M5Stack社の製品は画期的
はじめに・・・
「組込み系って始めるまでの準備がしんどい」「ネットに情報がたくさんあるけど、初心者がやっても結局途中でうまくいかなくて挫折してしまう」
そんな壁にぶつかって諦めてしまっている人は多いと思います。
ブレッドボードに部品を並べ、配線を引いて、マイコンを書き込んで・・・
見た目を製品っぽくするためには回路と基板を設計し、部品を実装して、ケースも設計して・・・モジュール化された部品をワンタッチで取り付け、動かせたらどれだけ入門の敷居が下がるだろうって、エンジニア時代からよく思ってました。
人材を育てたくて
僕は転職を何度も繰り返していたおかげで、若者が育たない(育てられない)中小企業の現場をたくさん見てきました。僕はエンジニアとしては決して優秀ではなかったけど、モノづくりの工程を全て1人でこなすことが出来たのと、人に教えるのは得意な方だったので、この先、エンジニアでいるよりも、人材を育てた方が世の中に貢献できるかなって思って今の仕事に就きました。
実際に人に教える仕事を始めてから最初に取り掛かったのがマイコンの教材です。参考書はたくさん出版されてましたが、1つの型番のマイコンのみを使った参考書が意外と少なかったんですよね。更に読み進めていくと結局、ハードを準備しないと先に進めなかったりというものが多かった気がしました。そこで学生がコンスタントに学習できるよう、PICマイコンを組込んだオリジナル基板を設計し教材化しました。
教材は3段階構成。
組立編(部品をハンダ付けして基板を完成させる)
基礎編(基板上の部品だけで完結する課題)
応用編(外部モジュールを接続して動作させる)
基板には温度センサ、ディスプレイ、赤外線受信、合成音声IC、WiFiモジュールなどを搭載して、LED点灯から始まり、PWM制御、UART、I2C、SPI、A/D変換、D/A変換まで一通りの通信プロトコルを学べるようにしました。もちろん外部接続端子もあるので外付け部品を接続することも可能です。
PICマイコンを選んだ理由はシンプルで、ネットの情報が豊富で廃版リスクも低いからです。現場では一からツールの設定からプログラムまでを自分で理解しながら作ることが好まれているので、それなりに価値のある教材と思っています。(自画自賛w)
この教材が出来たのは格安で基板が作れるJLCPCBのおかげです。
初学者にはしんどい
僕が教えている方々は「電子回路、マイコンぜひ学びたい!」ではなく、「なんとなくやってみようかと思った」の方が圧倒的に多いです。だからまず楽しいんだよってきっかけを作ってあげることが大切なんですよね。
だからこそ、短期間で知識の浅い学生が作品を作ろうとすると、現場で使われるようなマイコンではやっぱり難しいって思う人も多いんです。
そのため、初学者が取っ付きやすい、Arduinoに頼らざるを得ない場面も多々ありました。
でもラズパイやArduinoって学習しやすいけど、結局、基板むき出しで見た目がよくないんですよね。外付け部品を付けてもケースが必要になる。つまり「動くもの」は出来ても「見せられるもの」にするには、もうひと手間かかってしまいます。まあ、それも含めて製作なんだけど、あまり興味、関心がない人にどう楽しさを伝えるかって観点で考えると基板がむき出しになっているだけで難しいって思わせてしまうんですよね。
M5Stack社との出会い
そんな時に出会ったのが、M5Stack社の製品なんですよね(知るのが遅すぎたけど)。まずマイコンボードはディスプレイ付きのケースでパッケージングされていて、そのままでも十分製品として輝ける状態でした。しかも僕がArduinoの後にたどり着いたESP32のマイコンが使われていたのでArduinoIDEツールをそのまま使うことが出来るという素晴らしさ。これは本当に画期的だなって感動しました。
マイコンボードだけではなく、マイコンボードに接続可能なモジュール化された製品が次々と開発・販売されていくのは正直異常だと思うんですよね。しかも価格が安い!
それを知ってからというもの、学生に作らせる作品の完成度がぐんと上がりました。
音声コマンドモジュール
音声コマンドで動くロボットを作る際、いくつか候補がありましたが、最終的に選んだのはM5Stack社のASR(CI-03T)。
価格:約2,000円で圧倒的に安い
機能:最大20ワード程度をカスタム登録して音声コマンドとして使える。日本語の反応も良好。
QRコードリーダーモジュール
QRコードを使った作品を検討していた際にもM5Stack社のQRコードリーダーモジュール(STM32F030)は圧倒的に安価で性能も十分でした。
以前、展示会で似たような製品を見た時、QRコードを読む製品ばかりで少なくとも数万円はしていたし、単体で購入できるものではなかったイメージだったので、まさにかゆいところに手が届く製品だなって感じました。
Stack-chanという希望
そして最近知ったのが、Stack-chanです。
これは元は日本のししかわさんという方がM5Stackを使って開発したデスクトップ型ロボットです。M5Stack社のマイコンボードにかわいらしい顔を表示させ、ケースと脚を付け、サーボモータで動かせるようにし、AIとの会話まで可能にした画期的なロボットです。
それが最近、M5Stack社から公式に製品化されました。
組込み系にあまり馴染みのない情報系の方や、ハードウェアに触れたことのない方でも、これなら興味を持ってくれるかもしれない。そういう期待感がある製品だと感じました。
だから僕は次の教材として、このStack-chanを使ったものを作ろうと考えています。趣味の時間に少しずつコツコツ作っていこうと思っているので、ちょっと時間がかかりそうですが、なんとか今年度中には作りたいなって思います。
僕が育てたい人材
僕は一流の技術者を育てたいわけではありません。ちょっとカッコつけた言い方をしますと、ものづくりを始めたい人を、「できる人の入口」まで導くっていう感じのことが僕の役割だと思ってます。
今後、AIの発展によって多くの仕事が変わっていきます。個人差はあると思いますが、ソフトウェア領域、特にプログラマの仕事は大きく変化すると思います。一方でハードウェア系は、まだしばらくは安泰かなって思います。アナログ電子回路には曖昧さがあるので、検証してなんぼって部分もありますからね。
だからこそ、ソフトとハードの両側面を知っている人材、AIとハードウェアの架け橋となる人材が必要になると思います。やる気がある人は放っておいてもいいのですが、少子高齢化が進む中、それだけの人材では足りないと思うんですよね。
僕の役目は、僕が学んだことをかみ砕いて、分かりやすく、取っ付きやすく教えて、少しでも若者に興味を持ってもらうことかと思ってます。
そのために、M5Stack社の製品は本当に心強い味方です。
