【エッセイ】母親ゆずり
「えっ、手術? しかも1カ月後なんて」
と、母は驚いた。
いや、一番驚いているのは私の方だ。手術のキャンセルが出たとかで、急に決まった。人工股関節置換術を受ける。
酷暑がやっと終わり、肌寒くなってきた頃、母が言い出した。
「あなたの歩き方、おかしいわね」
そうなのだ。急に歩きにくくなった。股関節から膝にかけて、こわばるような、詰まるような感覚を覚えた。痛みも増した。
数カ月ぶりに、ヨガのポーズをしようとして、驚いた。可動域が極端に狭くなっている。
階段は、手すりを持たないと上がれなくなり、夜中は、寝返りの度に目が覚める始末。
一昨年、右の股関節が変形性関節症だと診断された。そして今、確実に悪化している。
「えっ、左右の股関節を同時に手術するの」
と、再び驚く母。
数年後には左の股関節も手術となるだろう。だったら、左右同時もアリではないか、と医師に尋ねてみた。
「それもアリです。いい選択です」と言われて安心した。
私がそう思ったのは、母を見ていたから。
母は89歳の時に、右の股関節を人工関節にした。翌年は右膝、翌々年は左の股関節。その度に2カ月の入院生活を送った。
だから私は、少しでも若いうちに、少しでも短期間で、ササッと済ませたかった。
「手術の直前まで筋力トレーニングするのよ」
母は痛みに耐えながら、ジムへ通っていた。術後のリハビリが軽くなるようにと。
「あなたは、私からの遺伝で家族性高コレステロール血症だし、今度は股関節。ごめんね」
そっ、そんなことを言うとは思わなかった。
来世があったら、コレステロールの薬を飲み続けることや股関節の手術をすることがわかっていても、やっぱりお母さんから生まれたい、みたいなことを頑張って言っておいた。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました m(__)m
あなたの大切な時間を私の記事を読むために使ってくださったこと、本当に嬉しく有難く思っています。
また読んでいただけるように書き続けたいと思います。
