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週中のクリスマス・イブ


週中の聖夜

今年のクリスマスは生憎、週の半ばだった。
関係者にとっては、なかなか扱いづらい日取りだっただろう。
繁華街ではもっぱら学生が幅を利かせている。
水曜日、しかも雨。
そんな条件下で、それでも特別なひと時を過ごそうとする人々を観察してみることにした。
今回は梅田周辺にフォーカスする。

梅田ダンジョン、B1にて

堂島の取引先へ年末の挨拶を済ませ、仕事は早めに切り上げた。
時間を持て余し、遅めの昼食をとる。
二つの卵が目玉のように見えるカレー。
腹を満たして、街へ出る。
ドーチカから、すでに梅田ダンジョンは始まっている。

いつものルートで梅田へ向かっていると、道に迷ったマダムに声を掛けられた。
息を切らしながら、「梅田駅の阪急百貨店はどこですか」と。
ここは大阪駅前第一ビルのB1。
位置的には、ほぼ正反対だ。

ここで迷うのも無理はない。
薄暗く、平坦なパネルが続き、位置関係が掴みにくい。
ローポリゴンの世界に放り出されたような気分になる。
それが落ち着くという変態もいるが。

関西に来てまだ一年も経っていないが、地下の動線はある程度体に入ってきた。
「B2に降りて、レンガ調になったら左です」
関西風のざっくりした説明をして、その場を離れた。
もしかしたら、今も迷っているかもしれない。
知らんけど。

地下街の居酒屋は控えめな装いだ。
サンタ帽をかぶった無気力な店員、立ち飲みで酒をやるサンタと思しきおっちゃん。
祝祭は、あくまで添え物らしい。

観覧車の下で待つ人たち

観覧車のあるHEP FIVEの下では、さまざまな人間が行き交っている。
友人同士でつるむ者。
初々しい中高生の男女が、今か今かと待ちわびている。
あるいは、一矢報いようとする若者たち。
スマホを片手に、それぞれの目的を抱えて立っている。

兎我野町という終着地

しばらくして、兎我野町へ向かった。
ここはいわば、デートの終着点のような場所だ。
相変わらず雑然としていて、違和感のある男女が逢引している。
決心を固めた人間。
誘う側の案内人。
今回はそのロールではないので、観客として眺めるに留めた。


雨に濡れた路面がネオンを反射し、 夜の兎我野町は輪郭だけを誇張していた。

万葉集と、独りの夜

寒さと飽きが同時に来た。
行きつけ(と言うにはまだ早い、二回目の)バーへ入る。
レコードと読書を楽しめる、居心地のいい店だ。
マスターと軽く挨拶を交わし、席に着く。
季節感に過剰に寄らないスタンスが、好感度をさらに上げる。


歓楽街のビルは、合わせ鏡のように 人の欲望だけを増幅させていた。

ジョニーウォーカー赤のロックを頼む。
勧められたのは万葉集だった。
高校以来に開く万葉集は、古来の奥ゆかしさや儚さが、妙に沁みた。
クリスマスイブの魔法も、少しはあったのだろう。

独りだったからこそ、
それを見逃さずに済んだ夜だった。


地下を歩いていると、
高層ビルの窓から見下ろす側の視点が気になってくる。

——以前、高い場所から街を観察した話も書いている。


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