昭和レトロ風SF冒険小説4
【ぼくらの怪獣大戦争1939】(完結編)
少し前まで死んじゃうかもしれないって思ってたお姉さん。
その彼女は驚くほどの回復力を見せて、いま僕たちの前を走ってる。
そういえば、今に至るまで彼女の名前を聞いてなかったことに気付き、僕たちは前を走って行く彼女に大声で尋ねてみた。
「あのさー、お姉ちゃん。お姉ちゃんの名前は?」
先を進む彼女は立ち止まるとにっこり笑って、そして答えてくれた。
「私の名前はミアフェリナ。惑星間調停協会の元エージェント。そして今は戦闘龍のコアユニット」
ミアフェリナの笑顔で、僕の心はドキドキが一層激しくなる。
未来からやって来た彼女は、普通の人間とはかなり違ってるけど僕にはとても魅力的な女の子に思えた。
「ミアフェリナが行きたかった場所って、本当はここじゃなかったんだよね。いまからその《場所》へ行くつもり?」
「そうよ。それが私の任務だから。でも……その為には君たちにもう一つ、協力してもらわないとダメ見たいなの」
胸の前で両手を組み、顔をちょっと傾げるミアフェリナ。
彼女の瞳は相変わらず、不思議な金色の輝きを放っていた。
僕は……僕と勝ちんはそんな彼女に対し、一も二も無く首を縦に振ると彼女の元へ駆け寄った。
「僕たちに、して欲しいって、どんな?」
肩で息を切らしつつ僕は、訪ねた。
「あ、あんまり難しい、事は出来ないよ?」
僕の隣で喘ぎながら、勝ちんが言葉を引き継いだ。
その後ミアフェリナは悲しげな表情を浮かべると、すぐには信じられないような言葉を口にした。
「あなた達の防衛軍は、高出力の粒子砲を持ってる。それで……私の機体を攻撃して欲しいの」
「え?」
「なんで?」
僕と勝ちんの声がきれいにハモる。
「私の戦闘龍、このままじゃ時空は越えられないけど、もう少しエネルギーをあれば跳べるのよ。だからこの基地にある粒子砲からそれを貰おうって作戦。今、あそこの基地の人間は私が使った、強力な精神干渉波のせいで気を失ってるはずなの。だからあなた達が基地に行って、みんなを覚醒させて。
この、モジュールを解放するだけでいいわ」
そう言って彼女は、何も無い空間から小さい長方形の、箱状の物体を出現させると僕に手渡した。
「みんなを起こしたら、基地が攻撃されるって言いなさい。私はその時、基地の上空で待機してるわ」
僕も勝ちんも、自分の耳を疑っていた。
電力が欲しいなら、それを軍の人達に伝えたらいいじゃん……。
「残念だけど、大人には私がどれだけ説明しても無駄でしょうね。せいぜい捕まって、実験材料になるだけ。他の国の軍隊と同じように……荒っぽいやり方だけど仕方ないの。」
まるで僕たちの心の中を読んだように話す彼女だけど、その面はとても辛そうに見えた。
「攻撃、粒子光線で攻撃したら、銀龍の機体壊れるんじゃない?外惑星人の円盤は吹っ飛んだよ」
目に涙を浮かべて話す勝ちんは、両手を握りしめ肩を震わせた。
「大丈夫。この世界の兵器レベルで私たちを倒すなんて無理だから。けど、一応こちらからは少しだけ攻撃させてもらうわ。じゃないとあなた達の努力が無駄になるでしょ」
僕と勝ちんは。彼女に優しく頭を撫でられた。
それから、ミアフェリナはぼくに向かってゆっくりとした口調で、何となくさみしそうな表情で話しかけてきた。
「功くん、いい子にしてね。私はこの後この世界から自分の行くべき世界へ向かうわ。きみ達とはもう会う事もないけど、元気でね。勝久くんもみんなと仲良くね」
ミアフェリナはそう言うと、僕と勝ちんの頬に軽く口づけをしてくれた。
僕たちはその瞬間、自分たちの感情を抑えきれず、声に出して泣きながら彼女に抱き着いた。
「ヤダよ!折角仲良くなれたのに。未来の話をもっと聞きたかったのに!サヨナラなんて嫌だ!」
ミアフェリナはやや困ったような、戸惑ったような素振りを見せたけど次の瞬間、僕たち二人を抱きしめるとそっと語り掛けてきた。
「私はここにいるわ。いつでも。あなた達のここにいるから」
そう言いながら、彼女は僕の胸の真ん中に軽く指をあてた。
暖かな、優しい波動が触れた指先から流れ込んでくる感じがした。
「お願い。やってくれるわね」
僕の胸から指先を離して、彼女は懇願するように言った。
僕たちは無言で頷き、基地のある方向に走り出した。
暗い夜道、雨上がりでぬかるんだ道は、僕たちの行動を邪魔しようとしているように思えた。
でも僕たちはそれを乗り越え、目指す防衛軍基地の敷地内にたどり着く。
金属の柵をよじ登り土手を滑り降り、演習場を駆け抜けて静まり返っている基地の中に潜り込むことに成功した。
そして大勢の軍人が倒れて……眠りこけている通路を指令室と思われる広間に飛び込んだ。
入り口付近に倒れている人に触れてみる。
温かさを感じた。
やはり、全員が眠りこけた状態だった。
「凄いな!基地にいる全員が眠ってるだけだなんて、これが400年後の科学力なのか」
僕は改めて未来の科学力に驚嘆する。
「ミアフェリナも普通の人間とは違ってたしね。でもさ、そんな科学力があるのに、世界は滅亡寸前だって言ってたよね。彼女、間に合うといいな」
「あぁ。だから急ごうぜこれを、こうか?」
勝ちんに言われるまでもない。
僕はミアフェリナから託された装置を手に持ち、それを宙に掲げて祈りを込めた後、大声で叫んだ。
(お願い、基地のみんな目を覚まして!ミアフェリナの為に力を貸して!)
「大変だぁ!異星人が攻めてきた!早く、新兵器を稼働させて!基地の真上から襲ってくるよ!」
装置がまばゆい光を発し、僕たちは思わず目を閉じた。
そして、一気に基地内は騒然となっていた。
まるで止まっていた時間が動き出したように。
時間が数時間飛んだように。
やがて、手にした装置の発光が止まった。
はっと我に返って周囲を見渡す。
基地の指令室にいたはずの僕たちは、神社の境内に二人して立っていた。
「あ、あれ?ここ、神社だね。おいら達どうやってここへ?」
勝ちんの素っ頓狂な声で、僕は落ち着きを取り戻した。
頼りない相棒の為に、僕がしっかりうしなくちゃ。
ドォーン、ズドォーーン!
離れた場所から爆発音が聞こえてきた。
勝ちんを促し、僕は境内から参道に続く道へ向かって走った。
遥か上空に目をやると、そこにはミアフェリナの操縦する銀龍が、口の部分からまばゆい光線を発射して辺りを攻撃していた。
その攻撃による基地の建物、施設の破損は何もなかった。
ただし、基地周辺の地面が羊羹のように切り裂かれ、土塊が蒸発する。
混乱していた基地もやっと通常に戻ったらしく、いよいよ防衛軍自慢の新兵器が起動する。
大出力の光の奔流が銀龍に向かって伸びていった。
「あ、あれを見て功ちゃん!」
勝ちんに促され空の上、その更に上空に目を向けた。
黒い雲が渦を巻きながら発生していた。
その真下で、銀龍は地上から発射された光線を吸収し続けている。
やがてその機体が銀から純白に変わり、暗い夜空が真昼のように明るくなった。
次の瞬間、黒雲の真下で、僕たちが銀龍を一番最初に見た光景が再現されていた。
歪んでいく空間。
銀龍……ミアフェリナがその空間に吸い込まれていく。
ゆっくりと、巨大な機体を光の煌めきに任せながら。
未来の世界の、さらに未来に希望を運ぶために。
「さよなら、ミアフェリナ。僕の子孫の子孫の子孫の誰かが、君に今日のお礼を言ってくれることを願ってる」
(キシャァァーーッ!)
金属的な咆哮が、聞こえてくる。
別れを告げるようなその鳴き声は、時空の歪の中に静かに消えていった。
後には何事も無かったような静寂。
真夏の夜の夢のようだった。
「帰ろうか。親父達、大激怒だろうな」
僕はもう一つの、帰りたくない現実に引き戻されて肩を落とす。
「今夜の事は誰にも話さないでおこう。どうせ誰にも信じてもらえなさそうだし」
「だな。僕たちだけの秘密だ」
勝やんの意見は正解だと思う。
外惑星人の相手で精いっぱいの大人達には、未来からやって来た使者でさえ攻撃対象にしてしまうに違いない。
山道を下っていくと、懐中電灯の明かりと僕たちを呼んでいる声が聞こえてきた。
「父ちゃん達だ!どうする?おとなしく帰る?尻叩きが待ってるよ!」
勝ちんが足をがたがた震わせて、泣き面になっていた。
「そうだなぁ……どうせこんな時間になっちまったんだし。いっその事、山猫少年団のみんなで冒険に行こうぜ!」
僕は全力で山を下り、憤怒の形相の大人達の間をすり抜けて街の通りを駆け抜けていった。
僕たちの夏休みは、まだ始まったばかりだった。
『ぼくらの怪獣大戦争1939、完』
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(あとがき、のようなもの)
お読み頂いた読者の皆様、お付き合い頂き感謝します。
これにて本作品完結でございます。
拙い文章、矛盾だらけの展開、セオリー無視の作品でしたがそれでも面白かったと思って貰えたら、作者泣いて喜びます。
様々なSF特撮作品から、ネタやらセリフやら混ぜ込んでみたんですけど、それがどんな効果をもたらしてるのか、作者にも解りません。
何か気付いた事があれば、ぜひどうぞ。
実は一つの作品を完結させたのは、事実上これが初めてなんです。
投稿サイトでよく「エタる」って表現されるって聞いたんですけど、つまり作品を完結させられないっていう事ですね。
ずっとエタり作家でしたが、これで一歩前進、出来たかなぁ?
こんな作者で良かったら、フォロー&スキをよろしくお願いします。
<(_ _)>
『このストーリーを最初から読む方はこちら』
『こちらの作品もよろしくお願いします』
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