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知って欲しい農薬のADIとは

農薬は「健康に悪い」というのは世間一般に広まっているイメージの一つだと思います。
もちろん、農薬への知識がある人の中にはそうとは限らない人もいると思いますが、よく農産物で「無農薬」とか「栽培期間中農薬不使用」という記載を目にするのは、健康を意識した表示である事が多いと感じています。

では、野菜や果物に残留している農薬は実際にどの程度、健康に影響を及ぼすのか。

まず、農薬が農薬として使用を認められるためには色んな検査が必要です。
それらの結果は公開されていて、ネットで調べると出てきます。
例えば、街路樹や公園などでも利用される事が多いと思われるエトフェンプロックス(商品名:トレボン乳剤など)であれば以下のように厚労省から農薬評価書が公開されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000934159.pdf

ここには食品安全委員会での評価が記載されています。

また、環境省からは水産動植物への被害防止に係る設定資料もあります。

https://www.env.go.jp/content/900544372.pdf

このように、農薬が農薬として使用を認められるためには様々な試験を経る必要があるわけですが、この資料の中で出てくるADIという数値、これは一体なんなんでしょう。

このADI、一日摂取許容量の事で「毎日、ここまでの量の摂取なら生涯摂取しても健康に影響がないだろう」という数値なんです。
ちなみに、上記で挙げたエトフェンプロックスの場合だと、
ADIは0.031mg/kg 体重/日 です。
これは、体重1キロあたり0.031mgまでなら毎日摂取しても健康に影響はないですよ、という数値になります。
具体的には、体重50kgの人なら 0.031×50で、1.55mgまでなら毎日摂取しても問題ないことになります。
グラム表示に直すと、0.00155gですね。
家庭では測定不能のような微小な数値ですが、ではどれくらいの量が野菜や農産物に残留しているんでしょうか。

上に挙げた厚労省のPDFを確認すると、58ページにその記載があります。
それによると、残留試験の結果では温州みかんの果皮に15.9mg/kg、
農薬散布3日後に収穫したまくわうりで0.16mg/kgだったと記載があります。

温州みかんの皮だと、1つあたり何グラムくらいあるのかすぐには分かりませんが、仮に100gだったとすると、皮を丸ごと摂取しておよそ1.59mgになります。
とすると、この試験結果の温州みかんだと、体重50kgの人のADIは1.55mgになるので、皮ごと1個を毎日食べると健康に影響が出ることになりますね。

まくわうりの場合、最大の残留値が0.16mg/kgだったとあるので、1つ300gだと仮定するとまくわうり1つでおよそ0.048mgとなります。
1.55を0.048で割ると32.29になるので、毎日皮ごと33個食べると健康に影響が出ることになります。
まくわうりに関しては現実的には超える事はなさそうな数値ですね。

温州みかんの残留値が意外と高くて驚きですが、これはあくまでこの時の試験結果の数値です。この資料を読むと、2018年度の温州みかんの果皮の平均残留値は12.4mg/kgとあります。
みかんの皮100gだとすると1.24mgとなります。
この場合だと、体重50kgの人なら毎日1個、皮ごと食べてもギリ大丈夫、となりますね。果たして普通に流通している温州みかんの残留値は一体どれくらいなんでしょう?
というか、洗わずにみかんを皮ごと食べる人ってどのくらいいるのでしょうか。

いずれにしても野菜や果物は収穫してそのまま食べるのではなく、ちゃんと洗った方がいい、というのは間違いなさそうです。

また、ADIは、「生涯毎日摂取しても大丈夫」という数値ですが、そのほかに急性毒性試験もあり、そちらは1回で摂取出来る許容量を示していて、ARfDという表記で記載されています。
エトフェンプロックスのARfDは1mg/kgという事なので、これも体重50kgの人の場合だと、一度に50mg以上を摂取するのは危険です、ということになります。
温州みかんの場合だと、洗わずに皮だけを一度に4キロ以上食べると危険です、という事になりますね。
ちなみに資料には温州みかんの果肉への残留値も載っていて、そちらは2018年度の温州みかんで、0.03mg/kgとあります。
果肉で計算すると1キロあたり0.03mgの残留量なので、一度に50mg摂取するのは無理そうです。

このADIもARfDも、安全係数という計算式で、安全性を考慮して100で割った数値に設定されています。
つまり、動物実験の結果出た数値から、さらに100分の1になっているわけです。

と、ここまで農作物に残留している農薬の一日摂取許容量ADIについて書きました。

安全性を考えて100分の1に設定してあるとはいえ、場合によっては農作物を洗わずに丸ごと食べるとADIを超える可能性もあるという事です。
また、資料には作物ごとの数値が載っていますが、実際の食事だと色んな食材が使われているわけで、食べるのは食材単体ではないわけです。
まぁそれでも温州みかん(果肉)で1日1,667個を毎日食べないとADIは超えないので、ちゃんと水で洗えば必要以上に恐る事はないと思います。

一方で、あくまでこれは健康に影響があるかどうかという数値であり、また、ヒトに対して直接試験を行ったわけではなく、動物への試験結果から計算した数値になります。
農薬の成分によっては健康(生命)には影響がなくても精神への影響があるかも知れないし、アレルギーやアトピーなどの皮膚疾患へ影響が出る可能性も否定は出来ません。
人によって農薬成分への過敏症という可能性も考えると、本当に人それぞれになってきます。

闇雲に農薬を恐れ批判するのではなく、ただし同時に闇雲に安全を謳うのもどうかと思います。
大切なのは、正しく知ること。
それは食べる人も、作物を育てる人も、両方にとって大切な事だと思います。

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