内気な私が卒園遠足でお化け屋敷に入って大変な目に遭った話
2歳の頃、兄が幼稚園のバスに乗ると私は「僕も幼稚園行きたい!」と言って毎朝泣いていた。
兄が通う幼稚園なる場所が楽しそうに見えたのだろう。何をしているのかは全く知らなかったのだが、兄が通えて私に通えない理由が分からずなんだか悲しかったことだけはおぼろげだがよく覚えている。
時代的なものもあり家事など全くやらなかった父ではあるが、泣き出す私を宥める担当だったらしく会社に行く前に喫茶店に連れていき泣き止むまで付き合ってくれたという話を聞くと気恥ずかしく申し訳ない想いになる。
2年後に念願叶って幼稚園に通う訳だが、そこは泣いて懇願するほど楽しい場所ではなかった。
歌ったり折り紙を折ったり紙芝居を見たり、そういうことは興味の対象ではなかったことや「女の子を虐めるな」という父の教えを忠実に守り過ぎたところ何も反論しないので攻撃の対象になってしまったことも幼稚園での集団生活を嫌う理由だったように思う。
そんな訳で幼稚園の頃の私は気が付けば極めて内向的に育ってしまった。
泣いて懇願していたはずの幼稚園も2年間嫌々通い続け、卒業遠足の日を迎えた。遠足の目的地は、近所の向ケ丘遊園地。
親も同伴だったと記憶しているが、確かアトラクションには極力子供だけで入っていた。今なら完全にアウトだが、幼稚園のイベントとして組み込まれていたことを考えると自分たちだけで何かをさせることを教育の一環としていたのではないかと思う。
観覧車や水上コースター、メリーゴーランドなどに乗り、楽しい時間を過ごしていた私達だったのだが、最後にお化け屋敷に入ることになった。
前述の流れから子供だけでゴールを目指すのだがさすがに1人だけでは心細いという配慮からか「4人1組で1つのチームが入り、終わったら次の組が入るという」ルールが作られた。
私は同じマンションに住んでいた女の子2人と、活発なシンゴ君という男の子と同じ組になった。女の子とは仲が良かったのだがシンゴ君の活発さを内気な私は苦手にしているところもあって、この組で入るということに抵抗を感じていた。
ただ決まってしまったものは仕方が無いし、それを訴えるほど私は積極的ではなかったのでこの決定に従った。程なくして前の組が出てきたので、私たちも行くことにした。
私はとりあえず他の3人についていこうと思っていた。こういう時に自我を出すと大抵責めを受ける。一歩引いた方が上手く行く。そうした方が経験上揉めずに済むと感じていたのだ。
ただ、誰も先頭を歩こうとしない。
おや?と私は不思議に思った。
どうやら私以外の3人は全員怖気づいているのだ。
入る前は楽しそうにしていたのにそんなものなのかと不思議に思う私。6歳にしてお化けを全く信じていなかったので、お化け屋敷に入るという行為には全く恐怖心を抱いていなかった。
その様子を察したのか、後ずさりした3人が何も言わずに私を先頭に出してきた。都合のいい人たちだ。しかし頼られることに悪い気はしないし、他の人たちが怖がるものが全く怖くないというのは勇気が出る。
私は3人を従えて暗がりの中を進むことにした。
あまりに私がスタスタ歩くからか、あとの3人も化け物が出てきてもそんなに驚かないようだ。空気に吞まれずに行動が出来ていることで3人は私を頼りにしてくれた。人生で初めての経験なので嬉しくなり、そのまま速足で出口を目指した。
ただ、様子がおかしい。
歩いても歩いても出口が見えないのだ。
お化けも暗がりも全く怖くないのだが、出られないことは怖い。
次第に道も細くなってきたし、お化けすら出てこなくなった。ただただ真っ暗な中で、どこを通っているかもよく分からない。
恐怖心は次第に強くなってきた。
私以外の3人に関しては言うまでもない。
ただ、生まれて初めて人に頼られる中で私も同じように怖がっている訳にはいかない。出口が見えない中でただ暗いだけの道を突き進む。
もはやどこに道があるのかもよく分からない。お化け屋敷ってこんなものなのかと次第に恐怖が増幅される。
恐怖を押しのけて前進を続けたところ、唐突にドアが見つかった。
ここがゴールか。
思い切り開ける。
だがそこには、草が大量に茂っていた。
ここは一体どこなのだ?
周りを見回しても誰も居ない。
呆気に取られる私。
そして3人。
恐らくお化け屋敷は終わったのだろうが、何が起きているのか全く理解が出来ない。入口と出口は同じ筈なのに、予想も出来ないどこかに来てしまった。別の世界にでも出てきたのだろうか?
私にはお化け屋敷のどのお化けよりも、伸び切った雑草の方が不気味で怖かった。
掌から汗が止まらない。
緊張すると私は子供のころからいつもこうなのだ。
私と3人の恐怖はここでピークに達した。
私はもう一度ドアを見た。
そこにはこう書かれていた。
「非常口」
と。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いいたします!
皆様のために今後使わせていただきます!
