毎週ショートショート「好き化粧」
朝から降っている雪は、止む気配がない。
帰宅ラッシュのホームには、白い息が並んでいる。
時折強い風が吹き、
僕はコートを着ないで通学したことを後悔した。
ふと横に、知っている香りが漂った。
彼女だ。
でも今日は、マスクとメガネ。
髪も、少し乱れている。
「……ごめん、遅れそう。
あと、今日顔がボロボロだけど許してね」
彼女は、電話をしていた。
話すたびに、メガネが白く曇る。
マスクを外し、
「うん、あとでね」と告げてから電話を切った。
彼女の頬が、ほんのり赤くなっていた。
やがて、電車が来た。
彼女は再びマスクをつけて
人波にまぎれて消えた。
雪化粧をまとった電車が、走り出す。
僕は彼女の横顔を、そっと胸の奥にしまった。
今週も以下の企画に参加させていただきました。
