夏とスイカとばあちゃんと【今日はひと休み】
鹿児島に住む妹から、ツヤッツヤの大きなスイカが届きました。
その大きさはバスケットボールくらい。
叩くとボンッ!と中身が詰まった低くて鈍い音がします。
「よっこらしょ!」
こんな大きなスイカ、こっちで買えばいくらくらいするんだろう。
落とさないように持ち上げながら、私は20年ほど前に亡くなった、母方のばあちゃんを思い出したのです。
女手ひとつで5人の子どもを育てたばあちゃん
私の祖母は戦後の鹿児島で、身体の弱かったじいちゃんを看取り、私の母を含む5人の子どもをたったひとりで育て上げたと聞いています。
その後、孫は私を含めて13人に。
さらに孫から生まれたひ孫たちは、いまや20人を超えているはず。
こんなにもにぎやかに子孫が広がっていくなんて、あのときのばあちゃんに想像できただろうか、と苦笑いしたくなります。
というのも、元気だったころのばあちゃんからは、いつも怒られてばかり。
正直なところ、あまり好きになれず、ゆっくりと話をした記憶もほとんど残っていないのです。
ばあちゃんから怒られていた私
私は子どものころ、ばあちゃんによく怒られていました。
落ち着きがなく、しょっちゅう物を壊したり、出かけた先で迷子になったりする子どもだったからです。
もちろん私自身にそんなつもりはありません。壊そうと思ったわけでも、迷子になりたかったわけでもないのです。
ただ、気がついたら物が壊れていたり、周りに誰もいなかったり。そんなことばかりでした。
そんなことが日常茶飯事だったので、私は怒られることにも、迷子になることにもすっかり慣れっこになっていたのです。
母は半ば諦めていたようですが、ばあちゃんだけは違いました。
「まったく、あんたって子は!」と怒りながらも、必ず探しに来てくれたのは、いつもばあちゃんだったのです。
でも当時の私は怒っているばあちゃんを好きにはなれませんでした。
私の中のばあちゃんの記憶
ばあちゃんの記憶といえば、いつも大きな体でモンペ姿。
農作業に明け暮れていて、それ以外の姿は思い出せません。
夏になると、ダラダラと汗をかきながらスイカを頬張っていました。たまに「ジュルッ」と音を立てて食べる姿がどうにも気持ち悪かったのを思えています。
糖尿病を患っていたせいか甘いものが大好きで、母や叔母たちによく叱られていたのも懐かしい光景です。
ばあちゃんが亡くなった後、母に「なんであんなにスイカを食べてたの?」と聞いたことがあります。
母は笑ながら「昔は甘いものがなかったからじゃない?」と答えていました。
糖尿病が悪化して
そんなばあちゃんですが、糖尿病が悪化し、ついに寝たきりになってしまいました。
ある日「一緒に出かけよう」と叔母に誘われて行ってみると、そこには外出をかたくなに拒むばあちゃんの姿が。
若いころは農作業に明け暮れ、四六時中外で働いていたばあちゃん。
けれど歩けなくなってからは、一歩も外に出ようとしなくなったのです。
「車椅子に乗っている自分の姿を見られたくない」
母や叔母に繰り返し、そう訴えていたそうです。
当時の私は「え、そんなことで?」と正直思っていました。
でも今なら、少しだけその気持ちがわかる気がします。
ばあちゃんのプライド
「衰えた自分」
「普通のことができない自分」
何をするにも手を借りないと動けない。
そして、何かにつけて心配される……。
そんな姿を人前にさらすことを、プライドが許さなかったのかもしれません。
戦後の厳しい時代に、女ひとりで5人の子どもを育て上げたばあちゃん。
強さを支えに生き抜いてきた人だからこそ、弱さを受け入れるのは難しかったのでしょう。
結局、そのまま回復することもなく、ばあちゃんは静かに亡くなりました。
今でもスイカを見ると思い出す
もんぺ姿で汗をかきながら、ジュルッと音を立ててスイカを食べるばあちゃん。
怒ってばかりで正直苦手だったけれど、遊びに行くたびに孫全員にお小遣いをくれるのが嬉しくて、母について行っていました。ばあちゃんの暮らしは女手ひとつで子ども5人を育てる生活で、きっと楽ではなかったはずです。
あれから20年。
Webライターとして仕事をし、元気だけど四六時中、家にいる私。
あのばあちゃんが今の私を見たら、なんて言うだろうと考えると、笑わずにはいられません。
間違いなく
「たまには外に出らんね!」
と怒るに違いないからです。
そうしたら私は、きっとこう答えると思います。
「ばあちゃん、そしたら車椅子押してあげるから、一緒に出かけようよ?」
自己紹介
Webライターのかなさわです。
起業塾で心をつかむ共感ライティング講師として活動した経験を活かし、noteでは「スキと共感で読まれるnote術」を伝えています。
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