【今夜の厨房から】とろとろの海に溺れたい夜。クリームシチュー。
北風が窓を「コンコン」と叩く音が、やけに大きく聞こえる夜。思わず厚手のセーターに腕を通したら、もうダメだ。心も体も、あの「白くて温かいもの」を猛烈に欲しがっている。そう、今夜はクリームシチュー以外、考えられない。
冷蔵庫の野菜室を開けると、待ってましたとばかりに転がり出てきた、まんまるのじゃがいも君と、鮮やかなオレンジ色をまとったにんじん嬢。そして、皮をむけば涙なしでは語れない(物理的に)玉ねぎ先生。主役は、もちろんプリプリの鶏もも肉だ。彼らに「今夜の主役は君たちだ」と心の中で声をかける。
まずは野菜たちを、食べ応え重視でゴロッと大きめにカット。鶏もも肉は一口大に。熱した鍋にバターを落とせば、じゅわ〜っという音と共に、背徳的で甘い香りがキッチンに充満する。ここで玉ねぎ先生が透明になるまで華麗なダンスを披露。鶏肉も加わり、こんがりと美味しそうな焼き色(=旨味の鎧)をまとっていく。
じゃがいも君とにんじん嬢も合流し、しばし水の中でコトコトと語らいの時間。(アクという名の雑念は、そっと取り除こう)。野菜たちが柔らかく、優しくなった頃合いを見計らって、いよいよクライマックスだ。
火を止め、魔法の白いルーを割り入れる。ゆっくりと木べらで混ぜれば、さっきまでの透明なスープが、みるみるうちに濃厚なクリーム色へと変身していく。これぞカタルシス! 最後に牛乳を注ぎ入れ、再び弱火でとろみがつけば、そこはもう「とろとろの海」。仕上げに緑の宝石、ブロッコリーを散らして完成だ。
炊き立てのご飯を深くよそう。この「シチュー・オン・ザ・ライス」こそが、我が家のジャスティス。(パン派の皆さん、ごめんなさい)。熱々の湯気が立ち上るシチューをご飯の丘に決壊させるように、たっぷりとかける。
ふーふー、はふはふ。一口食べれば、鶏肉の旨味と野菜の甘み、そしてクリーミーなルーが口の中で渾然一体となって……あぁ、幸せとは、この温かさのことだ。じゃがいもがホロリと崩れる。冷え切っていた指先まで、じんわりと温もりが染み渡っていく。
お腹の底から満たされると、心までふんわりと丸くなるから不思議だ。さっきまで窓を叩いていた北風の音も、なんだか遠くに聞こえる。よし、この温かさを抱きしめて、明日もきっと、いい日にしよう。
🍚 かんたんレシピ
材料(2〜3人分):
鶏もも肉: 1枚(約250g)
じゃがいも: 2個
にんじん: 1本
玉ねぎ: 1個
ブロッコリー: 1/4株(お好みで)
バター: 大さじ1
水: 400ml(ルーの箱の表示に従ってください)
牛乳: 150ml(ルーの箱の表示に従ってください)
市販のクリームシチューのルー: 適量
塩、こしょう: 少々
作り方:
鶏肉、野菜は一口大に切る。ブロッコリーは小房に分け、固めに下ゆでしておく。
鍋にバターを熱し、鶏肉を炒める。焼き色がついたら玉ねぎを加え、しんなりするまで炒める。
じゃがいも、にんじんを加えてさっと炒め、水を加えて煮込む。
沸騰したらアクを取り、野菜が柔らかくなるまで中火で約15分煮込む。
一度火を止め、ルーを割り入れて溶かす。
再び弱火にかけ、牛乳を加えてとろみがつくまで煮込む。
最後に下ゆでしたブロッコリーを加え、塩こしょうで味を調えたら完成。
