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AI時代に再評価されるブルーカラー、船員は穴場職なのか

「今の仕事をこのまま続けていて大丈夫だろうか」
「AIが進化していく中で、自分の仕事は将来どうなるんだろう」
そんなふうに考えたことがある人は、少なくないと思います。

就活中でも、社会人になってからでも、仕事選びの不安は意外と消えません。
やりたい仕事がまだ見つかっていない人もいれば、今の仕事に大きな不満はなくても、
もっと自分に合う仕事があるのでは
この先も食べていける仕事を選べているのか
と感じる人もいるはずです。

親の立場でも同じです。
高校生くらいの子どもがいると、どんな仕事が向いているのか、将来なくなりにくい仕事は何か、自然と考えるようになります。

そんな中で最近よく見かけるのが、
AI時代にはブルーカラーが再評価される
という話です。

実際、定型的な事務作業や情報整理がAIに置き換わっていく一方で、現場で身体を使い、状況を見て判断し、責任を持って動く仕事は簡単にはなくならないと言われることが増えました。

その流れの中で、あまり一般には知られていないけれど、もっと選択肢として知られてもいい仕事のひとつが船員だと私は思っています。

私は現役の船員です。
今回は
「AI時代に再評価されるブルーカラー、船員は穴場職なのか」
というテーマで、船員という仕事のリアルをできるだけわかりやすく書いてみます。

船乗りという仕事が少し気になっている社会人、
AIに仕事を奪われないか不安な人、
就活中だけどまだやりたい仕事が見つかっていない人、
そして子どもの将来の仕事の選択肢を探している親御さんにとって、判断材料のひとつになればうれしいです。

最初に正直に言うと、船員は誰にでも向く仕事ではありません。
楽な仕事でもないですし、働き方もかなり特殊です。

でもその一方で、社会に必要とされ、人手不足で、未経験から入れる余地もあり、AI時代でもすぐには消えにくい要素を持った仕事でもあります。
外から見ると「とにかくきつい現場仕事」に見えやすいですが、実際には頭を使うことも多く、給料、働き方、将来性まで含めて見ると、人によってはかなり有力な選択肢になります。



そもそも船員とは、どんな仕事なのか

「船員」と聞いても、普段の生活ではあまり身近ではないので、具体的なイメージが湧きにくい人も多いと思います。

船員はざっくり言うと、航海士機関士に分けられます。

航海士は、船の操縦や航海当直、見張り、荷役、安全運航の管理などを担当する仕事です。
一方で機関士は、船を動かすエンジンや発電機、ポンプ、配管、補機類など、船の機械設備の運転、点検、整備を担当します。

かなりざっくり言えば、
航海士は船の操縦担当
機関士は船の整備担当
という理解で大きくは外れません。

そして船には、それぞれ目的があります。

たとえばフェリーやクルーズ船なら、旅行客を目的地まで安全に届けたり、船旅そのものを提供したりする役割があります。
コンテナ船なら、私たちの生活に必要な物を海上輸送する役割があります。言ってみれば、長距離トラックドライバーの海版のようなものです。
オイルタンカーなら、原油や石油製品を必要な場所まで運ぶ役割があります。

こうした船が出発から到着まで、安全に、そして時間通りに役目を果たせるよう、航海士と機関士が力を合わせて支える
それが船員という仕事です。

船の上では、どちらか片方だけでは成り立ちません。
航海の管理がしっかりしていても、エンジンが止まれば船は動けません。
逆にエンジン側が万全でも、航海や荷役、安全管理がうまくいかなければ、その船の目的は果たせません。

そういう意味で船員は、ひとつの船の役割を達成するために、役割を分けながら協力して動く仕事です。


なぜ今、船員という仕事を考える価値があるのか

船員という仕事は普段あまり目立ちません。
でも実際には、人や物、エネルギーを運ぶという意味で、かなり本質的に社会を支えている仕事です。

生活に必要な物資、工場に必要な資源、日常を動かすエネルギー。
そうしたものの多くが海上輸送と無関係ではありません。

その意味で船員は、目立ちはしないけれど、かなり重要なエッセンシャルワーカーの一員です。

しかも船員業界は、かなりの人手不足です。
国土交通省の最新公表ベースでは、船員全体の年間有効求人倍率は 4.78倍、直近月である 2024年12月は5.65倍 でした。かなり高い水準が続いています。

世間ではあまり話題になりませんが、業界の中では人材確保が大きな課題になっています。
会社によっては、40代、50代でも若い方として見られることがあります。

つまり船員は、
「若い人しか入れない特殊な世界」
というより、
人手不足の中で、知っている人には現実的な選択肢になり得る仕事
として見ることもできます。

未経験でも人を欲しがっている会社はありますし、海技士の国家資格に合格していけば昇進の道もあります。
もちろん、中年以上での未経験転職は体力面や生活リズム、覚えることの多さを考えると相当な根性が必要です。
それでも、年齢だけで最初から候補から外すにはもったいない業界だと思います。


AI時代でも、船員はすぐには置き換わらないと思う理由

私は、船員という仕事は少なくとも近い将来、AIに簡単に置き換わる仕事ではないと思っています。

もちろん、これから先さらに自動化は進みます。
監視、記録、異常検知、分析、判断支援。
そういう部分でAIやシステムが役立つ場面は増えていくはずです。

ただ、それでも船員という仕事の中心には、まだ人でなければ難しい部分が多く残っています。

現場は想定外の連続だから

船の仕事は、いつもマニュアル通りに進むわけではありません。

機器の異常、天候、港の事情、作業順の変更、部品や人員の制約。
現場ではいろいろな条件が重なります。

そんな時に必要なのは、
「今この状況で何を優先するか」
「どこまで応急対応でいけるか」
「安全面は大丈夫か」
「誰と連携するべきか」
といった判断です。

しかも現場の判断には、正解がひとつではないことも多いです。
このあたりは、単純なデータ処理だけでは片付けにくい部分です。

海上という特殊な現場だから

船は工場でもオフィスでもなく、海の上で動く特殊な現場です。

陸上なら異常が起きた時に、すぐに業者を呼んだり別の部署に頼ったりできる場面もあります。
でも船では、そう簡単にはいきません

だからこそ、船内で判断し、確認し、手を動かして対応する力が必要になります。
結局、最後は現場で触って、見て、確かめて、動ける人が必要です。

最終的な責任を人が持つ必要があるから

船は人命、貨物、安全運航に関わる仕事です。
何かあった時に、
「AIがそう判断したのでそうしました」
だけでは済まない世界です。

AIはあくまで助けにはなっても、最終確認や最終判断の責任まで簡単に置き換えることは難しいです。

だから私は、
船員が不要になるというより、船員がAIを使いこなしながら働く方向に進む
可能性の方が高いと感じています。


ブルーカラーだけれど、一日中力仕事をしているわけではない

船員という仕事に対して、
ブルーカラーだから、ずっと力仕事をしているんでしょ
というイメージを持つ人は多いかもしれません。

たしかに現場仕事ではあります。
汚れる、暑い、狭い、重い物を扱う、整備する、点検する。
そういう場面は普通にあります。

ただ、実際には
一日中ずっと体力仕事だけをしているわけではありません。

むしろ、思っている以上に頭を使う仕事でもあります。

機関士であれば、整備のために図面を読んだり、機器の構造を理解したり、異常が出た時に原因を切り分けたりします。
想定外のトラブルが起きた時には、何を優先するか、どこまで触ってよいか、何を止めてはいけないかを考える必要があります。

また、現場仕事でありながら、書類仕事も意外と多いです。
点検記録、整備記録、報告書、チェックリスト、引継ぎ、本社や陸上とのメール対応など、事務的な作業もあります。

つまり船員は、
身体を使う仕事であると同時に、頭も使う仕事
です。

そういう意味では、船員はただのブルーカラーではなく、海の上で生活しながら現場を支える、ある意味究極のブルーワーカーに近い仕事です。

ここは、外から見た印象と実際のギャップがかなり大きい部分だと思います。


船員という仕事のメリット

ここからは、現役の立場で感じるメリットを書きます。

社会に必要な仕事であることがわかりやすい

船員は、華やかな仕事ではないかもしれません。
でも、人や物、エネルギーを運ぶという意味で、社会に必要な仕事であることはかなりはっきりしています。

自分の仕事が、誰かの生活や社会の仕組みの一部につながっている。
そういう実感を持ちやすいのは、この仕事の良さです。

専門性が積み上がる

船員の仕事は、現場経験がそのまま価値になりやすいです。

トラブル対応、整備の勘所、段取り、安全意識、異常の見つけ方。
そういったものは、簡単にはコピーできません。

海技士の国家資格に合格していけば、昇進の道もあります。
未経験から入っても、経験と資格を積み重ねながらキャリアを作っていける余地があるのは、この仕事の強みです。

給料面で魅力を感じる人もいる

給料については、船種、会社、職位、乗船形態でかなり差があります。
なので一括りにはできません。

ただ、一般的な陸上職と比べて、比較的高めに感じるケースはあります。
もちろん、楽して高収入という話ではありません。
特殊な勤務形態、責任、生活環境の対価としての面があります。

それでも、進路や転職を考える上で現実的な魅力として感じる人はいます。

資産形成と相性がいい人もいる

これは意外と大きいポイントです。

乗船中は生活の仕方によって支出を抑えやすいですし、まとまった休暇がある働き方だと、お金や時間の使い方で差がつきやすいです。

つまり、単に「年収が高いか」だけでなく、
「お金が残りやすいか」
という視点で見ると、船員は相性の良い働き方だと感じる人もいます。


逆に、誰にでも向く仕事ではない

ここは良い面だけでなく、正直に書いておきたいところです。

働き方がかなり特殊

船員は、毎日家に帰る働き方ではありません。
乗船中は陸を離れ、生活と仕事の距離がかなり近くなります。

この時点で、合う人と合わない人がかなり分かれます。
給料や将来性だけで入ると、想像以上にきつく感じる人もいます。

人間関係の当たり外れはある

船内では、同じ船の仲間として協力する意識が必要です。
ひとつの船を動かす以上、ある程度の一体感はどうしても必要になります。

ただ、その一方で、
「四六時中ずっと密着して、窮屈な距離感で生活する」
とまでは限りません。

船や職場、上司、職位によるところはかなり大きいですが、個室で一人の時間を確保できる場面もあります。
実際、ずっと誰かと一緒にいなければならないわけではありません。

また、人間関係に当たり外れがあるのは事実ですが、陸上勤務とは少し違う面もあります。
たとえば陸上だと、嫌いな上司が何年も向かいの席にいることもあります。
でも船員は、休暇中の予備員と数週間から数か月ごとの交代引継ぎで回していく働き方です。
そのため、嫌いな上司に当たったとしても、ずっと固定で同じ船に乗り続けるとは限りません。
数週間から数か月すれば、自分の乗っている船からいなくなることがあります。

もちろん会社や配乗のされ方によります。
それでも、陸上の職場とは違って
人間関係のしんどさが永遠に固定されるとは限らない
というのは、船員という働き方の特徴です。

パワハラの問題はゼロではない

これも正直に書くなら、ゼロではありません。

ただ、これは船員という仕事だけの問題というより、現場職や閉じた組織一般に共通する面もあります。
船という環境では物理的な距離を取りにくいぶん、合わない上司や職場に当たるとしんどさが増しやすい、というのはあります。

逆に言えば、船員という仕事そのものが悪いというより、
どの会社、どの船、どの上司に当たるか
の影響がかなり大きいです。

中年以上の未経験転職は、間口があることと楽にできることは別

ここは誤解のないように書いておきたいです。

船員業界は人手不足なので、未経験者を欲しがっている会社はあります。
年齢だけで最初から諦めるには早い業界です。

ただし、中年以上での未経験転職は楽な道ではありません。
体力面、生活リズム、専門知識の習得、集団生活への適応。
若い人よりも、環境変化のしんどさや覚える負荷を強く感じる可能性はあります。

なので、
「もう遅い」と決めつける必要はないけれど、
「人手不足らしいから簡単にいける」と考えるのも違う

というのが、現実に近い見方です。

体力面・生活面の負担はある

当直、騒音、暑さ、揺れ、生活リズムの変化。
こういった部分は、やはり陸上勤務とは違います。

AIに代替されにくい仕事というのは、裏を返せば
人が現場で負担を引き受けている仕事
でもあります。

ここを甘く見ると、入ってからギャップを感じやすいです。


女性船員という選択肢にも少し触れておきたい

近年は、女性船員という選択肢も少しずつ広がっていると思います。

実際、私自身も新卒の女性船員(機関士)と一緒に働いたことがあります。
なので、少なくとも「女性には無理な世界」と一括りにするのは違うと感じています。

ただ一方で、現場設備や職場環境、周囲の理解など、まだまだ職場ごとの差が大きい部分もあります。
そのため、興味がある場合は
「女性でも働けるらしい」
で終わらせず、実際の会社や船種ごとの環境をしっかり確認することが大切だと思います。

このテーマは単独でも掘れる内容なので、反応や要望があれば、今後あらためて記事にしたいと思っています。


どんな人に向いているのか

個人的には、船員という仕事はこんな人に向いていると思います。

デスクワークだけより、現場で動く仕事の方が合っている人。
手を動かしながら覚えることが苦ではない人。
ものの仕組みや機械に興味がある人。
ある程度特殊な環境でも働ける人。
一般的な知名度より、働き方や実利との相性を重視できる人。
そして、AI時代でも長く価値を出せる仕事を探している人です。

逆に、毎日家に帰りたい人、生活リズムの変化にかなり弱い人、人間関係の距離が近い環境がどうしても苦手な人には、かなりきついかもしれません。

また、親の立場で考えるなら、勉強だけが得意な子というより、現場で考えながら動くことが苦ではない子、ものの仕組みに興味がある子、人と協力して役割を果たすことが苦ではない子には、進路の選択肢として検討する価値があります。


結局、船員は穴場職なのか

私は、船員という仕事は
誰にでもすすめられる仕事ではないけれど、合う人にとってはかなり有力な穴場職
だと思っています。

理由は、一般にはそこまで知られていないのに、社会に必要で、専門性が積み上がり、AI時代でもすぐには消えにくく、働き方や収入面でも人によっては魅力があるからです。

しかも、ブルーカラーといっても、ただ力仕事をするだけではありません。
現場で身体を使いながら、頭も使い、判断もし、記録もし、チームで動く仕事です。

船員という仕事は、世間で派手に注目されることは少ないかもしれません。
でもAI時代に、
「自分はどんな仕事なら長く価値を出せるのか」
を考えた時、選択肢のひとつとしてもっと知られていい仕事です。

特に、
「今さら転職なんて遅いのでは」
「やりたい仕事が見つからないまま就活が進んでいる」
「子どもの将来に、もう少し現実的な選択肢を知っておきたい」
そんな人にとっては、一度知っておく価値のある仕事です。

もしこの記事が、
ぼんやり船乗りという仕事が気になっていた人、
進路や転職で迷っていた人、
子どもの将来の仕事を考えていた親御さんにとって、
少しでも視野を広げるきっかけになればうれしいです。


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