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「待ってる人いるから、もういい?」〜うまいなあ、と思った薬剤師さん

薬局で働いていると、お話好きな患者さんに出会う。

天気の話。
テレビの話。
昔の仕事の話。

薬の話はとっくに終わっているのに、会話だけが続いていく。

もちろん、患者さんにとって薬局は薬をもらうだけの場所ではない。

誰かに話を聞いてほしい日もあるだろう。

実際、以前の職場には、わざわざ昼休みに話をしに来る患者さんもいた。

処方箋はない。
薬の相談でもない。
娘の心配事の相談に来る。

私はその様子を見ながら、

心の中では『その人、時給高いんだけどな…』と思っていた。


もちろん冗談である。
…いや、冗談ではないかも。

でも、それくらい薬剤師さんを信頼していたのだろう。

そんな中、以前一緒に働いていた女性薬剤師さんの対応がとても印象に残っている。

その日も、お話好きな患者さんが来ていた。

会話はどんどん盛り上がる。
でも待合室には次の患者さんがいる。

すると薬剤師さんは笑いながらこう言った。

「待ってる人いるから、もういい?」

そして続けて、

「また話聞くから、終わるまで待てる?」


私は心の中で思った。
帰るだろうな。

だって、その患者さんは話したくて来ているような人だったから。

ところが患者さんは、

「うん、待ってる」
と答えた。

そして本当に待っていた。
他の患者さんの投薬が終わるまで。

私は少し驚いた。
正直、帰ると思っていたからだ。

でも患者さんは文句ひとつ言わずに待っていた。

そして、他の患者さんの投薬が終わると、薬剤師さんは約束どおり戻ってきた。

患者さんは嬉しそうに、話の続きを始めた。

私は思った。

あの薬剤師さんは、話を聞くのが上手なだけではない。

話に区切りをつけるのが上手なのだ。


話を途中で切るのではない。

「また後で聞く」と約束し、その約束を守る。

待っている患者さんにも配慮しながら、目の前の患者さんも大切にする。

そのバランスが、とても上手だった。

薬局で働いていると、
「患者さんの話を聞くのが上手な人」
にはたくさん出会う。

でも、

「会話の区切り方が上手な人」

は意外と少ない。

話を途中で切るのではなく、
後回しにして、
ちゃんと戻ってくる。


ちなみに、その薬剤師さんとは今でも時々ランチをしたり、飲みに行ったりしている。

職場は別になったけれど、今でも尊敬している人のひとりだ。

薬の知識だけではない。
患者さんとの距離感や、場の空気の読み方。

あの頃、私はたくさんのことを教わったのだと思う。

うまいなあ。

と、今でも時々思い出す。



※この様な話は、薬局のエッセイにまとめています。


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