【高島回顧録】鈎の話・ハリスが切れるとき
掛けた魚を釣り損なったとき「バレる」「バラす」などと云います。
鈎が刺さった場所が悪く、口切れで鈎が外れる場合のほか、鈎先の具合が良くなくて上顎や閂を貫通しなかったときも鈎が外れます。また、イサキやアジ類のように口が柔らかい魚は、竿で引っ張り回した挙げ句の果てに、鈎が刺さった穴が広がってしまい、鈎が抜けてしまうとき。
いずれも竿を曲げたまま負荷をかけ続けていれば、鈎の返しが働いて鈎外れは起こりにくいのですが、竿のテンションを緩めてしまうと、魚は反射的に身を翻し、そのとき鈎が外れます。
これを防ぐためにも、魚がタモ網に収まるまで、竿には適切なテンションを保って魚を捌き、寄せることが肝要。魚が根に入ったとき道糸を緩め、魚を出すことがありますが、このとき鈎が抜けることもしばしば。
そして本題、バレるときの大半はハリス切れによって起こる災い。せっかく掛けたのに、糸が切れて獲物を逃がすのは実に刹那いもの。

ハリス切れのメカニズムを繙くと、その対策も見えてきます。
まず、避けようが無いのは、磯擦れや瀬擦れによるハリスの傷。傷ついたハリスは、引っ張ったとき、最大強力が小さくなっている傷の部分へ掛かる応力によって、ハリスは切れます。
仕掛けを打ち返す度にハリスを指の上で滑らせることで、ハリスの小さな傷、折れて捻れ曲がったキンクは感知できますから、発見したらすぐにハリスを交換する事は大切。『まだイケるじゃろ』と変な勿体ない根性は、多くの場合、泣きを見ます。
そのほかでは、口や歯が鋭いマグロ、カツオ、鬼カマスなど、またサメのような歯を保つ魚が掛かると、まるでカッターナイフで切ったような切断面を確認できます。マグロ専科では、ケブラー繊維の薄くて細い筒状カバーをチモト上5センチへ着ける場合も。
そして、最も多いハリス切れは、チモトでのハリス切れ。時には豚の尾のように巻き髪パーマネント状態も見られます。
鈎のタタキが糸を切ったのか、魚の鋭い口がチモトの糸に触れたのか、いろいろ考えてみましたが、どうやら原因はハリスの締め込み不足。
とりわけ5号以上の太いハリスを鈎へ結ぶとき、鈎の軸へ糸を巻きつけ、最後に留め結びを入れて完成するのですが、このフィニッシュが弱かったり曖昧にしたとき、結び自体が僅かに弛んだままになっています。
たとえば70センチ、3kgクラスのヒラマサが鈎に掛かったとき、獲物は物凄い力でサシ餌を持って走ります。
水の抵抗と長い道糸の伸張がるのに、なお手に持っている竿を引ったくられる衝撃。このときハリスの結び目には、瞬間的な引っ張り負荷が掛かります。その負荷が締め込み不足のフロロカーボン糸を一瞬にして締め込む──その摩擦が起こした発熱で、フロロカーボンとはいえ樹脂繊維である糸はあっさり焼き切れるもの。
ときに切断面が丸まって、溶解切断したような切り口も見られます。
つまり鈎結びのポイントは、もちろん引っ張る力で解けない、切れない結び方が求められると同時に、締め込み不足が起こらない簡素で堅牢な結び方が求められる。そこで私は、内掛け本結びで、軸巻き4回を採用しています。
ときに漁師結び(完全結び、最強結び)も使いますが、どうも簡素に過ぎて弛んで抜けるような気がして。(笑)
釣り具、釣り技術に対する信頼は何よりの強味。最も効率が良いと思われる技法を自分なりに考え、鍛錬して完成度を上げていくのも釣りの醍醐味。その中にある新たな発見や工夫も、また楽し。

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山口県岩国市の洋服屋フジタです。メンズファッションの創生期にVANショップとして、アイビーファッションの真ん中を歩んできました。デフレファッション、ファストファッションが主流になって久しいこの業界で生き残る本物の男ファッションとは何だろうか。たんなる昔話ではなく、温故知新の傍らでnoteを綴ってみます。高島のヒラマサカゴ釣り、ヒストリックカー道楽も。
