毎週ショートショート「合戦バー」
クリスマスまで、あと一ヶ月。
合コン会場の最寄り駅で、ライバルの佐々木と出くわした。
手元には細長い金色のパッケージ。
「合戦バー 戦略成功率UP!」という冗談みたいなコピー。
「最近、コンサル業界で流行ってますよね」と俺。
「ですね。これ食べると負けないんですよね」と佐々木。
合戦バー(1本1,200円)を食べると、脳内にクリアな戦略図が見えてくる。
プレゼンの声の抑揚から撤退戦のタイミングまで、全部が数値化されるのだ。
合コン会場のイタリアンレストランには、一際目立つスレンダーな美女がいた。
「年収、どれくらいですか?」
「将来は港区に住みたいんですよね」
彼女もまた、自分なりの生存戦略を明確に描いているようだった。
会話をしながら、脳内に次の一手の成功確率が浮かぶ。
<二次会成功率30%。ただし、失敗コストは大きい。>
戦略的撤退。
それがこの合戦の答えだった。
「二次会、行きます?」と彼女が聞いた。
俺たちは声を揃えた。
「明日、朝イチで会議が…」。
彼女が乗ったタクシーを見送り、佐々木がまた合戦バーを取り出した。
「これ、不思議なんですよね。クリアな戦略を追求した結果、勝つためじゃなくて、負けないための選択ばかりするようになる」
クリスマスツリーの光が、戦さの跡を静かに照らしていた。
負けを回避して得た「平和」を噛み締めながら、俺たちはまた合戦バーを齧った。
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今週も以下の企画に参加させていただきました。
よろしくお願いします。
