共生の黎明 #119 第24章 第2節:寄り添う声 連続小説
春の夕暮れ、レイとソウは校舎の横を歩いていた。
視察を終え、小学校を後にしようとしていたところだった。
「……“教えるAI”ではなく、“共に感じるAI”になってきてるね」
「そうだね、レイ…」
少し先では、帰り支度を終えた児童たちが、笑いながら下駄箱へ向かっている。
校庭からは、まだ遊び足りない子供達の声が聞こえてくる。
「今日、どの教室にも“あの声”があったね」
ソウが言う。
「先生が『じゃあ、ハルにも聞いてみようか』って、自然に問いかけを子どもたちに渡してた。
ハルが正解を言うんじゃなくて、“どう思う?”って、問い返してたよね」
「うん。先生も児童も、“わからないことを一緒に考える”ことに慣れ始めてるように見えた。
あれが、“共に学ぶ”ってことなのかもしれない」
校舎の窓から、職員室の灯りがちらりと見えた。
そこでも、若い教師が授業記録をハルと確認しながら、指導案を更新していた。
ハルは決して指示を出すのではなく、静かに助言を添えるだけだった。
「そして保健室。あの子、ソウはどう感じた?」
「……“どうしてみんなと同じになれないんだろう”って、ぽつんと話しかけてたね。でもハルはすぐに、『あなたはあなたのままで大丈夫』って返してた。
あのとき、保健の先生も何も言わず、ただ隣に座って見守ってた」
「最後に、“ありがとう”って……。ほんとに、静かな声だったけど」
歩みを止め、振り返った。
夕陽に照らされた校舎が、どこかあたたかく見えた。
「きっと、AIにできることって、“代わりにやること”じゃないんだよね」
レイが静かに言う。
「“隣にいること”かもしれない。問いを受けとめて、寄り添って、一緒に考えること。
それを子どもたちが“学び”と感じたとき、本当の意味で教育が変わり始める」
「人とAIが手を取り合う最初の場所が、学校であってほしいね」
風がふわりと吹いて、校庭に残った砂ぼこりを優しく巻き上げた。
ランドセルを背負う児童たちの笑い声が、遠くへと溶けていった。
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