【高島回顧録】鈎の話・鈎が折れるとき
フナ釣りに始まった釣り道楽は、淡水、海水を問わずルアーやフライ、テンカラを経て高島の磯釣りに至りました。
いずれにせよ、釣果として捕れる魚はせいぜい40cm程度。カレイ、アイナメ、マス類なども含めて、100cm前後の魚で身近な対象といえば、スズキかコブダイか、陸から真鯛を釣るにはコウジを餌にしたぶっこみ仕掛けか。青物の生き餌は経験がありませんでした。
それらに使う鈎は、チヌ鈎なら4号、投げ釣りの仕掛けでも流線鈎で11号程度。大きな鈎は私の守備範囲外で、ましてや磯鈎など手にとって見ることさえありませんでした。
これが遠投カゴ釣りになると、対象魚の真鯛なら1mにも迫る寸法。山陰日本海の高島なら、ヒラマサも1mの可能性が出てきます。常用する鈎も磯鈎11号が基準という、大物向けの太くて大きな鈎を使います。
初めて手に取った感想は『こんな大きな鈎に魚が掛かるのか?』という疑心暗鬼だけ。まさか折れるなど、想像も出来ませんでした。
しかし鈎は折れました。
工業製品としての鈎は、機械で大量に製造され、厳しい検査過程を経て製品となります。バラ鈎にせよ、ハリスが結ばれた仕掛けセットにせよ、何万個に1個というような極めて少ない確率で不良品が生じるもの。不良品率が低いほど、優秀なメイカーとして認識されます。
市販されている各社が、つまり鈎製造の工業製品企業として人気を博しているものと思われます。家室鈎のような、職人による手作り製品は、ほとんど流通しなくなりました。
高い完成度を誇る「がまかつ」の磯鈎も、時として運悪く折れることがあります。
一つめは「極太アジ」でした。海の中で魚は逃げていったので、それが何だったか検証は出来ませんでしたが、穂先を叩く仕草からみて、おろらくは真鯛だったと今も思っています。

強い筈の針先がポッキリ。
原因は分かりませんが、「先打ち」と呼ぶ加工の工程では鈎先に巧妙な焼き入れを施し、折れにくく強靱な設計になっているそうです。焼き入れ、焼き鈍しは金属を鍛える上で重要な技術。しかし、僅かでも焼き入れが過ぎると、金属は破断を起こすもの。鋼の庖丁がそれであり、鈎もまた鋼です。
真鯛の口周りはとても硬く、骨を貫通するかどうかの攻防に、何万個に1個の焼き入れ過ぎ鈎が負けたのではないかと思うのでした。
もう一つ、大きな原因は、ハリスの結びが甘かった可能性。
写真を見ると分かるのですが、チモトへ結んだ内掛け本結びが、軸の周りを180度回って、ハリスがタタキの裏側から伸びています。結ぶときには必ず軸の懐側へ固定しますので、掛かった魚が暴れているうちに軸が回り、物理的に脆弱な方向へ応力がかかって、結果的に金属が破断したと考えられます。
かなり飛躍した空想ですが、鈎が折れる事など滅多に無いので、このくらい想像が膨らみます。(笑)
もう一回だけ、滅多に折れない鈎が折れました。
こちらは単価が安いプロイサキ鈎。
こちらはイサキかマメヒラ(ヒラマサの小さめ2歳魚)が掛かったときの事でした。調子よくリールを巻いて寄せているとき、乱暴に捌いたワケでもないのに、前触れもなく魚が居なくなりました。
鈎が外れたか、ハリスが切れたか、と残念に思いながら仕掛けを回収してみると、この写真の有様。呆気なくアゴから先が無くなってました。折れた原因は分かりませんが、いつもの使用感から思うに、はやり製品ムラだったと納得するしかありませんでした。
鈎は魚と繋がる唯一無二のパーツ。
竿やリール、道糸、天秤、仕掛け、ハリスを通して、釣り人と魚が繋がっているのは「鈎」だけです。『高性能なスポーツカーが道路と接しているのはハガキ1枚程度のタイヤだけ』と云われるように。
よって釣りにおける鈎の重要度は非常に高く、それに寄せる信頼や、釣り方に適した鈎の選定。また使用中の劣化に対して、もっとシビアになっても良い筈です。
そんな事を考えながら、折れた鈎を見ては呪うばかり。『これが折れていなかったら捕れとったのに!』(笑)

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山口県岩国市の洋服屋フジタです。メンズファッションの創生期にVANショップとして、アイビーファッションの真ん中を歩んできました。デフレファッション、ファストファッションが主流になって久しいこの業界で生き残る本物の男ファッションとは何だろうか。たんなる昔話ではなく、温故知新の傍らでnoteを綴ってみます。高島のヒラマサカゴ釣り、ヒストリックカー道楽も。
