看護師×YouTuberの二刀流。栗原学さんの自由を諦めない生き方
「元気があればなんでもできます、体力が一番です! 」
そう笑顔で語るのは、埼玉県の訪問看護ステーショントータルケアで訪問看護師をしている栗原学さんです。
訪問看護ステーションのリーダーを務めながら、YouTubeで「愛犬とスポーツカーで日本中を旅する動画」を世界に向けて配信する活動もしています。
栗原さんが歩んできた人生には、やりたいと思ったことを諦めない。何事にも全力で歩み続けてきた道のりがありました。看護もYouTubeもどちらも本気で向き合う栗原さんに、自分らしく働くことへの想いを取材しました。
「丁寧に向き合う」訪問看護師としての日々
訪問看護師として4年目を迎えた今でこそリーダーとしてチームを率いる栗原さんですが、訪問看護は初めての挑戦でした。
「最初は、特にACP(アドバンスケアプランニング:お看取りについてのお話など)の進め方に難しさを感じていました。それでも、自宅で最期を迎えたいという利用者さんの希望を叶えられたとき、ご家族から深く感謝されたんです」という栗原さん。利用者さんとそのご家族に向き合う日々のなかで、一つひとつ経験を重ねてきました。
一人ひとりの利用者さんとじっくり向き合えること。それこそが訪問看護の醍醐味の一つです。
栗原さんは、利用者さんとの確かな信頼関係を築くために、訪問先での挨拶や靴を揃えるといった基本から、お話の仕方、ケアの丁寧さなどを大切にしているといいます。

一方で、訪問看護には「一人で現場に向かう不安」や「初めてのお宅での難しさ」が伴うのも事実です。
しかし、栗原さんが働く、訪問看護ステーショントータルケアでは、そうした不安を払拭し、誰もがケアを提供できるような仕組みが整えられています。
「初めてのお宅では、情報を確認しながらケアをするので、どうしても時間がかかることもあります。それでも、みんなが利用者さんを把握できるので、看護師一人ひとりの負担軽減にもなっていると感じます」と栗原さんはいいます。
職場の仲間にも、目の前の利用者さんにも、常に全力で向き合う栗原さん。リーダーである栗原さんの姿勢が、トータルケアというチームの信頼を支えています。
スポーツカーと愛犬と、日本の四季を撮る。Youtuberとしての顔

栗原さんには、もう一つの顔があります。YouTuberとしての一面です。
スポーツカー(HONDA / NSX)で、飼い犬のりんちゃんと一緒にキャンプをする様子を、日本の四季折々の風景を自然の音と共に、ASMR動画として配信しています。
現在チャンネルの登録者数は、5万人以上で再生回数が100万回を越える動画もあります。
撮影から編集まで、こだわり抜いて一人で制作しているといいます。1度の撮影で、200~300カット。一人で行ったり来たり、立ったり座ったりを300回以上繰り返して撮影するスタイルです。「体力がないとできませんね」と栗原さんは笑います。
「YouTubeの作業は、飛びぬけて楽しい時もあれば、撮影したくないと思う時もあります。でも現場に行ったら最高で『来てよかった! 』って思うし。編集したくない時も、編集しながらだんだん良くなってくると『あぁ、やっててよかった』って思いながら続けています」
看護師として働きながら、YouTubeも続ける。そんな自分らしい働き方をしている栗原さんですが、叶えるまでには、試行錯誤の日々がありました。
兄に背中を押されて、看護師の道へ。
サッカー選手を夢見ていた高校時代。栗原さんは、その夢に破れます。進学も就職も決めずに卒業し、母親から家を追い出されてしまいました。
「その頃は本当に地獄でした。途方に暮れていたところ、看護師をしている兄がヘルパーの仕事を紹介してくれたんです。『行ってこい』ってスーツを着せられて、面接に行きました。そこの会社に寮があって、そのまま泊まらせてもらったんです」
兄に背中を押されて飛び込んだヘルパーの仕事。もともと「人が好き」だという栗原さんにとって、その日々は思いがけず楽しいものでした。
その後、職業を考え直したとき、兄から看護師を勧められます。19歳で看護学校に入学。栗原さんの看護師としての歩みが、ここから始まりました。
8万円を片手に海外へ。夢を追いかけた20代

フリースタイルフットボールをしている姿
資格取得後、看護師として働きながら、フリースタイルフットボーラーの夢を追いかけていた栗原さん。3年後には、8万円を片手にオーストラリアに渡り、海外での活動に挑戦します。
しかし、海外での挑戦は思わぬ形で終わりを迎えます。
脳の病気である「イップス」を発症し、ボールを蹴ることができなくなってしまったのです。夢を断念する苦渋の決断を下し、栗原さんは帰国しました。
夢が断たれ、落ち込みながらも前向きに歩き続ける栗原さん。また新たな目標を見つけます。これまでの海外経験をもとに、外国人をターゲットにしたYouTubeチャンネルの開設を決めたのです。
新たな夢のスタート。YouTuberとして走り出す。
帰国後、撮影のために愛車に乗って北海道から日本一周の旅へと出発します。
「海外で生活していた時、日本の物って質が高いんだなと感じたんです。特に日本車は海外でもすごく有名で、好きな人が多いんです。自分の車はすごくレアな車で、海外では入りにくい車だと知ったんです」

海外生活の経験から、日本の当たり前は海外の当たり前ではないと栗原さんは言います。日本は平和で、道路は綺麗で。四季折々で気候が安定していて、自然も豊かであること。
日本の普通を、そのまま動画で写したら海外の人に見てもらえるかもしれない。さらに、キャンプ動画にして投稿したら面白いのではないか。栗原さんは、そう考えました。
もともとキャンプをやっていたわけでもなく、乗っているスポーツカーはキャンプ向きの車ではありません。それでも、他の日本人YouTuberがアメリカで同じ車に乗って旅をしている動画を見つけ「日本でできないわけがない」と栗原さんは確信します。
強い決意と確信をもって栗原さんは、動画配信を開始しましたが、すぐには視聴者も増えません。当時、家族からは継続に不安を寄せる声も聞かれたそうです。
それでも、決意して始めたYouTubeを続けたい。栗原さんは、看護師の仕事と両立するため柔軟に働ける環境を探し始めました。
YouTubeを続けるために。だから選んだ働き方
両立を叶えるために選んだのは、フルフレックス制の「自由シフト」で働ける訪問看護ステーショントータルケアでした。

入社時、トータルケア執行役員の方から「YouTubeは続けた方がいい。絶対に人気が出るから」と継続を後押しされたといいます。その声を聞いて栗原さんは、YouTubeを続けることを改めて決意し、看護師とYouTuberの両立が始まります。
こうして自由シフトで働き始めたものの、最初は戸惑いの連続だったといいます。自分のスケジュール管理に試行錯誤しながら、3、4か月ほどで自由シフトに慣れていった栗原さん。
2か月に1回動画を投稿するペースで、撮影から編集までのスケジュールを組み込みながら、仕事の休みは動画制作に費やす日々を過ごします。
そして、動画配信を始めて3年半が経った頃、視聴者数が伸び始め、続けてきたことが少しずつ結果として現れ始めました。
「正解がないから面白い」自分らしく向き合う、看護とYouTube

看護師として、YouTuberとして、それぞれの道で歩み続ける栗原さん。二つの顔に共通する大切なものは、「自分らしさ」だといいます。
自由な発想で動画編集をしてきた栗原さんですが、作業をAIに任せてみたところ、再生回数が大きく低下する経験をしました。
ある日、コメント欄を見てみると「前の動画の方が良かった」という声が多く寄せられていたといいます。
「AIに手を借り始めると自分らしさがなくなるんですよね。結局見ている人は、その人の作っているものを見たいんだと気づきました」と栗原さんは語ります。
自分らしさを大切にする姿勢は、訪問看護の現場でも栗原さんの軸になっています。
「訪問看護には正解がなくて、そこが一番自分に向いている、自分らしく働けていると思っています。薬を飲まない人にどうやって飲んでいただくか、この人はどうしたいのか、利用者さんやステーションのメンバーと相談しながら、試行錯誤で仕事をしています」
自分らしさを大切にしながら、栗原さんは看護師としてもYouTuberとしても歩み続けています。
自由に働くことが、自分を育てる。看護師×YouTuberとしてこれからも

これからの目標を栗原さんは、「まずは、人として成長していきたい」といいます。
「この人と一緒に働きたいと思ってもらえるように。まずは自分自身が楽しく前向きに仕事をして、職場にも楽しさや明るさを循環させていけたらいいなと思っています」と語る栗原さん。職場を盛り上げるリーダーとして、優しくも頼もしい姿が感じられます。
「自由に働くことは、自分を律することに繋がっています。自由に働かせてもらっているからこそ、責任を持って仕事に向き合っていきたいです」と栗原さんはいいます。
これからも、看護師×YouTuberとして歩み続けていきたいという栗原さん。
満面の笑みで「元気があればなんでもできるんですよ。体力さえあれば、なんでもできます! 」という言葉を残してくれました。
自由な働き方は、看護師の自立を育み、自由に働けるからこそ仕事が楽しいと実感できるのかもしれません。栗原さんは、そんな看護師の新しい働き方を体現する一人です。
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