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【高島回顧録】鈎の話・鈎が曲がるとき2

『がまかつの釣り鈎は信頼性が高い。』

高島の釣り仲間や先輩たちが口を揃えて云うには、やはり相当の裏付けや経験があるのでしょう。私自身も、いくつかの鈎を使ってみたところ、同じような感想を持っています。

たしかに製品である以上、いくつかの不良品に当たることはあります。尤も、それが生涯最大の一尾だったら我慢なりませんが──。

その2回め。

高島は地ゴウトウという磯での事。

岩海苔が残る舟着きから慎重に磯上がり。まず釣り座へ無事に移動するだけでも体力消耗が激しく、滑りまくる磯を這うようにしてセットアップ。後になって大船長(故人)から「慣れとるアンタじゃけえ磯に着けたんよ」と頼もしい言葉を戴いて嬉しくなった記憶も鮮明に残っています。

急傾斜が海面まで続く地ゴウトウの磯

その日の地ゴウトウは、平らで立てる座が一箇所だけ。その場所以外は高手の斜面だったり、波に洗われていたりで、立ち歩くことさえ恐怖を伴うもの。唯一の座へドンゴロスを敷いて、その上へ足を揃えて立つような有様でした。

しかし潮の按配は良く、早い時間帯に大きめのヒラマサを釣り上げ、順調に過ごしていました。当たりは多くないのですが、潮と対話しながら磯で過ごす至福の時間。

沖へ放り込んだ仕掛けが、理想的な子どもが歩く程度の速さで角磯を廻ってワンドへ入り始めたときでした。仕掛けを回収しようかと思ったとき、ヌルリとウキが入る、ヒラマサ特有の当たりをキャッチ。

「きた、ヒラじゃ」遠慮のない独り言で竿を起こしたまでは良いのですが、当たった場所は、いかんせん磯際から近すぎます。しかも手応えからして、70オーバーの良型。産卵を控えたヒラマサはよく肥っていて、そのパワーは魚と思えない暴力的なもの。

しかもこちらの足場は最悪で、ドンゴロス上から移動も困難な足枷状態。案の定ヒラマサは、海面を見ては物凄い力で底の瀬へ向かって、何度も突っ込みを繰り返します。そのたびに竿は満月のように弧を描きく。ドラグを弛めたら負け。明らかにハリスは磯に当たっていて、「ハリスよ切れるな」と祈るか呪うか。

しかし天使は微笑まず。取り込み座とした下方の磯際まで獲物を捕り回すまでもなく、その手前の足下でハリスが切れ、穂先が跳ね上がりました。ハリスはチモト上の数十センチのところでボロボロに擦れて切断。仕方在りません、独り釣りには付き物の捕り損ないでした。

痛恨のバラし。

しかし続く中盤戦も、この日は上々の気配でした。先の当たりに魚影の濃さを感じて、同じポイントへ餌を入れ続ける。待ってましたとばかりにウキが消し込み、心の中は『もしかして、さっきのヒラか?!』などと余裕をかましていたところ、さにあらず。

寄せた先の海面で身を翻したのは、紛れもない大鯛。すわ一大事。ヒラマサならまたチャンスはあるが、この真鯛だけは何としても捕りたい。

ハリスの先の獲物を竿で捌いて角磯を迂回させ、なんとか磯際まで引っ張ってきました。その間にもハリスは磯の貝にゴリゴリと当たり、魚もまた、引きずり回されてグロッキー気味。

タモを伸ばして掬いたいのですが、傾斜した磯際で魚は波頭に揺られて思うように運びません。それでも糸が緩んだら、即座に魚は反転して鈎を外していくでしょう。

何度かのチャレンジで、漸く確捕。

もう精も根も使い果たした独り磯でした。タモ網の真鯛は4キロ超えか、片手で持って磯を登るのも困難。四つん這いでクーラーの座まで移動。魚を絞めようにも、もはや手に力は入らず、骨が硬すぎて小出刃の歯が立ちません。仕方なくピトン用のハンマーでノミを打つようにして野絞め完了。私の残存HPはゼロ。

震える手で仕掛けを作り直してみると、魚を引きずり廻したせいで、鈎が伸っています。『あぶなかった』あと少しで鈎が抜けてバラすところでした。

頑張ってくれたカゴスペシャル

幸運に感謝しながら、磯際で波に漂う血抜き網の大鯛を見遣ると、またぞろカメの手に引っ掛かっています。またぞろ一悶着。

もう磯際まで降りる体力も無いので、ピトンのロープを引っ張って血抜き網を引き揚げたところ、なんとロープが「ぶちっ!」って「おいっ!!」、もうマッハの速度で磯を滑り降り、立てかけてあったタモを持って離岸する血抜き網入り大鯛をキャッチ。もう体力はマイナスの領域で、きょうの釣りはここまで。

備えあれば憂いなし。独り磯では、釣り座、取り込み座、釣っているときから、釣った後までのシミュレーションをしっかり行い、一か八かの行動は避けなければなりません。魚を釣って怪我を負ったのでは元も子もない。激しく自戒した地ゴウトウの釣りでした。

地ゴウトウの釣果

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山口県岩国市の洋服屋フジタです。メンズファッションの創生期にVANショップとして、アイビーファッションの真ん中を歩んできました。デフレファッション、ファストファッションが主流になって久しいこの業界で生き残る本物の男ファッションとは何だろうか。たんなる昔話ではなく、温故知新の傍らでnoteを綴ってみます。高島のヒラマサカゴ釣り、ヒストリックカー道楽も。

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