【創作】ねえ、減ったのは本当にお腹なの?
物心ついた頃から、「お兄ちゃんなんだから」と言われて育った。
ぼくには3つ下の妹・みーちゃんがいる。
みーちゃんはもうすぐ小学生になるので、お母さんはそれもまた心配らしい。
ぼくの入学の時にはみーちゃんがアレルギーだかなんだかで、あまりぼくの心配をしてくれた記憶がない。
忘れているだけかもしれないけど。
いや、やっぱりない。
みーちゃん、みんなと座って授業を受けられるのかな、とか、
友達できるかな、とか、
挙げ始めればキリがない、らしい。
月曜日。
学校から帰っておやつのパンを食べていたら、お母さんがみーちゃんを連れて帰ってきた。
みーちゃんは、「りょういく」の園に行っている。
幼稚園みたいなものだと思う。
「あれ、今日早かったね?」
…今日から家庭訪問週間だから、早いって言っておいたのに。
「このパン、もう終わっちゃったの?」
お母さんは驚いたように言った。
8本入りのスナックパン。ぼくの好きなやつだ。
「みーちゃんも好きだから、ちょっと置いといてくれたらよかったのに。お兄ちゃんでしょ。」
「…ごめん。」
とりあえず謝っておく。
ぼくだってこのパン、みーちゃんも好きなことは知っている。
でも、いいじゃないか。
いつもお母さんをひとりじめしてるんだから、パンくらい。
それよりも、最近のぼくは食欲が止められないのだ。
8本入りのパンなんて、すぐに終わってしまう。
夕ご飯も、ご飯を3回はおかわりする。
でもおなかがすいて、お風呂のあとに部屋にこっそりお菓子を持ち込んだりしてしまう。
「お母さん、おなかへった。」
パンを平らげたけれど、やっぱりすぐに空腹を感じて訴える。
「もう!?」
お母さんはあきれたような声を出した。
実際あきれているのだと思う。
「うあぁぁぁーーー!!!」
そのとき突然、みーちゃんが叫んだ。
ビクッとしてそっちを見る。
「ごめんね、みーちゃんどうしたの。」
お母さんはすぐに、みーちゃんにつきっきりになる。
ぼくは食べられそうなものを探してチョコレートを見つけると、3つ持って部屋に引き上げた。
でも、こんなんじゃ、全然足りない。
火曜日。
担任の先生が家庭訪問に来た。
ぼくの担任は、福井先生というおばちゃん先生だ。
みーちゃんは今日は、預かりの「りょういく」のところに行っている。
お茶を飲みながらお母さんと先生はいろいろ話している。
ぼくはその話を時々聞きながら、お菓子を食べていた。
先生はぼくに笑いかけると、「ちょっとお部屋に行っててくれる? そうだ算数の宿題しておいたら?」と言った。
わかった、と言って部屋に戻り宿題をしていたら、急に気になってきた。
何を話してるんだろう?
ちら、と部屋のドアを開けてのぞいてみる。
「…さとるくん、お名前のとおり『さとる』子になってしまってます。」
……いや、ダジャレかよ!
よくわからないけど、先生はダジャレが好きだったんだ。
それからの話は、ぼくにはわかったりわからなかったりしたけれど。
お母さんはちょっと泣いていた。
泣きながら、「下の子が、手がかかって…」とか、「さとるがわかってくれる子だと…」と言っているのは聞き取れた。
先生はたぶん微笑んでいるのだろうという声で、何かなだめるようなことを言っていた。
先生が帰ってから、お母さんはぼくを呼んで、抱きしめた。
「ごめんね、さとる…。
お母さん、さとるのこと大好きで大切よ。」
何を謝られているのか、わからない。
だってぼくはお兄ちゃんで、この家ではみーちゃんが一番大切で…。
…お母さんのにおい。
なぜかぼくも泣いた。
お母さんにぎゅってしてもらえるのが久しぶりで嬉しかった。
それから、お母さんは時々思い出したようにぼくを抱きしめるようになった。
みーちゃんを預ける日も少し増えた。
よくわからないけど、前ほど異常におなかが減ることはなくなったような気がする。
もちろんご飯のおかわりはするし、お菓子も大好きだ。
大好きなスナックパンは、みーちゃんにも残しておくようになった。
ぼくはお兄ちゃんだけど、お母さんにとって大切らしい。
「減ったのは本当にお腹なの?」と聞いて、こういう話しか思いつきませんでした…。
書きながら、さとるくんかわいそうすぎて😭
すみません…かわいそうな子を書いてしまって。
お母さん、反省してよかったです。
