ヤンニョムチキンの夜
note初投稿のお祝いに、親孝行も兼ねてヤンニョムチキンを作っていた。
ゴミ屋敷だった私が、だ。
今日は火を使う。
働きの悪い私は高価なプレゼントも出来ないので、せめてもと思い晩ごはんを担当することにした。
ヤンニョムチキンなんて、普段の私の食卓にはあまり登場しない料理だ。
でも今日は、なんとなくこの料理を作りたくなった。
久々の自炊は思いのほかすいすいできた。
レシピを頭に思い浮かべながら、自然に手が動いていたことに自分でも驚いた。
何年もブランクがあるのに体は覚えていた。
積み重ねてきたものは、簡単には埋もれないものなのかもしれない。
少し心が温かくなった。
ゴミ屋敷時代の私に見せたい。
今、私は
キッチンに立っているぞ。
肉を切っているぞ。
ちゃんと包丁を洗っているぞ。
フライパンを煽っているぞ。
油が跳ねても逃げていないぞ。
あの頃の私は、キッチンと共存していた。
というより、ゴミと共生していた。
コンロの上には物が積まれ、火をつける場所すらなかった。
今はちゃんと油の匂いがする。
辛いタレがぐつぐつしている。
人間、やればここまで回復できるもんだ。
もちろん、完璧ではない。
まだ就職もしていないし。
でも今日は、火を使っている。
魔法使いならぬ火使いだ。
ハリーポッターよりすごいぞ、多分。
それだけで上出来だ。
初めてのnote投稿の日。
初めてヤンニョムチキンを作った日。
どちらも良好でした。
母にnoteというものを始めたことを話した。
ちょっとした覚悟も含めて。
「note?ブログみたいなもの?」
母は首をかしげながらも、「まあ続けばいいね」と笑った。
その後は、いつも見ている料理番組を観ながら、あーだ、こーだ、といつものくだらない話をした。
この「くだらない」が、たまらなく良い。
私の書いた記事なんて誰の目にも止まらない、とは思いながらも少しドキドキする。
変なことを書いて、ヤンニョムチキンの辛味のように記事が燃えていないだろうか、なんて。
母とヒーヒー言いながら食べた、この夜を忘れない。
出来上がったヤンニョムチキンは、思ったより赤かった。
辛そうだね、と言いながら一口食べる。
「辛い!」
母と同時に声が出て、二人で笑ってしまった。
でも甘い。
辛いのに甘い。
口の中でタレが暴れている。
辛いと言いながらも母が
「何かまた食べたくなっちゃうのよね」
と箸を止めない。
気づけば皿は空っぽだった。
火を使った夜。
noteを書き始めた夜。
ヤンニョムチキンを作った夜。
どれも小さなことだけど、
私にとっては大きな一歩だ。
そして私は今日、
ちゃんと晩ごはんを作った。
それだけで、
今日は十分いい日だった。
