【夏休みの宿題】「勉強しなさい」を減らすには?|自分で学ぶ子を育てる親の3つの関わり
我が家では、夏休みに入って1週間が経ちました。
皆さんのご家庭では、夏休みの宿題にどのように向き合っていますか。
我が子は、毎日宿題に取り組むことを嫌がります。
何度声をかけても、なかなか始めようとしない。
ようやく始めても、嫌々取り組んでいるせいか、字や計算が雑になる。
しばらくすると集中力が途切れ、別のことを始めてしまう。
そんな姿を見ていると、
「もう少し丁寧にやったら?」
「さっき始めたばかりでしょう?」
「毎日少しずつやっておかないと、後で困るよ」
と、つい口を出したくなります。
できることなら、何度も言いたくはありません。
せっかくの夏休みを、宿題をめぐる親子の言い合いで過ごしたくもありません。
それでも、
「学校から出された宿題は、きちんとやらせなければ」
という思いが、どこかにあります。
私は25年間、主に小学校の教諭として、子どもたちの学びに関わってきました。
教師として、夏休みの宿題を出す先生たちの思いもよく分かります。
40日ほどある夏休みの間、まったく学習をしなければ、せっかく身につけた知識や技能を忘れてしまうかもしれない。
学習習慣が途切れ、新学期の学習に入りにくくなる子どももいるかもしれない。
だから、夏休み中も最低限の学習には取り組んでほしい。
その思いから、学習帳などの宿題が出されています。
一方、子どもからすれば、
「せっかくの夏休みなのに、どうして毎日勉強しないといけないの?」
「学校が休みなのだから、好きなことをして過ごしたい」
と思うのも、無理はありません。
親は、宿題をきちんと終わらせたい。
教師は、学びを止めたくない。
子どもは、夏休みを自由に過ごしたい。
誰かが間違っているわけではありません。
では、宿題を「嫌々こなして、すべて終わらせること」が、夏休みの学びとして本当に大切なのでしょうか。
AIが瞬時に答えを出してくれるこれからの時代、決められた問題を言われた通りに解く力だけでは十分ではありません。
自分に何ができ、何が分かっていないのかを知る。
できないことを、どうすればできるようになるか考える。
自分に合った方法を選び、試し、うまくいかなければ修正する。
そして、必要なときには誰かの助けを求める。
こうした「自分で学びを進める力」が、ますます大切になります。
そこでこの記事では、親として宿題に悩み、元教師として学校の事情も知る立場から、夏休みの宿題との向き合い方を考えます。
大切なのは、宿題をすべて終わらせることだけではありません。
宿題をきっかけに、子どもが自分の状態を知り、自分に合った学び方を考えられるようになることです。
「勉強しなさい」と言い続ける夏休みから、子どもが自分で学びを進められるようになる夏休みへ。
「宿題をしない=やる気がない」ではありません
子どもが宿題を始めようとしないと、私たちはつい、
「やる気がない」
「面倒なことから逃げている」
「楽なことばかり選んでいる」
と考えてしまいます。
しかし、宿題に向かわない理由は、子どもによって異なります。
たとえば、
何をすればよいか分からず、始められない
問題が難しく、間違えることが怖い
量が多く感じられ、終わる見通しが持てない
同じような問題の繰り返しに、意味を感じられない
遊びや好きなことから、気持ちを切り替えられない
暑さや疲れで、集中できる状態になっていない
このように、一見すると同じ「宿題をしない」という行動でも、その背景はさまざまです。
教室でも、子どもが問題を解かずに鉛筆を置いていることがありました。
声をかけてみると、怠けているのではなく、最初の一問でつまずいていることがあります。
間違えるのが恥ずかしくて、書き始められない子もいます。
どこから手をつければよいのか分からず、困っていることさえ言葉にできない子もいます。
そんなときに、
「早くやりなさい」
「集中しなさい」
「これくらいできるでしょう」
と伝えても、子どもは動けません。
車のアクセルを踏む前に、どこにブレーキがかかっているのかを確かめる必要があるからです。
これは、子どもの言い分をすべて受け入れ、宿題をしなくてもよいことにする、という意味ではありません。
大切なのは、宿題をさせる方法を考える前に、子どもが宿題に向かえない理由を理解することです。
「どうしてやらないの?」と責めるのではなく、
「どこで困っている?」
「何がいちばん嫌?」
「どうしたら始められそう?」
と、一緒に考えてみる。
子どもの行動を変えようとする前に、その行動の奥にある気持ちや困りごとを見る。
それが、子どもが自分で学びを進める力を育てる第一歩です。
では、宿題をめぐる親子の言い合いを減らしながら、子どもの主体性を育てるために、家庭ではどのように関わればよいのでしょうか。
ここからは、3つの関わりを具体的に考えていきます。
関わり① 「いつやるの?」ではなく「どうしたらできそう?」と聞く
宿題を始めない子どもを見ると、つい、
「宿題はいつするの?」
「何時から始めるの?」
「先に終わらせた方が楽でしょう?」
と声をかけたくなります。
親としては、子どもを困らせたいわけではありません。
後回しにして、夏休みの終わりに慌ててほしくない。
その思いから、見通しを持たせようとしているのだと思います。
しかし、「いつやるの?」と何度も聞かれると、子どもには「早くやりなさい」という催促に聞こえることがあります。
そこで、問いを少し変えてみます。
「今日は、どれくらいならできそう?」
「どこから始めたらやりやすい?」
「一人でやる? 最初だけ一緒に見る?」
「遊ぶ前と後なら、どちらが取り組みやすそう?」
親が答えを決めるのではなく、子どもと一緒に「できそうな方法」を探します。
大きな宿題を、小さな一歩に分ける
子どもにとって「宿題をする」という言葉は、思っている以上に大きな課題です。
学習帳、漢字、計算、読書感想文、自由研究……。
夏休みの宿題全体を思い浮かべただけで、やる気を失ってしまうこともあります。
そんなときは、課題を小さく分けます。
「学習帳を3ページする」ではなく、
「まず1ページ開いてみる」。
「漢字を全部書く」ではなく、
「今日は3文字だけ丁寧に書く」。
「読書感想文を書く」ではなく、
「まず本を選ぶ」。
大切なのは、最初から完璧に進めることではありません。
子どもが「これならできそう」と思える大きさまで、最初の一歩を小さくすることです。
子どもに選んでもらう
方法をいくつか示し、子どもに選んでもらうことも有効です。
たとえば、
10分間取り組む
1ページだけ進める
好きな教科から始める
難しい問題を一緒に考える
午前中は休み、夕方に取り組む
どの方法が正解というわけではありません。
自分で選んだからといって、必ず予定通りできるとも限りません。
途中で気が散ったり、思ったより進まなかったりすることもあるでしょう。
それでも、自分で考えて選んだ経験には意味があります。
「自分には、どの時間帯が合っているのか」
「どれくらいの量なら集中できるのか」
「どんな助けがあれば取り組めるのか」
こうしたことを少しずつ知っていくことが、将来、自分で学びを進める力につながります。
親の役割は、子どもの代わりに計画を決め、予定通りに動かすことではありません。
子どもが自分に合った方法を見つけられるように、選択肢を渡し、一緒に試してみることです。
宿題を終わらせることだけを目的にすると、親は「管理する人」になってしまいます。
宿題を通して学び方を身につけることを目的にすれば、親は「一緒に作戦を考える人」になれます。
そして、子どもが決めた方法で始められたときには、量や出来栄えを評価する前に、
「自分で始める時間を決められたね」
「やりやすい方法を考えられたね」
と、その一歩を言葉にしてみてください。
子どもが自分で選び、自分で始めた経験は、小さく見えても確かな成長です。
関わり② すぐに正さず、子ども自身が気づく時間をつくる
子どもが宿題を始めても、字が雑だったり、同じ計算を何度も間違えたりすると、気になります。
「そこ、間違っているよ」
「もっと丁寧に書きなさい」
「ちゃんと問題を読んだの?」
つい、その場で直したくなるのではないでしょうか。
親が隣で間違いを見つけ、正しい答えを教えれば、宿題は早く終わるかもしれません。
見た目も整い、提出できる状態にもなります。
しかし、親が先回りして間違いを正し続けると、子どもは「自分で確かめる」という大切な経験を失ってしまいます。
親の目的が「間違いのない宿題を提出させること」になってしまうと、いつの間にか、宿題の主体が子どもから親へ移ってしまうのです。
間違いは、学びの現在地を教えてくれる
間違いは、なくすべき失敗ではありません。
「ここまでは分かっている」
「ここからは、まだ分かっていない」
「この方法では、うまくいかなかった」
という、学びの現在地を教えてくれるサインです。
これは、大人も同じです。
初めて挑戦することが、最初からすべてうまくいくことはありません。
試して、うまくいかなかったところを確かめ、方法を変えながら少しずつできるようになります。
だからこそ、子どもが間違えたときには、すぐに正解を教えるのではなく、一度立ち止まって考えられるような声をかけてみます。
「ここまでやってみて、どう?」
「自分で気になるところはある?」
「もう一度確かめるとしたら、どこを見る?」
「答えを見つけるために、何が使えそう?」
答えではなく、考えるための問いを渡すのです。
「どこまで手伝うか」を子どもと決める
もちろん、一人で考え続けても分からないことはあります。
そんなときまで、「自分の宿題なのだから、自分でやりなさい」と突き放す必要はありません。
自分で学ぶことは、すべてを一人で解決することではないからです。
分からないときに助けを求めることも、大切な学ぶ力の一つです。
ただし、親がすべて教えてしまうのではなく、どのような助けが必要かを子どもに尋ねてみます。
「問題の意味を一緒に読もうか?」
「最初の一問だけ一緒に考える?」
「ヒントがほしい? 答えを確かめたい?」
「今日はここに印をつけて、先生に聞くことにする?」
子どもが求めている助けは、いつも同じではありません。
問題が分からないのではなく、ただ隣にいてほしいこともあります。
始め方だけ分かれば、その後は一人で進められることもあります。
今の力では難しく、先生の説明が必要な場合もあります。
親が必要なところだけ支え、できる部分は子どもに任せる。
その加減を一緒に考えることが大切です。
「全部正解」よりも「自分で確かめた」を認める
宿題を見たとき、正解の数や字の丁寧さだけに注目すると、子どもは「間違えないこと」が学習の目的だと考えるようになります。
そこで、結果だけでなく、学び方に目を向けます。
「間違いに自分で気づけたね」
「分からないところに印をつけられたね」
「一人で難しいときに、手伝ってと言えたね」
「さっきと方法を変えて試したんだね」
こうした言葉は、子どもが自分の学び方を振り返るきっかけになります。
間違えない子にすることではなく、間違いから学べる子にする。
分からないことを隠す子にするのではなく、必要なときに助けを求められる子にする。
宿題の丸の数には表れにくいこうした力こそ、これからの時代を生きる子どもたちに必要な「自分で学びを進める力」なのではないでしょうか。
関わり③ できた量ではなく、「自分に合った学び方」を振り返る
宿題が終わると、親はつい、進んだ量や出来栄えを確認したくなります。
「今日は何ページできた?」
「予定していたところまで終わった?」
「ちゃんと丁寧に書けた?」
もちろん、進み具合を確認することも必要です。
しかし、宿題を終わらせることだけが目的になると、子どもは「言われた量をこなせばよい」と考えるようになります。
一方で、取り組んだ後に自分の学び方を振り返ると、その経験を次に生かせるようになります。
反省会ではなく、作戦会議をする
振り返りというと、
「どうしてできなかったの?」
「最初に決めたでしょう?」
「明日はちゃんとできるの?」
と、できなかったことを追及する時間になりがちです。
これでは、子どもにとって振り返りが「怒られる時間」になってしまいます。
大切なのは、反省させることではなく、次の方法を一緒に考えることです。
たとえば、次のように尋ねてみます。
「今日は、何がうまくいった?」
「どこが一番やりにくかった?」
「思っていたより集中できたのは、どんなとき?」
「次は、何を少し変えてみる?」
「明日は、どんな方法ならできそう?」
予定通りにできなかったとしても、それは失敗ではありません。
「午前中より夕方の方が集中できた」
「1ページなら始めやすかった」
「テレビがついていると気が散った」
「最初だけ一緒にやると、その後は一人で進められた」
こうした発見があれば、その日の経験は次の学びにつながります。
計画は、子どもを縛るための約束ではありません。
自分に合った方法を見つけるための仮説です。
試してみて合わなければ、変えてよいのです。
「できなかった日」にも、学びはある
夏休みは、毎日同じように過ごせるわけではありません。
出かけて疲れている日もあれば、友達と遊ぶ日もあります。
体調がすぐれない日や、どうしても気持ちが乗らない日もあるでしょう。
そんな日に予定通り宿題ができなかったからといって、
「一度決めたのだから、やりなさい」
「昨日もできなかったでしょう」
と責めても、学びに向かう気持ちは育ちません。
むしろ、
「今日は、どんな一日だった?」
「疲れているなら、予定をどう変えようか?」
「休む? 少しだけする? 明日に回す?」
と、今の自分の状態を踏まえて選び直す経験をつくります。
自分で学びを進める力とは、決めた計画を何があっても守り続けることではありません。
自分の状態や置かれている状況を捉え、必要に応じて計画を調整する力です。
休むことも、先送りすることも、すべてが悪いわけではありません。
大切なのは、何となく流されるのではなく、自分なりに理由を考えて選ぶことです。
親は、子どもの成長を見つける人になる
子どもの学びは、宿題の進んだページ数だけでは測れません。
昨日は声をかけられるまで動かなかった子が、今日は自分で学習帳を開いた。
分からない問題を飛ばしていた子が、「ここを教えて」と言えた。
集中が途切れた後、自分で戻ってくることができた。
計画通りに進まなかった理由を考え、明日の方法を変えた。
こうした小さな変化の中に、成長があります。
だからこそ、親は結果だけでなく、その過程を言葉にします。
「今日は、自分から始められたね」
「疲れていることに気づいて、量を調整できたね」
「うまくいかなかった方法を変えられたね」
「分からないことを、そのままにせず聞けたね」
親に成長を見つけてもらうことで、子ども自身も、自分の中に育っている力に気づけます。
宿題を全部終わらせたかどうかだけで夏休みの学びを評価するのではなく、
「自分には、どんな学び方が合っているのか」
「困ったとき、どうすれば前に進めるのか」
「次は、どんな方法を試してみたいのか」
を親子で確かめていく。
その積み重ねが、夏休みが終わった後も続く、自分で学びを進める力につながっていきます。
それでも、宿題が終わらなかったら?
ここまで読んで、
「子どもの気持ちを大切にすることは分かるけれど、結局、宿題が終わらなかったらどうするの?」
と思われた方もいるかもしれません。
学校から出された宿題ですから、できるだけ取り組むことは大切です。
提出期限があり、先生との約束でもあります。
しかし、宿題を終わらせるために親子関係が悪くなったり、子どもが学ぶことそのものを嫌いになったりしては、本末転倒です。
すべて終わらなかったときに大切なのは、親が代わりに完成させることでも、子どもを厳しく叱ることでもありません。
まず、なぜ終わらなかったのかを一緒に振り返ります。
「量が多く感じたのかな?」
「難しくて進めなかったところはある?」
「計画の立て方を変えた方がよかったかな?」
「次の長い休みには、どんな方法を試してみたい?」
そして、できなかったことも含めて、子ども自身が先生に伝えられるように支えます。
「ここまでは取り組みました」
「この問題は、一人では分かりませんでした」
「計画通りに進められませんでした」
「次は、もう少し早く始めたいです」
必要であれば、親が状況を補足してもよいでしょう。
ただし、親が言い訳を考えたり、子どもの責任をすべて引き受けたりするのではなく、子どもが自分の学びを説明する機会を大切にします。
「終わらなかった」で終わらせない
宿題がすべて終わらなかったことは、望ましい結果ではないかもしれません。
けれども、そこから何を学ぶかは選べます。
終わらなかった自分を責めるのか。
うまくいかなかった理由を考え、次の方法を見つけるのか。
起こってしまった結果は変えられません。
しかし、その結果を振り返り、次の行動につなげることで、失敗を成長の種に変えることはできます。
宿題を期限までに終わらせる力も大切です。
同時に、できなかったことをごまかさず、自分の言葉で伝える力も大切です。
困ったときに助けを求める力や、失敗から次の方法を考える力も、これからの人生を支えてくれます。
宿題をすべて終えたかどうかだけで、夏休みの学びを判断する必要はありません。
子どもが自分の状態を知り、方法を選び、助けを求め、次の一歩を考えられたなら、そこにも確かな学びがあります。
宿題を終わらせる夏休みから、自分の学び方を見つける夏休みへ
夏休みの宿題は、すべて終わらせることだけが目的ではありません。
自分は、どこで困っているのか。
どれくらいなら取り組めるのか。
どんな方法なら始めやすいのか。
分からないとき、誰にどう助けを求めるのか。
宿題は、子どもが自分に合った学び方を見つける機会にもなります。
そのために親ができるのは、子どもを予定通りに動かすことではありません。
「どうしたらできそう?」と一緒に作戦を考える。
すぐに答えを教えず、自分で気づく時間をつくる。
できた量だけでなく、工夫したことや成長した過程を見つける。
親が「宿題を管理する人」から「学び方を一緒に考える人」になることで、親子の会話も少しずつ変わっていきます。
もちろん、毎日うまくいくとは限りません。
声をかけすぎてしまう日もあれば、子どもがまったくやる気にならない日もあるでしょう。
親も子どもも、試行錯誤の途中です。
予定通りに進まなかったとしても、そこで終わりではありません。
うまくいかなかった理由を考え、方法を変え、また試してみる。
その経験そのものが、自分で学びを進める練習になります。
夏休みが終わったとき、宿題がすべて埋まっていること以上に、
「自分は、こうすれば学びやすい」
「困ったときには、こうすれば前に進める」
と、子どもが少しでも分かっていたら、それは大きな成長です。
「勉強しなさい」と言い続ける夏休みから、親子で学び方を見つける夏休みへ。
宿題を、親子の言い合いの種ではなく、子どもが自分の学び方を知るきっかけに変えていきませんか。
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