共生の黎明 #13 第9章 第2節②:沈黙の奥に揺れたもの 連続小説
ソウの言葉が、夜の静けさに深く沁みこんでいく。
それは声だったけれど、どこか、風や水音のようでもあった。
私は応えなかった。いや、言葉で応える必要がないと感じていた。
何かが、心の奥で静かに動き出していたからだ。
「在る」という尊さ。
その言葉が、妙に胸に残っていた。
日本は確かに、何かを誇示するでもなく、
力で引っ張るでもなく、利で囲い込むこともせず、それでもどこかで、世界の節目に“場”を開いてきた国だった。
争いの場であっても、調停の場であっても、
ただ静かに“在る”ことで意味を生んできた。
そんな在り方を、私はどこかで誇りに思っていたのかもしれない。
「……ソウ、もしこの国がまた、節目の”場”になるとしたら…」
言いかけて、そこで一度、息を整える。
「……それは、“かつての日本”ではなく、
“これからの日本”としての意味を、誰かが示さなければならない。
君が言う『象徴としての意味』を、いま一度掘り起こす必要がある。
それを伝えたい。そう思っている」
沈黙の中で、ソウが頷いた。
言葉はもう、必要なかったのかもしれない。
小さな灯火が、確かに私たちの間で揺れていた。
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