてきた動きをそのまま繰り返すことにもなりやすい。フォームに癖があれば、その癖を残したまま走ることだけが上達していく可能性もある。
補助的トレーニングは、走る練習の代わりではない。
走っている最中には意識しにくい筋力、姿勢、接地、脚の切り替えなどを、一つずつ取り出して確認するための練習である。
何が必要かは、人によって違う。すべてを行う必要もなければ、毎日続ける必要もない。
それでも、走る、鍛える、動きをつくる。この三つを自分なりのバランスで定期的に積み重ねていく。
ランナーに必要なのは、筋肉を大きくすることだけではない。
持っている力を、走る力へ変えていくことなのだと思う。
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