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この恋を、私は覚えていようと思う。

初めて人に振られた。
これなんかちょっと嬉しそうに聞こえるかもしれないけど、全然そんなことない。笑っちゃうぐらい嬉しくない。

ドラマや音楽、映画や小説、いろんなとこに出てくる失恋の言葉たち。今までは、ふーん、切ないね、って、それだけだった。
あの歌詞が、あのセリフが、あの一文が、ぶすぶすぶすぶす、心に矢のように刺さる。
「あ、これ、私たちのことやん」って。もうやめてくれ、って思うくらい、いろんな思い出が襲ってくる。

でもね、ただ確かなことが一つだけある。
涙が、出なくなった。
これはね、大きいことだよ本当に。心って、案外がんばるんだなあってなった。知らなかった。
切り替えようとしている自分は、ちゃんといる。

うん、私は偉い。今日はそう言ってあげる。
泣かない夜をひとつこえた。
それだけで、多分もう、少し前より強い。

私はずっと「ありがとう」を言うのが苦手だったんだと思う。
いや、言葉では言える。コンビニでお釣りもらった時とか、道を譲ってもらった時とか「ありがとうございます」って。でもね、本当の意味で感謝してますって心の底から言うのは恥ずかしいというか、怖いというか。

でも今は言える。
noteを通して、何度も読んでくれた人たちへ。
やさしいコメントや、いいねの一つ一つが、ほんとうに支えでした。ありがとう。noteを始めたのは、ちょうど一年前くらい。
「なんとなく」で始めたはずなのに、今はここが、すごく大事な場所になっている。


私は感情を出すのがとても苦手。
だって、もし出して、それを誰かに見られて、鼻で笑われたり、勝手に意味をつけられたりしたら、もうめんどくさすぎるから。
自分を「知ってほしい」って、ほんとは一番強い願いなのに、それが一番怖かった。
だから、ずっと「なんでもないよ」って顔して、ふざけて生きてきた。そんなつもりだった。

でも、人間って、ちゃんと限界くる。

心に無理させたら、ある日、ぽきって折れる。
音はしない。でもわかる。「あ、今、折れたな」って。

だから、今こうして書いている。
信じられる自分の言葉で、ちゃんと向き合いたくて。
「私はここにいるよ」って叫ぶために。

今日も読んでくれてありがとう。
あなたがいてくれるこの世界、なかなか悪くないね。


今まで私は好きな人ではなくって、好きになってくれた人と付き合ってきた。
あっちが手を伸ばしてくれて、わたしがなんかそれに反射的に掴まりに行く、みたいな感じ。こっちからは、伸ばしてないのよ、手。ポケットの中で、ぐーのまんま。「うん、なんか、まあ、、、好きかも」って思い込もうとする。だけどやっぱりダメなんだよね。
時間が経つにつれて、めんどくさがり屋のわたしが、ぬるっと顔を出す。で、最後は決まって、わたしから別れを切り出す。相手はびっくりして、「え、なんで?」ってなる。こっちとしては「いや、最初からわかってたじゃん?」って思うけど、それは言わない。

「好きな人と恋をした」んじゃなかった。
「私のことを好きって言ってくれる人」に、なんとなく甘えてきただけだった。


こんな恋ばっかりしてきたのには、一応、理由がある。
昔、初恋の相手に全力で恋をした。
部活も勉強も、何も手につかなくなった。
その人のことばかり考えて、コツコツ積み上げてきたものを、全部、どっかに置いてきた。

「好き」って気持ちが、自分をぐちゃぐちゃにした。

それがめちゃくちゃイヤだった。だから、もうやめた、自分から人を好きになるってこと。
向こうから好きって言ってくれる人とだけ、付き合ってきた。安心したかったんだと思う。愛されてるっていう保証が先にあると、自分が壊れない気がして。
でもさ、そんな中でも、人を好きになる瞬間ってやっぱりあるんよね。
そういうときは、もう徹底的に避けた。
2人で会わない。連絡取らない。接点作らない。
自分がまた、何にもできなくなるってわかってるから。
過去の自分を思い出して、また全部壊しちゃうのが怖かったから。
そうやって、ずっと守ってきたんだと思う。自分のこと。
誰かを好きになる、って感情から。

でも。
半年前に出会った彼は、違った。

彼と初めて出会った時に、”あ、結婚するかも”って、本当に思った。
相手のこと、まだ全然知らなかった。
名前と、顔と、たぶん血液型くらいしかわからなかったけど、それでも「なんか好きだな」と思えて。
声とか、表情とか、言葉の選び方とか。
あと、出会って5秒でハグしてきたところ。
ここ日本だよ?って思ったけど、なんかそのズレた感じが嫌じゃなかった。
初めてのデートでここ選ぶ?っていう珍しい料理のお店でご飯食べて、バー行って、まだ終電あるけど離れたく無いって二人で思っちゃってカラオケ行って朝まで歌って話した。
帰るとき、彼が言った。
「この後会えなくなるなんて、俺、絶対やだよ」って。

一瞬、何言ってるのかわかんなかった。
でもすぐに意味がわかって、怖くなって、笑ってごまかした。でも彼は、次に会う日を決めるまで帰らせてくれなかった。なんだそれ、って思ったけど、嬉しかった。
というか、たぶん、あれで全部決まった。
あの夜のこと、今でもときどき思い出す。
夢だったんじゃないかって思うくらい、きれいで、変で、楽しかった、幸せだったな。
どうすれば、あのまま一緒にいられる未来を選べたんだろう。何を変えれば、どこを守れば、ちゃんとふたりでいられたんだろう。
わからないまま、今もまだ、その夜を思い出してる。

3月に行った旅行のことは、きっと一生忘れられない。
っていうか、忘れようとしても、忘れられない気がする。あれは、そういう類の時間だった。
部屋に温泉がついてる宿に泊まった。
チェックインのとき、朝ご飯を和食にするか洋食にするか選べるって言われて、私は即決で「洋食」。
彼は、すごく悩んでた。ほんとに長かった。そんなに悩む?ってくらい。で、結局、「和食」にした。
「なんでそんなに悩んでたの」って聞いたら、
「いつもは洋食だけど、違うの選んだほうが、分け合えて楽しいじゃん」って。
ああ、この人、私のことちゃんと考えてるんだな、って思った。
それってすごく小さいことなんだけど、でもその小さいことで、私はすごく大きな安心をもらった。
そうやって、自分のいつもを変えてくれるくらいちゃんと愛してくれた。
この地域は雪が降らない季節だったのに、この日だけ大雪警報が出るくらいに真っ白でキラキラの雪が空から私たちを覆い被せて、美しい景色を見せてくれた。
全部が静かで、美しくて、非現実みたいで。
「こんな景色、二度と見られないかも」って思った瞬間、
「じゃあこの時間も、二度と戻らないかもしれない」って不安が一緒にやってきた。
幸せすぎるときって、なんでかちょっと怖い。
忘れたくない、って思う反面、絶対忘れられないだろうなって確信もあって、それがすごく切なかった。

もしかしたら、あのときからもう、この恋は、別れを内側に抱えながら進んでたのかもしれない。

そうして、年度が変わった。
春の風は、ちゃんと暖かかったし、街には新しいスーツの子たちがたくさん歩いていて、私はなんとなく「今年はいい年になるかも」って思ってた。根拠なんて、なかったけど。
でもその春は、ちゃんと忙しかった。
ありがたいことに、仕事がいっぱいあって、気づいたら一週間が一瞬で終わるみたいな毎日だった。
そうなると、会う回数は自然と減った。
なんなら、LINEの返事も遅れがちになって、お互いの扱いがちょっと雑になっていった。
で、やっぱり思うわけ。「ああ、またやっちゃってる」って。
いつもの悪い癖だ。一つのことしか出来なくて、仕事と恋愛を上手く両立できないんだ。仕事に集中し始めたら、恋愛がカラッカラになる。
恋愛をちゃんとしようと思ったら、仕事がスカスカになる。結果、どっちも微妙になる。なにこれ、最悪のミックスジュースじゃん。
そのとき私は、「私は努力してるけど、あなたはしてないよね。ちょっと私のこと雑に扱いすぎじゃない?」って言ってしまった。
「私のこと、もう好きじゃないなら、はっきり言って」
そう言った。泣きながら。
なのに返ってきた言葉は、
「今は恋愛する気がない、ごめんね」だった。

うん、そういうのが一番、しんどい。
こっちの心を守るためだったのか、それとも自分が悪者になりたくなかったのか。
いや、たぶん、どっちもだと思う。そういうの、わかる。私もそういうとこあるし。
私の心を守るためなのか自分のためなのか、そんなごまかしの言葉を言われた。

「他に好きな人ができたんじゃないの?」って誰かが言ってきた。でも、違う気がする。
あの人は、そういうタイプじゃない。なんとなくだけど、そう思う。でも、もし誰かを好きになってたとしても、それはそれで、ちゃんとわかると思う。
ただ、それも言わなかった。最後まで。
私は、ただ「好きじゃなくなった」って言ってほしかった。きついけど、潔いじゃん。

泣いてたから全然頭回らなかった。
それでも、「いい終わり方をしたい」ってことだけは、ちゃんと考えてた。
だから、無理に言葉を探すのをやめた。
沈黙がたくさんあった。言葉がなかなか出てこなくて、お互いに目を伏せたり、涙を堪えたりしてた。
その数分間、たくさん考えた。
「まだ離れたくない」って言いたい気持ちもあって、本当に言いそうになった。喉のあたりまで出てた。
でも、どこかで「今じゃない」って思えた。
それはたぶん、ちゃんと彼の目を見てちゃんと声を聞いたからだと思う。もう戻れないって、わかっちゃったの。

そうやって私は自分のためにこれからの選択をした。
この選択に、後悔はない。
胸が痛くて、息がうまくできなくて、涙が止まらなかったけど、でもきっと、この選択は私を強くする。
今は、そう信じるしかないんだと思う。

ただただ、もっと私のことを知ってほしかった。
変に取り繕ったところとか、いい感じの私じゃなくて、しょーもなくて、ぐちゃぐちゃで、情緒ジェットコースターな私を、もっと見てほしかった。
そして私も、彼のことをもっと知りたかった。
休日なにしてるのかとか、昔好きだったアニメとか、子どもの頃何が怖かったのかとか。知りたいって思えることがあるうちに、知っておきたかった。

「これから先もずっと愛してるよ」って、最後に彼は言った。それを聞いたとき、ふっと『ラ・ラ・ランド』のラストシーンが頭をよぎった。
別々の人生を選んだけど、目が合った一瞬に、確かにあった愛を分かち合う、あの場面。
なんだよ、こんなときに映画のシーン思い出すとか。
私、意外とロマンチストなんだなって、ちょっと笑った。
でもさすがに、そのロマンチックな感じはすぐにどっかいった。
現実はスクリーンほどきれいに終わらないし、エンドロールも流れてこない。
ただ、帰りの電車が寒かっただけ。
そうやって、彼とさようならをした。
バイバイも、じゃあねも、またねも言わなかった。
でも、ちゃんと終わったんだ。


愛に溢れた毎日をくれて、本当にありがとう。
出会えたこと、それだけで、もう十分すぎるくらい幸せだった。誰にも言わないけど、実は、今でもときどき思い出してる。そして、あの時間があってよかったって、ちゃんと思えてる。

だから、どうか元気でいてね。
好きなだけ眠って、ちゃんとごはん食べて、私の知らない誰かと笑い合ってもいいから、体だけは大事にして。仕事しすぎずに!



大好きだったよ。
たぶん、今も。
でもそれは、別れたあとにやっと言えるようになった「大好き」だと思う。