3行日記 夏の叫びはお控えを
「ああっ!危ないっ!」
「えっ!? なにっ?なによ!?」
阪神・森下選手へのデッドボールを見て、思わず私が大声を上げると、妻が飛び上がった。
「いや、森下にデッドボールが飛んできたから……」
「もう! デッドボールくらいで大声出さんといてよ。森下もぴんぴんしてるやんか!」
驚くのが大嫌いな妻は、何かにつけて大声を出す私の癖が気に入らない。
しばらくして、
「おっ! 行った! これ行ったぞ!」
佐藤輝明の打球は高々と舞い上がったものの、フェンス手前で失速した。
「もう! どこが行ったよ。そんなこと言うからアウトになったやんか!」
妻に言わせると、会心の当たりでも、遠く離れたテレビの前で私が「行った!」と言った時点でアウトになるらしい。
これがプロ野球ならまだいい。
これから本格化する夏の甲子園大会で、私が不用意に叫べば、球児たちの青春まで終わらせてしまいかねない。
熱狂的な高校野球ファンの妻は、本気でそう思っている。
「あの子らが可哀想やから、ホンマ黙っててな」
そう言われる、いつもの夏がやってきた。
終
