夢洲残香記 ― ミナミにて名を借りる
万博が終わった夢洲を見に行った。
残り香を楽しむ。——あの喧噪が、嘘みたいに静かだった。
物好きはいるようで、何人かはまだ余韻を愉しんでいた。
本町で降り、実家みたいな豚の角煮定食でご飯をおかわりした。
慣れない食レポとしては、肉は箸を入れたら解けるほど柔らかった。
名脇役の大根と煮卵は、味が染み込んでいた。

心斎橋を抜けて新今宮まで歩く。
最近はどこもかしこもドラッグストアが多い。
通天閣の真下をくぐり、縁日のような新世界を眺めた。
あの街は、今日もちゃんと生きていた。
西成。入門編は日が暮れる前に撤退するのが最適解。

知り合いが心斎橋にいると聞き、ロックバーへ向かった。
1時間ほど語り合い、彼が帰ったあとも店に残った。
店員と他愛のない話をしているうちに、
新しい客に「店員さん?」と勘違いされた。
……どうやら、ミナミが俺を少しだけ受け入れてくれたらしい。
名前を聞かれて、とっさに「十三(じゅうそう)」と名乗った。
その流れで、今度その人と十三で団子を食う約束をした。
続きは、また別の夜にでも。
