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「ワインが割れて」

電車の中で

ガシャンと大きな音

振り向けばワインが割れて

血のように広がっていた


落とした男性は

あわててビンを拾ったけれど

広がる赤い液体を

どうすることもできなかった


かわいそうに

手伝ってあげたくても

どうにかなる気が

まるでしない


運転手しかいない

先頭車両まで

彼は機関車のように

走っていったけれど


すぐさまに戻ってきて

残りのガラスの破片を

素手で拾いはじめたものだから

あぶないと思った瞬間


みんな持ち物をさぐりはじめて

拭くものだとか

しまえる袋なんかを

探し始めたよ


助けたいと

みんなの思いが集まった

ビン1本分には

ほど遠かったけれど


ガラスの破片を拾って

男性は駅を降りてしまった

駅員さんに

説明するのかな


電車が走るたびに

広がる赤い液体

シートに座る人たちの足へ

つかむように伸びていった


みんな嫌がっていたけれど

悪いように見えなかったのは

ワインが赤かったから?

車両に香りが広がったから?


ただのハプニングなのに

狐につままれたみたいに

不思議な感じがするのは

何故なの?


二つ目の駅で

駅員さんが三人

掃除道具をもって

キレイさっぱり拭き上げた


まるで何事もなかったかのように

あとから来たひとには

気づかれないほどに

電車は走っていった


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