シングルマザーの母が背中で教えてくれた、“働く”ということ。ーー母娘で歩む、30代キャリアの分かれ道
母と娘を繋いでくれた「作り置き」
トントントン。チチチッ。シュー……。
深夜のキッチンから聞こえる音と、香ばしい匂い。
当時13歳の私は、その音を夢の中で聞いていた。
母が隣で眠るのは、もう少し先のことだった。
母は30代半ばで離婚した。
結婚を機に総合職を辞め、専業主婦になった母が、シングルマザーとして選んだのは「会計士」という道。
短期間で資格を取り、やがてコンサルティング業界へ飛び込んだ。
当時のコンサル業界は、今よりもずっと「激務」が当たり前。
母はいつも、日付が変わる頃帰り、それから翌日の夕食を作り、朝は私より早く起きて果物をむいてくれた。
私はいつも、帰宅すると誰もいない家で、母が昨晩に作り置きしてくれた野菜炒めなどを温めて食べる。
「早く帰れそう!」という一言が届く日は、それだけで心が弾んだ。
あの頃は、寂しさが先に立っていたが、
今思えば、激務の中、睡眠を削って料理をしてくれた母に、感謝しかない。
あの作り置きこそが、平日会えない母との唯一と言っていいほどの“対話”であった。
あの冷めた料理に、どれほどの温もりを当時の私は感じていたかは、計り知れない。
母の背中を見て、私が選んだ道
そしていま、私も同じコンサルの世界にいる。
29歳で一児の母となり、30歳現在、育休中。
フルタイムで働いていた頃は、年末年始をオフィスで過ごすのが当たり前なほど激務だった。
だからこそ、復職を前に悩んでいる。
あのとき自分が感じた寂しさを、娘に味わわせたくないのだ。
母は言う。「キャリアは続けた方がいい」と。
一度途絶えた後に戻ることの難しさを、身をもって知っているからだろう。
一方で、時短勤務や残業なしでは、成果を出すのが難しいのも、この業界の現実だ。
母の時代は、“働き続けること”が挑戦だった。
私の時代は、“働き方を選ぶこと”が新たな挑戦になっている。
“挑戦”のかたちは、時代とともに変わる
フルタイム復帰は安定なのか、それとも挑戦なのか。
育児を優先して働き方を変えるのは挑戦か、それとも守りか。
そして、一度キャリアを止めることは、諦めなのか、むしろ勇気ある挑戦なのか。
30代のキャリアに、正解はない。
家庭を持ち、守りたいものが増えるからこそ、
“どの選択も挑戦”になるのだと思う。
どの選択でも悔いなく生きたい
私は、日々変わりゆく娘に、できる限り目を向けたい。そしてその中で、精一杯キャリアをつないでいきたいと考える。
私の生活のためにキャリアを第一に、
その中で精一杯の愛情を注いでくれた母とは、
きっと反対の道を歩むことになるだろう。
しかし、これは諦めではない。
母が背中で見せてくれた“働く覚悟”と同じように、
私も、自分の“働き方”を信じて進んでいきたい。
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