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薬局で“ただ待たされている1時間”の裏側

今日の夕方、一人の患者が来た。

門前ではない処方箋を、かなりの枚数持っている。 「LINEやFAXで頂いてますか?」と聞くと、「いいえ」と答える。

……見ない顔だな、と思った。

薬局には毎日たくさんの患者さんが来る。 それでも、見たことがある人か、あまり見かけない人か、その感覚は意外と残る。

入力担当に回すと、しばらくして声がした。

「初診でーす」


その一言で、空気が少し変わる。

初診。 門前ではない。 処方箋は多い。

そして全部、粉砕指示入り。

さらにベルソムラまで入っていた。

「これ、どうやって作るのかな」


現場の感覚としては、そこだった。

薬剤師は皆、それぞれの仕事で手一杯の様子だった。 それでも、このまま進めるわけにはいかない。

これは確認が必要な案件だ。

私は患者さんのもとへ行き、聞いた。

「いつもはどちらの薬局でもらっていますか?」 「ベルソムラは粉砕できない薬ですが、どうされていますか?」

患者さんは少し困った顔をした。

どうやら義母の処方箋で、 普段は奥さんが薬を取りに来ているらしい。

その奥さんが、今は入院中。

「いつもどこでもらってるかも、 ベルソムラをどうしてるかも、 妻に聞かないと分からないんです」

そう言われた。

粉砕しないと飲めないのかどうか。 そもそも、普段どうやって服用しているのか。

何も分からない。

ここで、また時間が止まる。

このまま出すのは危ない。 でも、確認しないと進めない。

疑義照会をして、薬を変更するなら、 早くしないと病院の受付も終わってしまう。

こちらも焦る。

けれど、 焦って出していい薬ではない。

結局、何度もやり取りが続いた。

処方箋を持ってきた義理の息子さんも、 だんだん苛立ってきた。

ただ、その苛立ちは薬局に向けられたものではない。

奥さんが入院してしまい、 義母の薬をもらうために、 会社帰りに近くの薬局に立ち寄っただけ。

それなのに、かなり待たされている。

その状況自体が、しんどいのだと思う。

最終的には、 管理薬剤師が電話を代わり、 入院中の奥さんと直接話をした。

ベルソムラはヒートのまま。 他の薬はすべて粉砕。 粉があるものは粉砕せず、粉で出す。

ようやく方針が決まった。

ただ、奥さんからは 「他の病院からの薬もあるはず」と言われたようだが、 そこまでは追えない。

今回持ち込まれた処方箋だけで調剤することになった。

薬が出来上がるまで、 結局、約1時間。

患者さんから見れば、

「ただ待たされている1時間」。


でも中では──

・情報が分からない
・確認が取れない
・出していい形が決まらない

そんな状態から、 一つずつ積み上げていった1時間だった。

そして思う。

お薬手帳があれば。
マイナンバーカードがあれば。

この時間は、かなり短くできたはずだ。

家族任せの服薬管理には、限界がある。


そしてもう一つ。

情報が残っていないことも、 同じくらい大きなリスクになる。

いざという時に、 誰が来ても分かる状態にしておくこと。

それが、薬を止めないために必要な準備だと思う。

でも現場としては、

「分からない状態」で来られるのが一番困る。


そしてそれは、患者さんにとっても、決して得ではない。

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