『ビリビリなまず』〜哀〜
ある小さな山に、小さな沼があった。
沼にはなまずが住んでいた。
母さんなまずはビリビリなまずで
小さな子どもが2匹いた。
ある日、沼にかつてない大雨が降った。
ふだんは静かな水面が、バシバシッと
今まで聞いたことのない音を立てている。
母さんなまずか見上げると、水面は矢が刺さるように無数の穴が開いては水が震える。
「なんてひどい雨なの!嫌になっちゃう!」
天気に文句を言ったところで仕方ないが、
最近なまずの母さんはすぐにイライラして、言葉が鋭くなる。
「母さん、こわいよ」
「母さんだって怖いの!」
「ぼくたち、どうなるの」
「そんなの解らないに決まってるでしょ!」
子どもに当たっても仕方ないのに、勝手に反応してしまう。
何かあったら逃げ場もない。
不安がイライラになり、体かビリビリしてきた。
何かしゃべっていたほうが気が紛れるからと
「これじゃ沼がどうかしちゃうわ!
大雨なんていやぁ〜〜〜!
もう、やめてぇ〜!」
と上に向かって鋭い声で叫んだ。
その途端、ビリビリなまずの母さんの体に
ものすごい電気が走った。
ビリビリビリビリーーー!!
沼が一面に光った。
まるで雷が落ちたみたいな勢いだった。
それは雷ではなくて、なまずの母さんの
怒りの放電によるものだった。
ビリビリなまずの母さんが
ふと我に帰って横を見ると、子ども達が
気を失ってピクピクしている。
「かわいい子ども達、どうしたの!しっかりして!」
再び鋭い声でビリビリなまずが叫ぶと
ビリッ‼︎
一瞬また電気が走った。
「母さん、いたい‥」
上の子どもがかすかに呟いた。
「ああ、ごめんなさい。こんな痛い思いをさせてしまって‥」
できるだけ優しい声で話しかけた。
「母さん‥」
子ども達はほんの少しだけ笑って見せた。
けれども、それきり目を開けなかった。
雨はすっかり小降りになっていた。
「ぜんぶ私のせいだ」
日を追うごとに後悔は増していく。
もう沼に生き物は1匹も残っていない。
独りぼっちになったビリビリなまずに、もうビリビリの力は残っていなかった。
なまずは、ただじっとその命が尽きるまで
ひたすらに祈った。
「あの子達が次に生まれ変わったら、どうか、もっと幸せになりますように。
もし、叶うことなら向こうの世界で会って謝ることができますように。
そして、ビリビリの力が二度と私に与えられませんように」
おしまい
みわからすさんの企画に参加させていただきます。
いつもありがとうございます😊
