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発注した覚えのない『ルチン』

OTC薬品の「ルチン」が届いた。

卸さんが私のところに持ってくる。

「これ、お願いします」
……頼んだ覚えがない。

うちでOTCや小分けを発注する人間は限られている。

OTC担当の私。
あとは、ほんの数人の薬剤師くらい。

他の人は、そもそも発注端末を触らない。

つまり、かなりの確率で私だ。


周囲も、なんとなく
「あなたじゃないですか?」
という空気を出している。

私も、頼んだ覚えはない。

だが、ひょっとして……。

最近忙しかった。
制度改定。外来。施設。在宅。入力。家事。note。

一気に嫌な汗が出た。
間違えて注文したなら、売ってしまえばいいが、
私が注文したなら…忘れてることの方が問題だ。

いや、落ち着け。
まず確認だ。

調べたら、ルチンはうちで扱っているOTCではあった。
宛先も間違っていない。

だから余計に怖かった。

在宅患者さん用に誰かが頼んだ可能性もある。
だが、皆に聞いても「知らない」という。

前日の売上も確認した。

売れたから、私が補充発注したのかもしれない。
そう思ってレジを確認する。

……商品登録されていない。
ということは、売れていない。

さらに発注端末でJANコードを検索した。
発注履歴なし。

少なくとも、私が通常通り発注した形跡はない。

私は少し安心した。

そして同時に、
薬局内の“誰か”を静かに疑い始めた。

私の頭の中では、容疑者リストが作られ始めていた。
在宅用か?
営業さん経由か?
誰かが口頭で頼んだのか?

それとも、本当に私が忘れているだけなのか。
「もし私だったら」
という最悪のシナリオまで始まっていた。

もし発注したことを思い出せないなら…
仕事は続けられないかもしれない。
気がつけば、退職後の生活設計まで考えていた。

薬局内に漂う、静かなサスペンス。

だんだん気になってきた私は、卸さんに確認することにした。

「確認します」

そう言われ、一旦電話は終わった。
折り返しの電話はかかってこなかった。

そして私は、昼休憩に入った。

その間も、頭の中では容疑者リストが増え続ける。

そして昼休憩が終わる頃、答えはあっさり判明した。

「間違いだったって〜。引き取りに来たよ。」


とほかのスタッフに言われた。


……間違いなら仕方ない。

だが、その数時間の間、
一人の調剤事務の頭の中に

壮大な容疑者リストと引退シミュレーションが作られていたことを、誰も知らない。



※この様な話は、「現場メモ」にまとめています。

👇️現場メモはこちら


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