待てない子どもたちと急げない薬局
小さい子供が、大勢来局する。
熱があって、
抱っこ紐の中で泣き止まない赤ちゃん。
お母さんがあやしても、
顔は赤くて、苦しそうで、
見ているだけでかわいそうになる。
2歳、3歳くらいの子を
複数連れてくるお母さんもいる。
子供は、待てない。
自動ドアから出たり入ったり。
商品を触ったり。
椅子を動かしたり。
「まだなの?」
「ママ、早く帰りたい」
その横で始まる、兄弟げんか。
ママの取り合い。
絵本の取り合い。
お母さんは、もう限界に近い。
でも薬局は混んでいる。
子供が泣いていても、
待てなくても、
基本は順番通りに進んでいく。
子どもの薬は意外と時間がかかる。
シロップを混ぜる。
粉薬を混ぜる。
名前を書き間違えないよう確認する。
保育園用に分けることもある。
体重によって量も変わる。
——早く渡してあげたい。
それでも、急げない。
こちらも、入力しながら、まだできないかなと
ソワソワしてしまう。
あまりにも大変そうなら、「車でお待ちいただいて大丈夫ですよ。」と声をかけることもある。
色々な親子が来るため、
日頃の子育てが垣間見える。
一人をおんぶして、
二人の手をつなぎながら来るお母さん。
テキパキと
お薬手帳と処方せんを出し、
マイナンバー受付も済ませる。
その動きに、無駄がない。
——尊敬しかない。
一方で、
子供に話しかけられても、
ほとんど反応しないお母さんもいる。
少し冷たく見えるかもしれない。
でもたぶん、違う。
ただ、疲れているだけだ。
お父さんも、最近は多い。
お薬手帳をお願いします、と言うと、
かなりの確率で出てくるのは
——母子手帳。
——なぜか多い。
そしてマイナンバーの暗証番号がわからず、
お母さんに電話する。
これも、あるあるだ。
でも不思議と、
そういうお父さんは大抵やさしい。
小さい子供の処方は、
できるなら優先してあげたいと思う。
でも現実は違う。
マイナンバーの確認。
アンケートの記入。
「あとでいいですよ」と
言いたくなる場面でも、
やらないわけにはいかない。
心苦しいけれど、お願いするしかない。
だから、せめてもの工夫をしている。
テレビはアンパンマンに変える。
絵本を渡す。
そして最後の切り札、シール。
それだけで、
少しだけ空気が変わる。
——ほんの少しだけ。
前は、アンパンマンのキャンディや
お菓子も売り場に置いていた。
でも、やめた。
「買って、買って」
それが始まると、
待ち時間どころじゃなくなるから。
やさしさのつもりが、
逆にお母さんを追い詰めてしまうこともある。
薬局は、
ただ薬を渡す場所じゃない。
でも、
なんでもしてあげられる場所でもない。
泣き声と、焦りと、気遣いと。
その全部の中で、
今日も「できる範囲のやさしさ」を探している。
※この様な話は、「現場メモ」にまとめています。
👇️現場メモはこちら
