交差点の向こうに― 宇都宮再訪

雀宮。
宇都宮駅の一つ手前。
車窓に緩やかな光が射し込む頃、駅のロータリーには、ロードスターが一台。
ハンドルを握る男は、高校時代の同期だった。

彼は、指定した時間ではなく、電車の到着時刻に合わせてそこにいた。
それがこの土地の律儀さであり、彼の人柄でもある。
再会の握手も言葉もなかった。ただ、無言のエンジン音が心地よく響いた。

雀宮駅のスタンプ台


最初に入ったのは、近くのカフェだった。
会話は少なめ。
お互いに、大人になったと口にするでもなく、ただ視線と所作にそれが滲んでいた。
喫煙ブースで火をつけたタバコの先が、互いの沈黙を照らしていた。

その後、LRT沿いにある大型モールに移動した。
彼の地元をゆくこの電車は、まるで宇都宮の血流のようだった。
館内を歩きながら、他愛のない話を交わす。
恋愛でもない、仕事でもない。話題は、抜け落ちていた時間を埋めるための音だった。

ゲーセンにあるドライブゲームで勝負した。
舞台は、いろは坂。
ハンドルさばきは彼の圧勝だった。
「お前、昔はもっと運転うまかったろ」
冗談まじりのその一言に、少しだけ悔しさが滲んだ。

外に出ると、急な夕立。
風が匂いを運んでいた。アスファルトの熱、濡れた街、夏の終わり。
雨粒を避けながら、オリオン通りへ向かった。

アーケードに入ると、照明の粒と濡れた石畳がまるで時代を巻き戻すようだった。
彼が語る“かつてのオリオン通り”は、ずっと賑やかで、どこか危険な匂いがしていたという。
今は、静かだった。店の灯りも、誰かの声も、やや遠くに感じる距離感があった。

そして、勢いでガールズバーへ行くことになった。
人生初のその扉を開けると、場違いな高揚感と好奇心が入り混じった。
木曜の夜。客は少なく、空気は落ち着いていた。

彼女たちは、アニメやコスプレの話を振ってくれた。
どこかで聞いたようなアニメのタイトル、
見覚えのあるキャラクターの話――
気がつけば、何かを語っていたのは自分の方だった。

その後、酔いを引きずったまま、特殊な風呂で汗と記憶を流す。
街の湿度と、心のざらつきがゆっくりと溶けていくのを感じた。

近くのコンビニ前。
再会は静かに幕を閉じた。

「また来いよ」
「…今度は、お前が来い」

言葉はそれだけだった。
だけど、遠ざかるテールライトに映った背中が、
再会という名の再起動スイッチを押した気がした。

何年経っても、心が鈍っていくのは一瞬だ。
だからこそ、錆びないように、
こうして誰かと街を歩く必要があるのかもしれない。

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