くすり屋伝助捕り物帳(番外編壱)茶屋娘お笹
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茶屋娘お笹に反応してコメント欄でやりとりしていたら、お話が浮かんできました。これからそのお話(時代小説)を書きたいと思います。
以前から計画していた、担ぎ商いの薬屋伝助が活躍する捕り物なんですが、今回は伝助が大店に努めて手代になり、番頭伝兵衛になり、婿養子の店主伝右衛門と出世した後の後日談という括りです。
出だしは・・・
「お笹ちゃん、お茶を一杯おくんなさい。 それと、名物の団子も添えてね。」
「お待たせしました🌸 お茶と笹団子お持ちしました❣️ こちらの旅のご婦人と相席させてもらって、よろしいですか?☺️」
「おぉもちろんもちろん。 ご婦人、どちらからいらっしゃったね? ここの団子はね、甘さ控えめでいくらでも食べられますよ。 良かったらおひとついかがですか? いやいや、遠慮なんか入りませんよ。 お笹ちゃん、団子もうひとつ追加でね。」
「まぁ❣️ ありがとうございます。 お二人とも ごゆっくりしていってくださいまし☺️」
「ご婦人、あの子いい子でしょ? こんな小さな頃から店を手伝って気立の良い娘でね。 おや?どうなさった?涙なんて・・・」
「いやあね、 お店が傾いた時に娘を奉公に出した知り合いがいてね‥ お笹ちゃん、と言ったかしら、 歳も同じ頃かなあと思うと、 他人事に思えなくてね。 フフ、旦那様‥ またこのお茶屋、 ご贔屓にしておくんなさいね」
「オウオウオウッ!何しやがんでぃ! 煮えたぎった茶なんか出しやがって、火傷したじゃねか!どうしてくれるんでい!エェ?姉ちゃん。 治療代払ってもらおうじゃねえか、ああん?」
「あらあら、旦那様、すみません‥ うちのお茶、粋で知られた常連のさこう屋の旦那様も、 (この熱さが染み渡る)と喜んでくださってますのよ。 それとも猫舌さんでしたら、フーフーいたしますが‥?」
「おや?お兄さん方火傷ですか? どれどれ見せてごらんなさい。 あたくしはその先で薬種問屋をやってるさこう屋の伝右衛門と申しますがね、ちょうど良かった、火傷によく効く膏薬があるんですよ、なに、お代はいらない貼って差し上げましょう。なんだ、ちょっとばかり赤くなってるだけですね。でも良かった。 これをこうして貼っておけば・・・」
「いてててて!何しやがる! あぁちょっと沁みましたか? よく効く薬ですからね3日もすれば元に戻りますよ。ただ・・・ こんな物ぁいらねぇ!いてててて! 」
「そう。無理に剥がそうとすると手の皮が剥がれますよ。 なんだあとぉ?いてててて あぁ、言い忘れました。血の気が上ると痛くなりますからね。大人しくなさった方が良うございますよ。」
「痛たた‥、と、取れねえ‥おぃ、ジロジロ見るな! 周りの客:クスクス‥ う、うるせぇ、こんな店二度と来るか!」
「お客様、お代の五文、きっちり置いていってくださいな。 あら、ありがとうございます。毎度あり。 次はぬるいお茶をご用意してお待ちしておりますね‥ さこう屋の旦那様、助け舟を出して下すって、ありがとうございました。 さっきの熊吉、最近難癖をつけてはただ食いしようとしていますの‥ ところであの、膏薬は?」
「あぁ、あれね。 ただの膏薬にちょいとばかり辛子を練り込んだやつでね。 取ろうと思えば取れるんだけど、暗示ってヤツですよ。 取れないって言われて信じ込んじまったら本当に取れなくなる。はっはっはっ。」
「フフ、お笹ちゃんといったかしら、 熊吉さんにはいいお灸になったわね。 ところでさこう屋の旦那様、 わたくし近江で商いをしておりまして、 良いお薬も扱いたいと思っておりましたの。 これも何かのご縁、お店に伺わせていただいてもよろしいですか? それにしても、ここはご縁席ね。 ありがとうね、お笹ちゃん。」
「おやおや、遠いとこをようこそお越しなさいましたな。ご苦労様にございます。 近江ですか!井伊様の御城下ですね。さぞ栄えていらっしゃることでしょう。 名城と謳われる彦根城は一度は拝見したいものでございましたが、貧乏暇なしでついぞ都の方へは行く機会がございませんで、惜しい事をいたしました。 ぜひ店へお越しください。近江お話しなどうかがいましょう。 手前どもの薬にご興味がお有りなら、手代を付けてご説明いたしますから、何なりとご相談ください。」
「ありがとうございます。 彦根城下の片隅で細々と白粉や紅、煙草などを売っております。 ちょっとした常備薬なども扱いたいと思っておりました。 そう、今日のご縁に、お笹ちゃんと、さこうの旦那様のご内儀様にもおひとつづつ差し上げましょう。 評判の白粉なんですよ。 お笹ちゃんも、遠慮なさらず‥」
「お笹ちゃん、そう仰るから、ありがたく頂戴しようかね。 せっかくの御縁です。ぜひ店に寄ってくださいな。 旅籠にお泊りですか? お近づきの印にお食事でもご一緒にいかがですか。 そうだ、お笹ちゃんもおいでよ。御縁をつないでくれたお礼に、大した物は無いがおじさんがご馳走しようじゃないか。」
「まぁ、ありがとうございます。 さこう屋のお内儀様の朴葉寿司、 美味しくて大好きなんですよ。 店を仕舞いましたら、厚かましく寄らせていただきます。 それでは、失礼して湯呑みを洗って来ますね」‥ タタタタ‥
「あっはっはっ。 小吉や。表にいるかい。」
「へい、旦那様」
「聞いた通りだ。先に帰ってな、おカミさんに伝えておくれ。 台所のおさん姐さんにもな。 ご婦人ふたり連れて行くからって。」
「へ〜い」
「おじいさん、米と小豆の仕込みも済ませたので、行ってまいりますね。 はい、さこう屋さんです。 戌の刻には帰って来ます🎵 近江の‥丁子屋のお竹様、 先ほどは白粉をありがとうございました。 然るべき時に使わせていただきますね。 まぁ!お立ちになられると、お召し物の裾模様が綺麗‥」
「あら、綺麗だなんてありがとう。 名前に因んで竹をあしらったのを用意してもらったの。これなら遠くにいてもわかるでしょ。 むかし離れ離れになった人が憶えて居てくれると良いのだけれど・・・な〜んてね。 想い人じゃ無いのよふふふ。」
「そういえば‥ 小さい頃に別れたおっかさんから貰った、手鏡の袋にも、竹の綺麗な刺繍があるんです。 それを見ると、おっかさんも達者でいてくれたら嬉しいな、と思うんです。 お竹さんのように、キレイなおっかさんだったような‥ あれ、なんだか涙が出ちゃって‥ 澄みません‥」
「お笹ちゃん、これはわたしのお守りで、これとおんなじ柄の袋を離れ離れになった娘にむかし持たせたのだけれど、ひょっとして同じ模様の物をお持ちですか。」
タタタタ‥ 「この袋でございます。 小さい頃に生き別れたおっかさんが、 唯一の形見として持たせてくれたものだと おじいさんから聞いており、 大事に持っておりました。 裏にはわたしの誕生の刻が縫い込んであるのです‥」
「あぁ・・・見て。わたしのお守りと対になっている。 あなたが・・・あの、お笹だったの。 ごめんなさい。ちゃんと育ててあげられなくて、ひとりで苦労をさせて、本当にごめんね。駄目な母親をさぞ恨んだでしょう。 ううう・・・」
「あぁ‥‥おっかさん、 本当におっかさんなんですね‥ いいえ、おっかさん。 おじいさんにも、近所の方々にもこうして良くしてもらい、楽しく暮らしておりました。 恨んだことなんて一度もありません。 ずっと、いつか会えるって信じておりました。 この竹の刺繍の袋のおかげで、 こうして巡り会えて本当によかった‥‥ あらやだ、おじいさんも、 さこうの旦那様みで泣いちゃって‥」
「そうだ、お笹ちゃんお竹さん、二人で湯屋へ行ってみちゃどうだろう。 いえね、前にも生き別れの親子があってね、一緒に風呂に入って背中流したりしているうちに『あぁそうだった、ここがこんなで』なんて忘れていた事を思い出したって言ってたんですよ。 そこの梅の湯に行って番台の女将さんでも息子の源太でも『さこう屋からおたのみまいらす』って符丁を言えば、お代は無くても使わせてくれるから、ぜひ行っといでな。」
「フフフ‥さこうの旦那様ったら、粋な事をおっしゃいますね‥ どうですか、お笹ちゃん、行かせていただきますか?」
「お竹‥いえ、おっかさんと 湯屋ですか? 恥ずかしいけど、おっかさんさえ良ければ、 わたし、背中を流してさしあげたいです。 手拭いとぬか袋を持ってきますね。」 タタタタ‥
「だんなさま」
「おぉ、小吉どうした。 」
「村上様がお越しになっています」
「そうか、お前走ってきたのかい。」
「はい。」
「よしよし頑張ったな。 おやじさんこの子に水をやってくださいな。 あと、団子を一包みいただきますよ。 小吉ご苦労だがな、また走って帰って、直ぐに戻りますと伝えておくれ。 この団子をな、手代の兄さん方と分けていただきなさい。
おやじさん、ちょっと野暮用ができたんで先に帰りますが、ふたりが帰ってきたら私の店へ来るよう伝えてくださいな。」
「ただいま帰りましたよ。」
「お帰りなさいまし。奥に村上様がお待ちです」
「おさんさん麦湯を一杯おくれ。ふう。夏はこれが一番だね。」
「村上様大変お待たせいたしました。見回りご苦労様にございます。
それで、本日はどのようなご用件で。」
「おう、伝右衛門さん実はな、伊勢から三河、駿河と荒らしまわっている、くちなわの平十郎という盗人の一味が箱根の関を越えたらしいんだ。」
「すると江戸へ来ると読んでおられるわけですね。」
「その一味の引き込み役の『白牡丹のお竹』というのがいて、そいつを品川宿で見かけたと、元盗賊あがりの密偵が伝えて来たんだ」
「白牡丹のお竹・・・」
「大年増だが結構いい女でな、大店の旦那なんぞを引っ掛けて店に入り込み、盗賊を呼び込んで忙ぎ働きをさせるって輩だ。伝右衛門さんも気をつけなよ。ってなかんじで今大店を回って事情を聴いて回っていたんだがどうだい」
「左様で御座いましたか。
実は村上様、少々こころ当たりがございまして、はい、湯屋の源太に当たってもらっているところです。」
「そうかい。それじゃ何かわかったら奉行所まで知らせてくんな。」
「旦那様、湯屋の源太さんがお見えです」
「おぉちょうど良かった、どうだったな。」
「へい。さすが伝右衛門さんのお見立てだ。あっしもね符丁を受け取って早速二階から見張っておりやした。大年増だがいい女ですねぇ。色白で腰のきゅっとくびれた小股の切れ上がったいい体で・・・、いえいえ村上様そんなつもりじゃ。見てますてぇとね、お笹坊と背中の流しっこなんぞしてましたが、湯に浸かろうとして、よりによって熱湯に入ぇったんですよ」
「へぇ~お前ぇんとこの熱湯は半端ねえけど大丈夫だったかい」
「村上様、一応婆ぁどもが3人浸かってましたがね、その女が浸かって腰のあたりまで入ったものの、熱さでたまらなくって飛び出てきました。婆ぁどもは大うけでさ『江戸の湯をなめんじゃんぇよ』ってなもんでね」
「早く話を進めなさいよ、村上様お待ちだ。」
「おっといけねぇ。それで湯から飛び出した体の腰から下は真っ赤になりましてね、ここ、内腿んところに真っ白な牡丹の彫り物が浮かんで出たんで、へい、ありゃあ白粉彫ってやつですかね、色っぺぇのなんのって、身近かで拝んでみたいもんで」
「ほう、白牡丹かい。女ぁなんて名だ」
「お竹と名乗っておりました。」
「茶屋のお笹とどうやら行き別れの親子らしいってことになりそうなんですが、どうもなんだか臭うなと思いまして、源太に頼みました次第で。」
「それで、そのお竹は今どこにいるんでぇ」
「はい、湯屋を上がったらうちで晩飯など一緒に食おうかと。」
「そのまま引き込みに入るにはうまく行きすぎだが・・・成り行きをみようじゃねぇか、伝右衛門の、頼めるかい」
「はい、それはもう・・・ただ、忙ぎ働きの盗人となるとうちの者も危のうございますので、きょうのきょうというのはご勘弁願いとうございます。」
「そうよな。きょうのきょうは無ぇだろうが、腕っぷしのいい若いのを二人ばかりよこすから納戸にでも隠しときな」
「有難う存じます。」
つづく(たぶんね)
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