三度の飯より本が好きなわたしが、市民農園を開墾する理由
わたしはもともと、食べるのが好きなほうではなかった。
小さい頃は家にある本や図鑑をひたすら読みふけっていて、食べ物にはまるで興味がなかったらしい。あまりにも食べないので、母親が一度「もう放っておこう」と決めて、隣にごはんを置いて静かに見守っていたことがある。
朝ごはんは手をつけず、昼ごはんも手をつけず——それでも読み続けるわたしに困り果てた母が、夜だけはさすがに食べさせた、というエピソードが残っている。
そんな「三度の飯より本が好き」だったわたしが、今年から東京都日野市で市民農園をはじめることにした。

なぜ市民農園を借りることにしたのか。理由はとてもシンプル。
「食べ物の心配が減れば、好きな学びや創作にもっと打ち込めるのでは?」
そう思ったからだ。
留学中、一番困った「食」
2022〜2023年、わたしはアメリカに留学していた。
文献を読んで、同級生と議論して、みんなの前で発表して……。学ぶこと自体はとても楽しかった。人生でこんなに不自由がないことがあるのかと思った、たった一つを除いては。
それは、「食事」だった。
アメリカの物価はとにかく高い。学費も家賃も高い貧乏学生生活なのに、さらに食費もバカにならない。外食に行けば20%のチップが必須。ラーメン一杯3000円、というのも本当だった。
「じゃあ自炊をしよう」と思っても、スーパーに行っても味噌汁にできそうな野菜がほとんど売っていない。野菜売り場に並ぶのは、ほとんどサラダ用の葉物だけ。ギリギリ白菜があるかどうか。「ここにネギやほうれん草や里芋があったら、どんなにいいだろう!」と思った回数は数知れない。
そんな状況でふと思った。
「お米と味噌汁があれば、まあまあ生きていけるかも?」
もともと食にこだわりが強くないなら、最低限の食べ物を自分でつくることができたら、人間として最強なのでは?
そう考えたことをきっかけに、農のあるまち・日野市に引っ越したタイミングで、その機会を探すことにした。
こう考える方は昔からいらっしゃって、特に2003年に書かれた『半農半Xという生き方』はとてもおすすめ。わたしは「使命問題(やりたいことをやって生きるにはどうすればいいか)」からたどり着いたけど、「環境問題(地球と持続的にかかわっていくためにはどうすればいいか)」からたどり着く方も多いイメージ。
執筆や対話を続けるために、自分の食べ物をつくれるようになりたい。
調べてみると、日野市には民間でなく市が運営している市民農園があった。
2年間の利用で毎年1月にしか申し込めないが、約10平方メートルで年間3,900円から利用できる。あ、ありがたい・・・!市民が農を通して持続的な暮らしができるように応援してくれるなんて、これぞ公の力だ。
申し込んだところ、抽選で一度は補欠1番に。落選しかけて落ち込んでいたけれど、無事に繰り上げ当選の連絡が!
これで「農ある暮らし」に一歩近づいた。
農業ど素人、図書館に駆け込む
はじめて農地を借りられることになった!
——でも、待てよ。なにからはじめればいいのか、なにもわからない!!「自分で食べ物をつくりたい!」という鼻息の荒さだけはあるものの、農地をどーんと与えられて何から始めればいいかが検討もつかない。
横2.6m×4.1mの土地で何種類の野菜をつくれるのか。
どんな道具を買い揃える必要があるのか。
一番はじめの一歩はいったいなにからすればいいのか。
初心者の疑問だらけの私が向かった先は、図書館だった。
育て方ならYouTubeでも見ることができるが、それ以前にまず図面を引いて計画を立てないといけない。
ヒントを探しに図書館に向かうと、ガーデニングや農業についての本はたくさんある。でも狭い区画を最大限活かす「市民農園」に特化した本はなかなか見当たらない。「市民農園」をキーワードに探し回って、ついに出会った2冊がこちら。
一番見たかった菜園マップの例があって感動した一冊。
著者の斎藤進さんは1996年から埼玉県で市民農園をされていて、まさに大先輩。市民農園に特化した内容で、しかも年間の様子がわたしと同じ3月スタートで書かれているのもありがたい。
こちらは野菜をリレー形式で育てることで、狭い区画を最大限に活かすことを目的とした本。リレー形式も初級・中級・上級に分かれていて、うまくいけば連作障害(同じ場所で同じ作物を育てると起きる生育不良)も防げるかもしれない。
理想がなければ、始まらない。
『もっと上手に市民農園』をベースに、『市民農園1区画で〜』のリレーの考え方も少し取り入れながら、1年間のマイ菜園マップを作ってみた。
これでうまくいくかは、やってみてのお楽しみ!


いざ、農地へ
3月9日。
雪がちらつく前日に、自転車でホームセンターを巡り、道具や肥料をかき集める。びしょ濡れで風邪を引きそうになりながらも、温かいお風呂で復活し、いよいよ市民農園での初作業スタート!
この日は農園の畝作りと、日野市からの無料講習会で教えてもらったじゃがいも植えを完遂することを目指す。

道具を揃えるのは結構難しかった。本当は鍬もシャベルもレーキもあった方がいいのだろうけど、家に農機具を大量に置くスペースはない。短い剣先スコップは持っていたので、土を平らにできそうな角型シャベルだけ買うことにした。
これ以外にハサミとメジャーと割り箸も持っていった。割り箸は数セットしか持っていかなかったので、もっと持っていけばよかったとすぐに後悔。
マルチシート用のUピンも買っていなかったので、こちらも後悔。土と石でがんばって対処する。
肥料もどうしようか迷った。ひとまず講習会で教えてもらった牛ふんは買ってみる。化成肥料を使うか迷った挙句、自分の農園なんだからとにかく試したいように試してみようということで有機配合肥料を買ってみた。慣れてきたら、自分で肥料を配合することにも挑戦したい。

土を掘り起こして、一本目の畝をつくる。
正しいのかはよくわからない。もっと高さがあった方がいい気もするけど、角型シャベルの限界を迎えている。ずぼらな性格なので、この日はメジャーを持っていって真っ直ぐになるように測っているだけでも相当えらい。と思うことにする。

できあがった畝の2/3の範囲に、キタアカリのタネイモを植える。
大きいジャガイモは、講習会で教えてもらったように半分に切って草木灰につける。いざ植えていくと、自分の畝の長さだと、ジグザグになるように植えても30cm幅で9個しか植えられなかった。ここから何個が芽吹いて、何個のジャガイモになるのだろうか。

ヘロヘロになりながら、合計4本の畝が完成した。
途中で夫が合流し、残り2本の畝は夫が力強く掘り起こしてくれた。私と夫の畝で生育差が出るのか、これも面白い実験になりそうだ。
通路幅のことも考えていなかったので、慌てて横を少し削ったりと、やっては修正を繰り返す一日だった。
手探り感満載だった市民農園初日。
でもひとまず自分で計画して、自分で耕して、自分で植えたじゃがいもが、土の中に眠っている。
うまく育つかどうかは、まだわからない。
でも、この畑のはじまりは、きっとわたしの新しい暮らしのはじまりでもある。
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応援ありがとうございます!ライフデザイン研究家としての新たな実験の原動力にさせていただきます。