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作品より先に、態度が伝わってくる──「つぐ」minä perhonen 展を観て[レポ010]

僕の会社・SKG株式会社は用賀に事務所を構えている。
歩いて行ける距離にある世田谷美術館では、開催のずいぶん前から
minä perhonen の「つぐ」展の告知ポスターが用賀駅に貼られていて、気になっていた。

幸いにも内覧会にお誘いいただき、僕自身はすでに楽しんでいたものの、
「もう一度ちゃんと観たい」と思ったし、
なにより今回は、スタッフにも観てもらいたかった。

世田谷美術館という場所自体もそうだし、
展示空間や、こういうものづくりに触れることで、
それぞれが何かを受け取って、
少し感化されて帰ってきてくれたらいいな、と思った。

そんなことを考えていたら、
ちょうど天気もよく、仕事のスケジュール的にも隙間があって、
「じゃあ今日、行こうか」と歩いて向かった。

僕の個人アカウントで書くnoteは、
レポと称しながらも、
展示内容そのものより、
展示方法や、展示にまつわるデザインで気づいたことを書くようにしている。
今回は写真多めに振り返える。

エントランスからのおもてなし

最初に感じたのは、
親切に説明される展示、という感覚ではなく、
迎え入れられた、という感覚だった。

オリジナルのテキスタイルで包まれた通路。
世界観の中に、静かに招かれるような入り口だった。

オリジナルのテキスタイルで包んだ通路

ここで、「おもてなし」という言葉を思い出した。

思い出したのは、星野リゾートの星野さんの言葉。
(星野さんの著書で直接触れていたわけではないのだけれど)

「西洋のラグジュアリーホテルで提供しているのは、バトラーサービス。
ホテルは執事、召使。
お客さまのあらゆるサーブをホテルが受け止め、
いかにしてきめ細かく、迅速、丁寧、正確に返すか。
日本はまったく違う。
そもそもゲストとホストが同じレベルに立っている。
しかもサーブ権はつねにホストが持っている。
茶の湯の文化がそうであるように、
まずホスト側が自分の世界観を構築して、それをお客さまに提示する。
お客さまは滞在中、四の五の言わず、その世界観に身を浸して楽しむ。」

『楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考』より

この展示は、まさに後者だった。
「わかりやすさ」や「丁寧な説明」ではなく、
まず世界観があり、それに身を委ねる。


砧公園を借景にした展示

砧公園を借景にしたようなテキスタイルの展示

世田谷美術館の性質上、
外の砧公園の気配を感じる瞬間が、ところどころにある。

その景色を意図的に展示に取り入れているように感じたのが、
冒頭のテキスタイルのタイル展示だった。
まるで自然の一部のように、そこに在る。

室内展示なのに、どこか屋外的な空気がある。
ミナ ペルホネンのテキスタイルが、
装飾ではなく、環境の一部として存在しているように感じた。


展示台の下地

テキスタイルから、すべてが始まる


印象的だったのは、
テキスタイルが「主役」であり続けていること。

服やアクセサリーが並ぶ展示でありながら、
その展示台の下地そのものに、テキスタイルが使われている。

これは説明されなくても伝わってくる。
「まずテキスタイルがあり、
そこから服やプロダクトが生まれる」という思想。

言葉で語るのではなく、
構造そのもので示している展示だった。


連続するテキスタイル
連続するのてとなりの生地が次に影響しているのもかわいい

「つづく」から「つぐ」へ

テキスタイルを起こし、つなげていく展示の仕方を見ていて、
以前開催されていた「つづく」展の記憶が、自然と重なった。

言葉としての「つづく」と「つぐ」。
その意味が、視覚的にも、身体感覚的にも連なっている。

時間も、思想も、制作も、
途切れずに続いてきたことが、静かに伝わってくる。


テキスタイルのダイヤ型と合わせられているアクリルプレート
となりのオーバル型のお皿と合わせたのか

気づきにくいところまで、きちんとデザインされている

展示の中で、ふと足を止めたのが、
アクリルプレートの形や処理だった。

多くの人は気づかずに通り過ぎるかもしれない。
でも、そこにも神経が行き届いている。

こうした細部の積み重ねが、
展示全体への世界感をつくっているのだと思う。


工場展示・道具

工場サイドへのリスペクトを強く感じた後半展示

後半に進むにつれ、
展示の重心が「工場」に移っていく構成も、とても良かった。

特にシルクスクリーンの展示。
道具だけでなく、その場の空気感ごと持ち込もうとしている。

印刷会社・GRAPH出身の僕としては、
正直かなりの萌えポイントだった。

刺繍の工程も圧巻だった。(写真がない・・)
糸の運びをプログラムしていく職人さんの図面や映像。

「手仕事」という言葉では片づけられない、
設計と技術の積み重ねが、そこにはあった。


シルクスクリーンの版

影まで含めて完成する展示

工場のシーンを原寸大で投影したプロジェクションマッピング。
それ自体も良かったが、
何より感動したのは、その壁面に掲示されていた
実際のシルクスクリーンの大きな版だった。

シルクスクリーンの版は、絵柄が「穴」になり、
そこからインキを通す。
その「穴」に着目し、
版を壁面から少し浮かせることで、
背後の壁に影が落ちる。

その影が、驚くほど美しい。
印刷の仕組みそのものが、
展示空間の中で詩的に立ち上がっていた。


帰路に

「つぐ」展は、
作品を並べる展示ではなく、
ものづくりの態度を継いでいく展示だった。

何をつくってきたか、ではなく、
どうつくってきたか。

だからこそ、
スタッフと一緒にこの展示を観に来られてよかったと思う。

それぞれが、
どこか一箇所でも引っかかるものを持ち帰ってくれていたら、
いいんだけど。

そんなことを思いながら、
スタッフはまだじっくり観ていたので、
先にひとり、きぬた焼を手に、
歩いて会社へ戻った。

きぬた焼。中身はあんこにした。

会期:2025年11月22日(土)~2026年2月1日(日)
会場:世田谷美術館 1・2階展示室
主催:世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)、朝日新聞社
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会、J-WAVE

https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00224

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