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処方箋はどこですか?

薬局に来る人は、大体、処方箋と病院の領収書、明細書を手に持っている。

門前の病院からそのまま歩いて来るからだ。

受付では、
「どれ出すの?」
と言われることも多い。

私は処方箋だけを受け取り、病院の領収書と明細書はお返しする。

病院の診察券もよく一緒に出されるが、それも薬局では使わない。

そして聞く。
「お薬手帳とマイナンバーカードはありますか?」

ここからカバンの中を探し始める人が多い。

お薬手帳が見つからない。
マイナンバーカードが見つからない。

受付が少し渋滞する。
薬局ではよく見る光景だ。

薬局で必要なものは、基本的には
・処方箋
・お薬手帳
・マイナンバーカード
この3つだけである。

ところが最近、この3つのうち2つを持ってきた方法が、私の想像を超えていた人がいた。

ある日、一人のおじさんが薬局にやって来た。
手には何も持っていない。

私はいつものように声をかけた。
「処方箋をお願いします」

おじさんは黙ったまま座り、自分の体をペタペタ触り始めた。
ポケットを探している様子ではない。
カバンも見当たらない。

どこを探しているんだろう。
そう思って見ていた。

すると、おじさんは突然シャツの首元から手を突っ込んだ。

そのまま素肌のお腹あたりをゴソゴソ探り始める。

私は一瞬固まった。

えっ?
そこから?


思わず振り返ると、別のスタッフと目が合った。
どうやら同じことを考えていたらしい。

二人とも笑いをこらえるのに必死だった。

しばらくして、おじさんは満足そうに言った。
「お、あった」
そして取り出した。
処方箋とお薬手帳を。

なるほど。
カバンではない。
ポケットでもない。

素肌収納である。


私は長く薬局で働いている。

しかし処方箋とお薬手帳を素肌収納していた人は、後にも先にもこのおじさんだけだ。

カバンがなかったのかもしれない。
手ぶらで来たかったのかもしれない。
だとしても、なぜ手で持ってこなかったのだろう。

私には今でも分からない。

ちなみに、取り出された処方箋とお薬手帳は少し生暖かかった。

私は受付を終えた後、一応手を洗った。

なお、財布の所在については最後まで不明である。

知りたいような。
知りたくないような。

そんな薬局の一日だった。 



※この様な話は、「現場メモ」にまとめています。

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