「小分けできますか?」が止まらない日々|薬局現場メモ

ある1軒の薬局から、小分け依頼の電話が鳴る。

「この薬、少し分けてもらえませんか?」

お互い様だとは思っている。
在庫を融通し合うのは、地域の薬局として大事なことだ。

——頭では、分かっている。

でも、頻度が多すぎる。

ほぼ毎日。
多い日は一日に三回。忙しい時間帯でも電話は鳴る。

画面を見ると、登録してある薬局名が表示される。

どこからの電話か、どんな要件か、受話器を取る前から分かる。

電話を受け、在庫を確認し、出庫を処理するのはすべてこちら。
入力作業の手は止まり、画面は途中のまま固まる。

気づけば、

うちの薬局は“倉庫”のようになっていた。

小分け依頼は月まとめで処理する運用にした。
その都度対応すれば現場が回らないからだ。せめてもの自衛である。

ある土曜日。
戦場のような時間帯に、その人は来た。入口で黙って立ち、手にはシロップの空容器。

――入れてほしい、ということだ。

以前の私なら、すぐ対応していただろう。
でもその日は違った。私は画面に向き直った。

優先するのは、目の前の患者さん。それだけだ。

別の日には、エンシュアを15缶まとめて依頼された。
取りに来た人は袋も持たず、入口で待っている。
私は受付に15缶を置いたまま、入力を続けた。

怒りではない。

ただ、「ここまで」と線を引きたかった。

以前、一人事務の薬局で働いていたとき、私はお願いする側だった。

だから分かる。忙しい時間に何度も電話はしない。出てもらえなければ諦める。

小さな薬局に在庫の限界があることも理解している。

それでも。

小分けは“お願い”だ。
当然の業務ではない。

ほんの少しの配慮があるかどうかで、受ける側の景色は変わる。

助け合いは大事だ。
でも、助け合いはどちらか一方が背負い続けるものではない。

「お互い様」と言われるたび、心の中で問い直す。
――それは、本当に“お互い”だろうか。

今日も電話は鳴る。
私は受話器を取り、また画面に向き合う。

それでも、目の前の患者さんを優先する。
それだけは、変えない。

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